日民協事務局通信KAZE 2007年7月

 戦争化を阻止するための区切りの年


 六月三〇日の日民協の総会に出席して渡辺治さんの講演を聞いて勇気づけられた。九条を守る運動を作っていく上で、それにふさわしい国際環境を作るためにも国際連帯活動が必要とのこと。ちょうど私の属する国際法律家協会でも、この間「グローバル9条キャンペーン」として海外で宣伝したり、海外の団体と交流したりしてきた。
 九条が廃止されるのではないかとの報道を聞きつけて、世界の人たちが日本の九条に注目しはじめた。彼らは九条は日本だけの問題ではないと言う。アジアに戦争の源を作ることにもなるし、世界の平和運動の目指すべきことが九条に書かれていると言う。そして、そのような海外の九条に寄せる声を結集する場として来年の五月四日〜六日に「9条世界会議」を幕張メッセその他大阪、仙台、広島の各会場で開催する。
 従来にはない幅広い人に呼びかけるとともに、ノーベル平和賞の方も招待してマスコミにも取り上げられるほどの大きな会合にしたいと現在準備を進めている。多数の市民団体や法律家団体が実行委員会に加わり、これからは「法と民主主義」でもチラシ類も届けさせてもらい、海外からの招待費用へのご協力をお願いしたい。
 今号の特集は、「南京事件七〇周年」。私も南京の南京事件記念館に何度か行ったことがあるが、今でも中国の人は南京事件や慰安婦問題を忘れない。これらは日本の中国侵略を象徴する二つの事件であるからこそ、右翼や靖国派の政治家はそれを打ち消そうと必死に巻き返しにかかっている。
 侵略の事実を打ち消したいという衝動は、歴史認識の問題でもあると同時に、これからの戦争に対する危機感を薄めようとするものでもある。憲法九条は、侵略戦争を繰り返さないという歴史的決着であると同時に、今後とも確実にあのような戦争を起こさないために、あらゆる名目の戦争や武力行使を禁止し、その担保として軍隊を持たないように定めたのものである。憲法九条の原点を振り返ることは、このような歴史認識の問題、安全保障の問題両面がある。
 世界の国の中には、紛争直後の状況にある国が日本のような九条を持ちたいという話をよく聞く。アフリカやネパール、南米でも聞く、中東ではまさに緊急の要請でもある。今のイラクでもほぼ同じようなことが起こっている。
 最近会った海外の人の中では、イラクから来るジャーナリストの人は日本は軍縮して人道的な援助をしてほしいと訴える。コスタリカの教授は軍隊のない国は教育からと訴える。訴え方は様々だが、九条を支持してくれ、世界にも広げてほしいという想いは一緒だ。
 今号から、9条世界会議に向けた連載も、掲載させていただくことになった。世界や日本からの「国際的に見た九条」の声を可能な限り紹介させていただくので、注目してほしい。

(弁護士 笹本 潤)


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