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2004年08月01日（日）
青年法律家協会でのレポート

青年法律家協会・東京支部の合宿会議に招かれた。場所は熱海。午後１時から５時までの、都の「日の丸・君が代」強制問題についての報告と議論。レポーターは、私と不起立で係争中の都立高教員。修習生も、かなりの数参加して、興味深そうに耳を傾けてくれた。

私の報告に、若手研究者からのご意見。
「都教委暴走の意図や理由に関して、石原慎太郎のキャラクターを強調してこれに帰せしめることは正しくない。ひとつは、国の一貫した教育方針をしっかりと見据えるべきだ。もう一つは、石原都政における新自由主義的政策推進の本質を把握すべきだ」「「日の丸・君が代」強制問題も、復古的・天皇制押しつけと把握すべきではない。要は、従順で物言わぬ教師をつくり、支配層の意のままとなる学校を作ろうということ」「今日東京でこれをなし遂げれば、明日は全国を牛耳ることができる」

なるほど、ごもっとも。確かに、問題は「日の丸・君が代」強制だけではない。学校現場に対する管理体制強化策の一環として、象徴的なものが「日の丸・君が代」強制なのだ。裏を返せば、「日の丸・君が代」強制反対の運動は、教育に対する管理体制強化全般に対する強力な歯止めにもなりうるということになる。

いつも思う。現在の政治や行政のトレンドが、大資本本位の新自由主義的市場原理万能論を基調にするものであることは誰の目にも明らかになってきたと言ってよかろう。ところが、その中での愛国心強調や「日の丸・君が代」強制は、いったいどのような位置づけになるのだろう。
グローバリズム、ボーダーレス社会化、市場原理至上主義、経済効率重視、小さな政府、規制緩和、自己責任…。ここから、どうして復古的な「日の丸・君が代」強制なんぞが出てくるのか不可解千万。現実は、多様で複雑。石原や都教委に問いただしても分かるまい。

いつものとおり、議論は十分に深まらないうちに時間切れ。夕食はとらずに帰京。もちろん、湯に浸かる余裕もない。報告のレジメ作りと熱海往復で、一日が暮れた。このごろ、しゃべると疲れる。


2004年08月02日（月）
服務事故再発防止研修第１日

本日は都教委による「服務事故再発防止研修」。「君が代」不起立やピアノ伴奏拒否を原因とする被処分者に対して、「非行」の反省を促し、再発を防止するための研修実施の第１日。

どのような事態となるか、弁護団も緊張した。朝９時、研修センター入口で、弁護団が先頭に立って７月２８日付「申入書」に対する回答を求めた。この申し入れは、執行停止申立に対する、東京地裁民事１９部の決定を受けてのものである。

司法の判断も、「研修が内心の意思に踏み込むものなら違憲の疑いがある。そして、教育長の議会答弁によれば研修内容が内心の意思に踏み込む可能性も否定できない」と言っている。違憲・違法の恐れある研修は中止されたい。
仮に強行するというのなら、研修が違憲・違法とならない保障について、どのような手だてを講ずるというのか。現実に何がおこなわれるのか、現認のために弁護士の立会を認めよ。被研修者の録音、メモを認めよ。

ところが、センターの研修責任者だという三浦芳三総務課長は、申入書を受け取っていない、という。心底怒りを禁じ得なかった。われわれは、４０人の弁護士の名を連ねて都教委に申し入れ書を手渡した。桐山課長は、責任をもって研修担当に伝えると言っている。これだけの重大事をおろそかにするとは何ごとか。

街宣車のスピーカーにつながるマイクでのやりとり。三浦さんは、「われわれは、都教委の言うとおりにしているだけ」との本音もポロリ。弁護士の立会は拒否、メモは認めるが、録音は拒否。

