日民協事務局通信KAZE 2004年11月

 米軍は際限なく敵を作り続けている

(弁護士・澤藤統一郎)

■おそるべきアメリカの軍事力。一国の軍隊を壊滅させることは容易にやってのけた。しかし、一国の民衆を制圧することはできない。一国の全民衆を殺戮する能力はあっても、民衆のレジスタンスを鎮圧する力はないのだ。人民の海におぼれた、ベトナムでの教訓を噛みしめなければならない。
■アメリカ軍が総掛かりでファルージャ制圧にかかっている間に、軍事的空白となった他の諸都市でのレジスタンスの勢いが増している。イタチごっこだ。
スンニー派だけでなく、シーア派の一部からも「総選挙ボイコット」の動きが出てきている。軍事行動は、敵を作るだけ。苛烈であればあるだけ、敵も大きくする。
■米軍のイラク攻撃による犠牲者数は一〇万を超えるとされる。負傷者や財産上の被害者は、その何十倍にものぼる。その家族や友人が、米軍とその仲間に憎悪を募らせている。
 どこからともなく数を増す「武装勢力」の供給源は、このイラク国民の憎悪であろう。
 「有志連合」への参加はこの憎悪の対象となること。イラク派兵の各国が、派兵の大義を見直し、損得の計算も見直しはじめている。
■アメリカが組織した有志連合は三七カ国。国連安保理の決議を得られなかった米国が、国際的な孤立化を覆い隠すために招集したもの。米国にシッポを振って、見返りを期待した諸国が参加した。「新しいヨーロッパ」とおだてられた東欧の中小諸国が数合わせの対象とされた。もとより、常任理事国五カ国のうち、仏・中・露は参加していない。
■「有志連合」のうち、既に八カ国が撤退を完了した。スペイン、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、タイ、ドミニカ、ニカラグア、ホンジュラスである。
 続いて撤退を表明している国が七カ国。ハンガリー、ウクライナ、オランダ、チェコ、ポーランド、ルーマニア、ブルガリア。
 二二カ国が残っているとは言え、その内の主要国は、アメリカ(兵員数一四万)、イギリス(八五〇〇)、イタリア(三〇〇〇)、韓国(二八〇〇)、オーストラリア(九〇〇)、日本(八〇〇)の七カ国だけ。あとは微々たる存在。有志連合は明らかに崩壊しつつある。ホワイトハウスのホームページに掲載されていた「有志連合リスト」が削除されている。
■スペインでは国民多数の反対を押し切ってイラク戦争に協力したアスナール政権が倒されて、派兵を撤退した。
 フィリピンでは、民間人が武装勢力の人質に取られた事件をきっかけに、「国民の命こそ守るべき国益」として、撤兵した。
 まだ有志連合に残っているとはいえ、イギリスも、イタリアも、韓国も世論の批判は厳しい。有志連合にとどまったまま、政権が持つかは微妙である。当のブッシュ自身が、薄氷を踏む思いの再選であった。
■この情勢下で一二月一四日を迎える。イラク特措法による派兵の期限が切れる日。政府は、派兵継続の可否についてはまだ明らかにしていない。
 にもかかわらず、小泉首相は一一月二〇日、APEC開催中のサンティアゴでブッシュと会談してこのことに触れた。「イラクの国造りや復興を成功させないといけない。イラク復興支援は継続したい」という言いまわしで、事実上派兵継続の意思を表明した。
 例の如く、国民に説明する前のブッシュへの約束である。「かの米国を想い、この日本を売る」と揶揄される所以である。
■総会では、改憲阻止への決意を込めた「日本国憲法を擁護し、国際社会の平和的発展を期する宣言」(本誌六二頁参照)を採択した。
 改憲阻止の運動は、具体的な平和・人権・民主主義擁護の課題と結びつかねばならない。
 明文改憲阻止とともに、自衛隊のイラク派兵撤退を初めとする諸課題に取り組んでいきたい。


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