JDLAHOMEへHOMEへ

家裁からの通信

(井上博道)
第0019回 (2004/06/13)
成年後見制度を考える2

その難題とは,ずばり「お金」である。
なんと下世話なと思われるかもしれないが,「万事は金の世の中」と江戸時代から言われているように,お金は本当に重要な問題である。
 家族や親族が療養看護以外の財産管理をそうした団体にお願いしようとすると,まっさきに管理費用をどうするかという話になってくる。
 ここが大事なのだが,あたりまえのことに成年後見制度を利用したいと考えている人が全て金銭的に裕福だとは限らない。心神喪失の状態で,預金通帳に年金が入ってくるだけ,あとの資産は自宅の土地家屋だけ(あるいは不動産が全くない人も多い)という人は財産管理を第三者に依頼することはできるのだろうか。
 専門家が財産管理を行う場合,月額3万円程度が採算ライン(この制度の採算ラインはどのようにはじかれたのだろうか。原価計算みたいなものがあるのだろうか)と真顔で言った人がいたのに驚いた。もちろんこれは必要経費は別途負担である。つまり全くの純粋な報酬だけのお話である。
 これは厳しい。年金だけが金銭収入という人はどうしたらいいのか。月額3万円ということは,報酬だけで年36万円以上はかかってしまうということである。それに必要経費がプラスアルファされる。年金はどうだろうか。国民年金をまじめにかけても,年80万円前後だろう。そんな人が負担できる額ではないのは当然のことである。
 だって療養看護費だってかかるわけだから。むしろ乏しい年金から療養看護に支出した方が,よっぽどいいだろう。むしろそうすべきではないかとおもうのだが。

かくして,善意は眠れない。自分が療養看護をしたいと善意で手をあげた人ほど,成年後見の厳しい現実に直面する。
 もっとも一般の財産管理は,極端に難しいものではない。要は収支の問題(金銭は)だし,不動産に関しては右から左にどうこうなるものではないからである。
 しかし本人の面倒をみよう,療養看護をしようと思って手をあげた人にとっては財産管理は内容以上に煩わしく,難しいものに写るのではないか。
 現在の成年後見制度で、第三者後見がいまいち伸び悩みなのもこの点にあるのではないか。

わたしはFPでもあるわけだが,FPの業界では「10万ドル・ルール」という言葉があるという。つまり,流動資産で1000万円ないと,きちんとしたプランニングができないということだが,これはあくまでもお金の運用の話。

成年後見制度で,本当に第三者後見が必要なのは,お金がいっぱいある人ではなく世の中の保護を受けらなかった人のためのものではないか。いわゆるパブリックガーディアン(公的後見人)の必要性も問題である。
 もし,本当に採算ラインのようなものがあるとしたら,この採算ラインそのものを突破しなければ,本当に第三者後見人を必要とする人のところには到達できないだろう。
 どのようにすれば,この採算ラインを突破できるのか。この点について更に考えてみたい。

                           次回へ

<前頁 | 目次 | 次頁>

このシステムはColumn HTMLカスタマイズしたものです。
当サイトは日本民主法律家協会が管理運営しています。