君が代強制に対する抵抗を、非行と言い、再発防止の研修を受けよというのは、思想信条・信仰を改めよと言うに等しい。いったい何を反省させ、いかなる研修を行おうというのか。思想信条、内心の自由を侵害しない、再発防止研修というのはどうしたら可能というのか。

ほんとうに、研修をさせようと言うのなら、録音機を持ち込む熱心さは称賛に値することではないか。いったいどんな理由でテープの持ち込みを拒否するというのか。合理的な根拠なく、前例がないでは到底納得しがたい。

理由を追及したが、埒があかないままの時間切れ。持ち物検査などしないことは確認し、それなりに被研修者を励ます効果はあったとして引き上げた。

複数報告を総合すると、研修の内容は以下のとおり。
研修場所はすべての対象者・校長が共通で１室に集めらた（座席数８０程度、被処分者６０名程度）。校長が、対象者のとなりや後ろに座った。
冒頭、研修の趣旨・目的等の説明はなく、いきなり法務監察課・山本課長が講師として「教育公務員の服務義務と関係法令について」と題する講義をはじめた。
参加者から質問がいくつも出たが、「質問は一切みとめない」との対応。
講義は９時４２分から１時間弱で終了。
内容は、地公法３２条（法令等及び上司の職務上の命令に従う義務）、３５条（職務専念義務）、３３条（信用失墜行為の禁止）等の内容の説明と、分限処分・懲戒処分の種類・内容等についての説明で、懲戒処分を受けるとかなりその影響は甚大いうことと、公務員としてルールを遵守せよとの点が強調されたとのこと。
特徴的なことは、
�‘�の丸・君が代関係の話を避け、一切ふれなかった。
��憲法・教育基本法には一切ふれず、終始地方公務員法の話だけだった。
という点。東京地裁７月２３日決定を意識し、違憲違法を指摘されないよう形式的な講義に終始した印象。

その後、３０分程度、報告書の用紙を配られ、報告書を書かされた。
報告書の題名は「自ら行った非行に関する報告書」ではなく、
「受講報告書」だったとのこと。用紙の左側に「主な研修内容」、右側に「所感」を書くという様式。なにを書けという具体的指示はなかった。

研修受講者が提出した報告書に対して都教委が今後どのような対応をしてくるのかは不明だが、「研修が終了とならない場合がある」との発言はあった。これに対して、「どのような場合に終了とならないのか、基準を聞きたい」との質問があったが、講師は答えなかったとのこと。

メモは禁止されず、録音は表向き禁止。しかし、所持品検査まではなかった。
午前１１時４０分ころから３０分程度の記者会見。マスコミの関心はかなり高く、テレビカメラが何台も入った。

被処分者の会のメンバーからは、「肩すかしだった」「何の意味があるのかわからず呆れた」といった感想が聞かれた。地裁決定で違憲違法の可能性を指摘させたことによる都教委への萎縮効果があったというのが、弁護団の感想。

午後も同様の申入れをして、それなりに運動の成果を確認した一日となった。今後は、「校内研修」と「再研修呼び出し」、３０日予定の「専門研修」（減給処分対象者）に関心が移ることになる。


2004年08月03日（火）
市民平和訴訟・レジメ

［ピースナウ・戦争に税金は使わせない市民平和訴訟］と固有名詞を冠された訴訟があった。フルネームはやや長すぎるということで、「市民平和訴訟」「ピースナウ訴訟」と略称していた。担当裁判所の書記官は「湾岸訴訟」と言い、これでも通っていた。

今日は、その経過を報告するためのレジメ作り。報告の場は、来週札幌でおこなわれる「イラク平和訴訟」連絡会議。「元祖・平和訴訟」の経験を伝えなくてはならない。

レジメの書き出しは、以下のとおり。
　「１３年前の「平和訴訟」の経験をお伝えします。
　　経験は、新たな試みを拘束しません。
　　しかし、経験を踏まえることが、無用な労苦を回避することもありえます。
　　理論と運動の両面において、
　　　　かつての到達地点から新たな地平を切り開いてください」

