JDLAHOMEへHOMEへ

家裁からの通信

(井上博道)
第0020回 (2004/07/18)
後見後見制度を考える3

体調を崩したことから,長期中断してしまいました。
さて,家事事件の現場で成年後見制度の事件がいかに家裁にとって重要な位置を占めるかについて書きました。
 成年後見は,大きく分けて被後見人の療養看護(つまり世話をすること)と財産管理(被後見人の財産を管理すること)の2つの分野に分かれます。前者は日常的な看護をおこなうことですから,実際に看護している(多くは親族だと思いますが)がなるのが一番良いように思うのですが,財産管理はたとえ年金のみの方でも,成年後見人が日常的に管理する意志を持っていなければすぐに不明瞭な使途不明状態が生まれます。
 家裁は,こうした財産管理の状態を監督するわけですが,普通の人が成年後見人になった場合,療養看護はともかくも,財産の管理状態は必ずしも適正と言えるものになっていない場合が多いのです。
 そのため,一般の人が成年後見人になった場合,家裁から細かい注文を付けられることも多く,一般の方々にとっては「せっかく善意でなることにしたのに」「がんばっているのに」という感想をもらす方が多いことはすでに述べたところです。 また,被後見人の財産を親族が使ってしまっている事例や財産管理をめぐって激しく親族間に対立のある場合など,親族による成年後見人(とりわけ財産管理面)の就職が困難という事例もあります。
 そんな時,第三者後見と呼ばれる方法で解決する制度はあるのですが。第三者後見とは,社会福祉協議会などの福祉機関あるいは弁護士,司法書士などの法律職種が,親族の後見人の代わりに,あるいは親族の後見人とともに後見人に就任する方法です。主に財産管理が必要とされる場合が多いのですが,身よりのない方,親族からの協力を得られない場合には,療養看護も第三者が行う場合もあります。
 司法書士や弁護士がそのまま財産管理と同時に療養看護の役割を担うこともあります。まだ珍しいと思うのですが,療養看護を社会福祉士が,財産管理を弁護士などが行っている複数の第三者後見の事例もあるようです。
 ここで問題になってくるのは,第三者後見は便利な制度であるけれども,報酬などの費用がかかるために,一定の財産を持っているものが対象にならざるを得ないという点です。
 そもそも,第三者後見を必要としている事例の多くは,不動産を所有している場合でも,現金収入が年金程度(多くは基礎年金のみ)といったケースが多い訳で,第三者の報酬負担が,医療費や生活諸経費との支出状態がから出てこない。報酬の負担に耐えられない。そういった疑問が出てくるわけです。
 第三者後見が公益的なパブリック・ガーディアンニなりきれない理由がこの報酬問題にあります。成年後見制度は,これまで放置されてきたいわゆる社会的弱者であった人々のための保護の制度でありながら,第三者後見というサービスを受けようとすると,第一に費用の問題がネックになるわけです。
 もちろん,司法書士会の成年後見リーガル・サポートセンターの利用の場合,弁護士会の法律扶助にあたる基金があるようですが(月額1万円程度を補助するそうです。詳しくは問い合わせが必要となります),それでもその金額の範囲で第三者後見が行えるのか,また基金が法律扶助協会に比べて財政基盤が弱い(全体で1億未満と聞いています)など,現在の成年後見制度における第三者後見のニーズを支える財政基盤となっていないことが問題になるのではないかと思います。
 この問題を解決する方向性として,以下の二点が必要ではないかと思うのです。
第一に成年後見制度における第三者後見を支える社会保険制度の仕組みを検討すること,とりわけ介護保険とのリンクをどのようにはかっていくのかを考えることがあげられます。第二に現在の財産管理の仕組みを,静的管理から安定した運用収入を基本とした動的運用にあらためていくことです。
 次回は,この点について述べたいと思います。

<前頁 | 目次 | 次頁>

このシステムはColumn HTMLカスタマイズしたものです。
当サイトは日本民主法律家協会が管理運営しています。