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日本国憲法の平和・人権福祉の原理を根底から覆そうとする時代錯誤の自民党「新憲法草案」に大きな反撃の声を上げよう  
2005年10月28日

 私たち日本民主法律家協会は、平和と民主主義と人権を守り、民主的司法制度を求めて1961年に創立し、法律学者・弁護士・税理士・司法書士・裁判所職員などで構成されている団体です。

 本日、自由民主党より発表された「新憲法草案」に対し、現日本国憲法の平和・人権福祉・民主主義の原理を根底から覆そうとするその内容に、大変な驚きと深い危惧をもっています。

 私たちは、ただちに、下記のような「声明」を発表いたしました。
 自民党「新憲法草案」を葬り去るために、多くの国民とともに、協会をあげて闘い抜く決意とともに下記「声明」を送信させていただきます。
日本民主法律家協会


  1. 、自民党は本日、「新憲法草案」を発表した。これは、「新憲法草案」と名付けているように、「改憲」の限界を大きく超えて、日本国憲法の最も基本的な原理である、平和主義・人権福祉国家の原理を根底から覆そうとするものである。それは、第2次大戦後60年にわたり日本国民が日本国憲法の下で積み上げてきた平和国家、人権・福祉国家、民主主義国家建設の努力を無にし、日本をその軍隊が制限なく海外で武力を振るうことが出来る軍事大国にするとともに、人権・福祉と民主主義をないがしろにする、世界の歴史の流れに逆行する時代錯誤のものであって、到底認めることのできないものである。

  2. 自民党「新憲法草案」は何よりも、日本国憲法の平和の理念をうたい上げている前文を全面的に書き換え、平和主義の核心である9条2項を削除し、替わって9条の2(自衛軍)を規定した。「新憲法草案」は、歴代の自民党政府の下でも9条2項の存在ゆえにこれだけは認められないとされてきた、武力行使を目的とした「自衛軍」の海外派兵を可能とし、その海外派兵には国連決議等を要しないとする。すなわち、ブッシュ大統領のアメリカがアフガン戦争、イラク戦争を引き起こして莫大な数の犠牲者を出している現状の下で、国際的批判の強まっている「ブッシュの戦争」に日本が前線に立って戦闘行為を行うことを含め、全面的にこれに加担することを許容し、今後こうした侵略戦争に積極的に参加することを可能とするものである。それは、日本が手を結ぶべきアジアの諸国に大きな危惧と不信をもたらし、これら諸国との友好を大きく損なうばかりか、私たちおよび私たちの後の世代の日本と世界の平和を危うくする以外の何物でもない。

  3. また、自民党「新憲法草案」は、人権制約原理を、日本国憲法の「公共の福祉」から全て「公益および公の秩序」へ置き換え、憲法による基本的人権の保障全体を根底から危うくする。
     自民党「新憲法草案」は、内閣総理大臣の権限を強化し、国会審議を形骸化させ、政党条項により政党法の制定を義務づけて公開条項等による政党組織への介入に道を開き、財政民主主義を損ない、地方自治おいて住民投票制度を削除し住民の負担分任義務を規定するなど、現在政府自民党らが進めているいわゆる新自由主義的構造改革をより効率よく強行してゆく上での体制作りを目指し、福祉国家、民主主義国家の理念に逆行するものである。
     しかも自民党「新憲法草案」は、憲法改正要件を緩和し、ごく近い将来の更なる憲法改悪に道を開こうとしている。

  4. 自民党「新憲法草案」は、その前文にも顕れているように、近代立憲主義からも逸脱し、日本国憲法の平和国家・人権福祉国家の理念をかなぐり捨てて軍事大国化・新自由主義国家へ向けて、大きく風穴を開けようとするものである。このような「新憲法草案」はなんとしても国民の大きな反撃の声で葬り去らなければならない。
     私たち日本民主法律家協会は、戦力の不保持・交戦権の否認など、私たちが世界に誇る日本国憲法の改悪を許さず、それが掲げる、平和・人権福祉・民主主義の前進のために、市民との結びつきを大きく広げ、とりわけ幅広い法律家の結集に役割を果たすことを宣言する。



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