書き始めてみると、思い出が深い。
その提訴は、１９９１年３月５日。その年の１月１７日から、米軍のイラク攻撃が始まった。湾岸戦争である。パパ・ブッシュからの戦争加担要請に、当時の海部内閣は右往左往する。まず、９０億ドルという多国籍軍への戦費負担支出が決せられる。次いで、自衛隊機の中東への派遣、そして掃海部隊の派遣問題が生じる。

これに反対する人々の中で、訴訟でこれを阻止しようと考えた一群があった。その数は３０００人を超えた。その人たちの思いは、「憲法は、戦争を禁じ平和のうちに生きる権利を保障している。なのに、どうして戦費の支出が許されるのか」「自分の支払った税金が戦費として支出されることは、自らの意思に反して人殺しに加担させられること」「私たちは、殺されたくないし、殺したくもない。自分の税金が戦費に使われることを差し止める権利があるはず」

その権利こそ、「平和的生存権」であり、「納税者基本権」である。このふたつの権利を具体的権利性を持つものとして争った。仮に、差し止めや、違憲確認訴訟が認められなくても、国家賠償請求は認められるはず。

私たちは、東京地裁１０３号法廷を満席にして２１回の口頭弁論を重ねた。毎回の法廷に、全原告弁護団が一輪ずつの花をかざして入廷した。毎回の主張をみんなで作り上げ、学習会を繰り返した。結果は敗訴だったが憲法運動としては大成功だった。理論的にはもう一歩のところだが、その後この一歩が詰められていない。

いま、ブッシュ・ジュニアが懲りずに対イラク戦争をくり返し、小泉内閣がこれへの加担を現実化している。再度のイラク訴訟が５地裁（札幌、名古屋、東京、大阪、静岡）に係属し、６日には甲府が続く。他に仙台も準備中という。かつての経験を共有して、その中から現実に勝てる訴訟戦略を考えたい。


2004年08月04日（水）
内村鑑三弾圧と都教委

「靖国・天皇制問題情報センター」という団体がある。月刊で、通信を出していて、通算では３７７号とのこと。その最新号の巻頭に、土肥明夫という方が、内村鑑三不敬事件について、書いている。以下は、その紹介。

１８９１年１月９日、当時内村鑑三鑑三が奉職していた一高で教育勅語奉読式が行われた。前年に出たばかりの勅語に箔をつける儀式だったようだ。校長代理が勅語を奉読したあと、教員と生徒全員が勅語に記された明治天皇の署名に対し「奉拝」することを求められた。しかし、鑑三はその信仰上の信念から頭をちょっと下げただけで、「奉拝」しなかった。これが「不敬事件」として生徒、教員、ジャーナリズムから攻撃された。彼は職を失い、妻を失い、放浪生活を余儀なくされた。

彼の勅語奉拝拒否は唯一神信仰上の良心に基づくものであり、覚悟の上の行動であった。その直前、所属教会から退会している。教会に難が及ぶことを恐れてのことだという。

私の関心を惹いたのは、事件後における一高校長木下広次の鑑三宛て書簡である。この書簡は、現存するものだそうだ。
「学校として個人の信仰の自由に干渉するつもりはないが、社会のルールは守ってほしい。日本の社会は天皇の親署を『神聖物』『この上もなき本尊』とし、その敬礼は『最重』でなくてはならない」というもの。
鑑三の文書によれば「お辞儀は皇帝に対する礼拝にはあらずして、単に尊敬に過ぎずと固く信ずとて、国民の習慣に従うことを、殆ど小生に懇願せんばかり…」との内容だという。
出典は、鈴木典久「内村鑑三日録１８８８〜１８９１一高不敬事件」（上・下、教文館１９９３年）、「内村鑑三著作集１８」（岩波書店）とされている。

