日民協事務局通信KAZE 2008年11月

 新シリーズ「私の原点」 を執筆して


 九月から始まった新シリーズ「私の原点〜若手弁護士が聴く」は、今月号で三回目となりました。弁護士一年生から三年生のピチピチの若手が毎回のインタビューと執筆を担当しています。一回目は豊田誠先生の薬害スモン訴訟、二回目は橋利明先生の多摩川水害訴訟、そして三回目は新井章先生の朝日訴訟と、いずれも豪華メンバーに、誰もが知っている大事件について取材しました。私はすべてのインタビューに参加し、第二回目の執筆も担当させていただきましたが、本当に貴重な経験をさせていただき、この企画に参加できたことを嬉しく思います。
 私がまだ修習生だったとき、「事件が弁護士を育てるんだ」という言葉をあるベテラン弁護士から聞きました。名だたる先輩弁護士の「原点」となった事件を取材してみると、その言葉が真実であることがよくわかります。いずれの先生も、ご自身が関わることとなった事件の解決のために奮闘する中で、多くの経験と大切な教訓を得て、その後の弁護士活動にそれらを遺憾なく発揮されています。そして、偉大な弁護士の原点は単なる昔話ではなく、いつの時代の弁護士にとっても大切なエッセンスがたくさん詰まった最良の教科書だと思います。歴史に残る判決も、その事件全体に占める割合はほんの一部であって、その判決を獲得するまでの長い過程の中にこそその事件の本質があり、また、その判決を活かした判決後のたたかいによって真に事件が解決されるものです。判例を分析するだけでは決してわからない事件の核心を、それに直接携わった弁護士が語ってくれる毎回の取材では、本当に学ぶことが多く、今後の自分自身の弁護士活動にも必ず役に立つと思っています。
 インタビューでお話ししていただいたときの先輩弁護士の熱意をそのままに、そしてよりわかりやすく、多くの読者の方々にお伝えしたいと思います。まだまだ発展途上の企画ですが、たくさんの先輩弁護士の原点を発信し、いつかは『法と民主主義』の定番企画に!と夢見ています。今後ともどうぞお楽しみに。

(弁護士 田所良平)


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