これが、１１０年余も昔のことである。一高校長といえば、相当な「学識者」ということなのだろうが、どの時代にもこんな俗物が巾を利かせるのだ。「教員の思想・良心を問題にしているのではない。外形的行為だけが問題」という今の都教委と、瓜二つ。いや、毒饅頭二つだ。まったく同じ発想、同じ感覚。精神的自由尊重の念なく、その抑圧をどう糊塗するかについての全く同様の詭弁。

一世紀の余を経て「歴史は進歩しない」のか、都教委が１００年前の無茶苦茶のレベルに退化してしまったのか。
いずれにせよ、石原慎太郎も、横山洋吉も、運がよければついでに米長邦雄も、１００年後に木下広次と同様の俗物の見本として名を残すことになるだろう。


2004年08月05日（木）
オリンピックがなんだ

オリンピックが近いという。「それがどうした」。

スポーツイベントは規模が大きくなればなるほど、うさんくさい。オリンピックともなれば、ナショナリズムとコマーシャリズムのいやらしさが極限化する。もちろん、ここにも「日の丸・君が代」の押しつけがある。うんざりだ。

スポーツの起源は多分労働なのだろう。次いで、軍事と神事が発展させたのだと思う。今は、コマーシャリズムが完全に牛耳っている。

日本の体育は、兵士としての基礎訓練のために導入された。学校が、富国強兵の政策実践の場だったからだ。だから、体育会系には軍隊の名残が消えないし、天皇制や右翼の匂いがする。しごき・体罰・精神主義・古参と新兵の格差など、旧軍の伝統がまだ生きているようだ。「昔軍隊・今体育系」である。なるほどそれで、国民体育大会は「国体」護持の企画として永らえている。

アメリカのスポーツは、差別の上に花開いている。低所得層のハングリー精神が、スポーツ大国アメリカの基盤である。イギリスのスポーツは、貴族階級の鼻持ちならない特権意識に支えられている。

「保守的精神は、鍛えた体に宿る」「立派な体に、足りないおつむ」「たたき込めば、批判精神を摩滅できる」「すぐれたスポーツマンは、上からの命令に反射的に従う」「考えるな、体を動かせ」「ルール至上主義は競技場でたたき込め」

夕刊に、野口みずきというオリンピック選手（女子マラソン）の「高地合宿順調」という記事が出ていた。名古屋の先物取引会社グローバリーの所属である。グローバリーは、元東海交易と言った。強引な勧誘で顧客とのトラブルの多い業者として知られる。オリンピック選手を出したことの宣伝効果は相当なものであろう。普通の会社のように思われてしまう。これで、被害が拡がらなければよいのだが、とハラハラしている。


2004年08月06日（金）
５９年目のヒロシマ

本日は広島へ原爆投下の日。５９年前の今日、人類史最大の事件が起こったのだ。

私は、１９４５年８月６日午前８時１５分をもって、人類史はその前史と後史に二分されると考える。この瞬間に、人類は自殺能力を持った。人類史の有限性を突きつけられたのだ。この瞬間、予定調和は壊れ歴史の未来に滅亡の選択肢が書き加えられた。人類は英知を集めて意識的な平和への努力を積み重ねなければ、滅びへの道を辿りかねないこととなったのだ。

例年、この朝は、広島市の平和記念式典にチャンネルを合わせる。厳粛な式に、参加する気持ち。秋葉市長の今年も素晴らしい「平和宣言」、子ども代表２人の「平和への誓い」、そしていかにも場違いな様子でボソボソと原稿を読む小泉首相の「挨拶」。市長と子どもには盛大な拍手、小泉挨拶にはなんの反応も起きない。
この日だけはＮＨＫも背筋を伸ばした報道姿勢。元国際司法裁判所判事・ウィラマントリーさんや反戦の立場をとる米兵の出席も紹介。「暴力と憎しみの連鎖」「暴力と報復の連鎖」という言葉をくり返し、その連鎖を断つ必要に幾度も言及した。まだ、これを支える世論が健在なのだ。

日の丸・君が代のまったくない、すがすがしい式典。国体護持のために敗戦受諾を遅らせ原爆投下を招いた前天皇には、この式典に出席する資格はなかった。その息子も、うっかりここに顔を出せば大きなブーイングを浴びることになるだろう。

ここまで書いて、既視感に襲われた。昨年も、同じことを書いたのではないか。
念のためと思って過去ログを見てみると、ほとんど同じではないか。主張の一貫性に確信を持った、なんてことはない。変わり映えのないことに愕然とした。私には、進歩というものがない。

ついでに、昨年の８月分の日記を読み返してみた。ウーン、それなりになかなか面白いではないか。しばし、１年前の自分の文章にうなずいた今年の８月６日であった。


2004年08月07日（土）
合意による敗訴者負担、この奇妙なるもの

司法改革は、立法過程としては最終盤である。残っているのは、弁護士報酬の敗訴者負担問題とＡＤＲ制度の２点だけ。これも、秋の臨時国会でけりが付く。

弁護士報酬の敗訴者負担には、大きな反対運動が巻き起こった。市民の立場から見て、制度の改正ではなく、とんでもない改悪であることが明らかだったからだ。

仮に敗訴の場合に、相手方の弁護士費用まで払わされることとなったら…。絶対に勝てるという見通しある事件以外は、とても恐くて提訴ができない。敗訴者負担制度の提訴萎縮効果である。これが、制度導入のねらいであり、反対理由でもある。
市民の権利に大切な事件ほど、絶対に勝てるなどとはいえないのだ｡市民が、国や大企業を相手に起こす訴訟こそ、司法本来の使命を果たすべき場であり、民事訴訟の真骨頂である。そこに萎縮効果が顕著なのだ。日の丸･君が代訴訟も、政教分離訴訟も絶滅を危惧しなければならなくなる。公害、消費者、労働、医療などにも影響は大きい。このことは、財界・国家の切実な要求であり、「濫訴防止」を言う最高裁の積年の念願でもある。

市民の大運動の結果、不思議なことが起こった。担当の「司法アクセス検討会」の議論が、突然に「合意による敗訴者負担ならよいだろう」ということになったのだ。世界中のどこにもない珍妙な制度として法案が作られ、既に国会に上程されている。

合意は、二つの局面で考えられる。ひとつは、訴訟上の合意である。これには、一定の歯止めがかけられる。そして、もう一つが訴訟外の私的合意による敗訴者負担の定めである。こちらにはなんの歯止めもない。物を買ったら、役務の提供を受けたら、約款に管轄合意と並んで敗訴者負担の定めが記載されていた、ということになる。就業規則や労働契約、定型的な不動産賃貸契約書、入院契約書、手術承諾書等々に細かい字で書き込まれることになるだろう。その効力が認められるのでは、完全な尻抜けだ。市民が泣き寝入りせずに裁判所を利用する意欲を阻喪させる。何とかしなくてはならない。

日弁連は、９月２８日（火）午後６時から、有楽町マリオンを舞台に「合意による弁護士費用の敗訴者負担」制度導入に反対する大集会を開催する。「行列のできる法律相談所」のレギュラー弁護士が出演して、この問題を議論する。

その議論の材料となるコントの原案作りが私の役目。本日２例起案してみた。１例は、医療過誤ケースで、訴訟上の合意ができたもの。勝てるという見込みで「訴訟上の敗訴者負担の合意」に応じたところ、予想に反して敗訴してしまった悲劇。
もう一つが、先物取引被害訴訟で敗訴のあとに、追っかけて「約款による敗訴者負担の合意」を盾に、別訴で弁護士費用を請求される例。

こんなことになったらたいへん。多くの事例で提訴が躊躇され、国や企業が不戦勝となってしまう。こうならないように、もう一踏ん張りなのだ。


2004年08月08日（日）
北京のブーイング　　

サッカー・アジアカップの決勝戦が昨日北京で行われた。その勝敗にはなんの関心もない。私の関心は、アジアカップ連戦を通じて示された中国民衆の対日感情についてである。そして、日本側マスコミの反応について。

１５年にわたった日中戦争の戦地は、すべて中国であった。明らかな侵略戦争である。中国人が、その被害について憤りの感情を持続しているのは至極当然なのだ。加害者は忘れやすく、被害者は忘れがたい。

彼の地では、世代を超えて日中戦争の記憶が伝達されている。我が国では、意識的に過去を葬り去ろうとする動きが強い。小泉靖国参拝、「日の丸・君が代」強制、９条改憲の動きに、中国の民衆が「悪夢再び？」と警戒心を強めてなんの不思議もない。

中国政府当局は、民衆の暴発に手を焼いているようだ。かつては、政府のご意向ひとつで民衆は黙る、というイメージがあった。が、今はそうでない。自信をつけた市民が、政府当局に対しても、日本に対しても毅然たる態度を示すようになっている。着実に民主化が進んでいるのだと、妙なところで感心する。

むしろ問題は、事態を報じる日本のマスコミの姿勢である。歴史的な経緯や、日本の右翼的国内事情が中国にどう映っているのかを抜きにして、「国旗・国歌」に対する敬意を欠いた中国は怪しからん、というキャンペーンとなっている。笑止千万ではないか。

国旗・国歌に敬意を払うべきは当然のマナーである。だからこそ、敢えて国旗・国歌にブーイングをすることが、思想的に意味ある行動となりうる。象徴的な表現行為としてその自由が尊重されなければならない。課題は、日中両国の間に立ちはだかっている過去から現在までの障壁の現実をきちんと見据え、対処を考えること。この高く厚い壁があたかも存在しないかの如く糊塗していてはなんの解決にもならない。

興奮して、人を殴ってはならない。試合の妨害もいけない。しかし、国旗や国歌にブーイングすることは、禁ずべきことでも、反省を求めることでもない。「理由はともかく、その行為がいけない」なんて、石原慎太郎や都教委が言いたそうなことを、ジャーナリズムが尻馬に乗って言うべきことではない。


2004年08月09日（月）
長崎原爆の日に原発事故

１９４５年８月９日午前１１時２分。長崎市民の上空で、プルトニウム爆弾が炸裂した。小倉に落とす予定が、天候で急遽長崎に変更されたという。その悲劇から、５９年を経た。

長崎原爆犠牲者慰霊平和式典における、伊藤一長市長の「平和宣言」全文を夕刊で読んだ。切実な訴えに、胸打たれるものがある。

その結びは「長崎市民は、核兵器のない真の平和な世界を実現するため、たゆまず努力することを宣言します」とされている。この宣言は、核廃絶・平和への願望を語るだけでなく、結びの「核兵器のない真の平和な世界を実現するため」の具体的な呼びかけとなっているところに特色がある。

呼びかけの対象は、まず、アメリカの市民である。「アメリカ市民の皆さん」との語りかけが２度繰り返される。そして、「世界の皆さん」への訴えがあり、「日本政府に求めます」との注文がなされ、最後に「若い世代の皆さん」へ希望が語られる。

アメリカ市民に対しては、「今なお約１万発の核兵器を保有し続け、臨界前核実験を繰り返しています。新たに開発しようとしている小型核兵器はすさまじい威力を持つもので、放射線障害をもたらす点で、長崎に落とされた原爆と違いはありません」「人類の生存のために残された道は、核兵器の廃絶しかないのです。今こそ、ともに手を携えてその道を歩み始めようではありませんか」と言う。

注目すべきは、日本政府に対するはっきりした物言いである。「日本国憲法の平和理念を守り、唯一の被爆国として、非核三原則を法制化すべきです」「非核三原則と朝鮮半島の非核化を結びつけることによって、北東アジア非核兵器地帯を生み出す道が開けます。それは同時に日朝平壌宣言の具体化にも合致し、日本自らが核兵器に頼らない独自の安全保障のあり方を求めることにもつながるのです」
式典参列の小泉首相の耳に、どう響いたか。

人類は、核兵器との共存はありえないことを確認したその日、福井県美浜町の関西電力美浜原子力発電所で、４人の死亡事故。人類は核の平和利用をなし得るのだろうか。


2004年08月10日（火）
私の弁護士論

普段、あまり意識しないことをしゃべったり書いたりするよう、言われることがある。それが、普段漠然と思っていることを明確化するきっかけになる。
伊藤塾から「明日の法律家」という講演を依頼された。伊藤塾は、司法試験予備校であるが、その護憲的姿勢で知られる。お引き受けして、ギリギリに講演のアウトラインを下記のようにまとめてみた。

弁護士のあり方にお手本はありません。その理念も、活動スタイルも、それぞれの見識と好みで、自分流の選択が許されます。おそらく、他のどの職業よりも、弁護士の生き方は自由で多様です。
私も、青年客気の赴くまま、「権力の手先にはなるまい」「資本の走狗に身を落とすまい」と、弁護士の自由にあこがれて司法試験に挑戦したひとりです。
私があこがれた「自由」とは、強者による強制や横暴からの自由。具体的には、政治権力や資本の意のままにならないこと。その横暴や不合理に、きっぱりと「ノー」と言えること。そのようにイメージしてきました。
そして、弁護士は、自らの自由を謳歌するにとどまってはならず、社会に自由を涵養する責務を負っていると考えます。
ですから、私にとっては企業や政府の側に付く弁護士というのは、そもそも選択の対象にはありませんでした。厳しく、強者と対立する弁護士。これが、本来の弁護士の姿だと、今も信じて疑いません。

これまで、弁護士として活動するに際して、私は日本国憲法の存在をこの上なく貴重なものと実感してきました。この実定憲法は、権力や資本の横暴を糺すための武器として素晴らしい切れ味を持っています。
本来、法律家は時の多数派が作った法律に縛られる存在であり、その意味では保守的ならざるを得ません。しかし、戦後日本の特殊な歴史事情と日本国憲法が、リベラル派弁護士群」を生み出したのだと思います。
つまり、保守主流の立法府、官僚的行政府、そして遅々として進まぬ社会の中にあって、進んだ憲法が現実批判の有効な武器として使える状態にあり続けてきたということなのです。ですから、私は、体験的に改憲には絶対に反対です。

もう一つ、司法は憲法理念を忠実に具体化する場でなくてはなりません。弁護士の本来的な職場である司法が歪んでいては、憲法という鋭利な道具も使いこなすことは到底できません。私が、弁護士になった１９７１年は、「司法の嵐」が吹きあれた年でした。私は、最高裁の理不尽と現場で対決して、自分の生き方を決めました。
憲法理念を生かすこと、そのための健全な司法を実現すること、これが私の基本的立場です。

弁護士の業務は、基本的に、個別的で、事後的な権利侵害の救済です。したがって、その影響は宿命的に限定されています。
しかし、権利というものは普遍的なものです。ひとつの判例は、その事件の当事
者だけでなく、同じ立場にある人の権利を伸ばしも、縮めもします。その意味で、訴訟の帰趨の影響力はけっして小さくありません。
事件の内容によっては、行政のあり方を変革します。場合によっては、立法を促します。
種々の市民運動、社会運動、平和運動と連携して、訴訟が提起されることが少なくありません。運動としての訴訟には、理念を共有する弁護士が参加します。
公害、薬害、職業病、教育、消費者、労働、平和、精神的自由、政教分離、選挙制度等々の分野で、運動としての訴訟が盛んです。これまでの憲法訴訟は、ほぼ例外なくこのようなスタイルで行われてきました。
ここに参加する弁護士のあり方が、運動体から問われます。プロフェッショナルとしての技量と、理念への共感とがともに必要とされています。

結局は、弁護士としてのあり方特有の問題は希薄で、人間としての生き方が問われているということなのでしよう。


2004年08月11日（水）
イラク派兵差止訴訟連絡会議

昨日と今日とは、札幌だった。「イラク派兵差止訴訟弁護団全国連絡会議」への出席のためである。

参加者は、既に提訴している北海道・名古屋・東京・静岡・大阪・山梨の６弁護団と、提訴準備中の仙台から。箕輪登・天木直人さんらの原告、深瀬忠一先生など研究者を含めて総勢６０名の充実した研究集会となった。

第１日目は、まず「市民平和訴訟の到達点」として私が基調報告。１９９１年提訴の湾岸戦争時の「９０億ドル支出差し止め」、「掃海部隊派遣差し止め」、「慰謝料請求」訴訟での敗訴の経験の紹介。基調は、「敗訴ではあったが憲法運動としては成功した試み」「本気になって勝訴の努力をするのでなければ、運動にもならない」「敗訴判決の分析から、獲得した到達点と勝訴までの距離の大きさとがともに見える」。この経験から出発していただきたい。

問題意識は、「自衛隊の海外派兵が違憲・違法であるという実体論のレベルでは、被告国側を圧倒することになるだろう。しかし、十分な論争をし、裁判所に憲法判断をさせる土俵を築くのが実は容易ではない」「問題は平和的生存権の具体的権利性である。私たちはこれを「国民個人が、政府に対して、違憲な戦争政策をやめさせる具体的請求権」と構成した。少なくも、その侵害が慰謝料請求の根拠となる権利である。また仮に、裁判所が「憲法に根拠を持つ、基本的人権のひとつとして認める見解にまで到達しなくても、その実質は法的保護に値する被侵害利益にほかならない」したがって、国家賠償請求訴訟が認容されてしかるべきである。

この点を判決は否定したが、「受忍限度を超えていれば、法的保護に値する利益の侵害があったと認めうる」「そのためには、国民一般としての不快感ではなく、その人特有の特別の事情からもたらされた精神的侵襲がなくてはならない」という。裁判所は、もっと個別化し、その人特有の具体性ある精神的被害であれば、認容の余地があるという態度なのである。一般論としての権利の内容を具体化する努力と、個別事情を強調することによる一点突破の努力がともに必要。

次いで各地の報告があり、議論を重ねた。内藤功弁護士などベテラン発言の重みと、各地弁護団の若手の情熱とが噛み合って有益だった。今後の情報交換と具体的な協力態勢を作ることを確認し、次回を年末名古屋で行うことを決定した。そして、集会参加者で声明を採択し、記者会見を行った。私は、箕輪登さんにお目にかかるのは初めて。高齢・病後の不自由なお体での情熱には感心させられた。案外、保守政治家の中にも、一緒にやっていける人がいるのかも知れない。

札幌から帰宅して、母校が甲子園の初戦で敗れたことを知った。これで穏やかな夏となる。もちろん、負け惜しみであるが…。


2004年08月12日（木）
イラク訴訟における運動論

昨日の続きである。札幌での感想。
弁護団の全国連絡会議であったから、議論の焦点は自ずから「平和的生存権」の構成、国家賠償請求における被侵害利益論に集中した。ここを突破しなければ、憲法論議に踏み込めない以上、やむを得ない。しかし、感想は別のところにある。

周知のとおり、イラク派遣差止訴訟の第一陣は、「みのわ道産子訴訟」とネーミングされた札幌地裁提訴である。元郵政大臣、自民党国防族でタカ派といわれた箕輪登氏お一人が原告となった訴訟。この方は、自衛隊の存在が違憲だとはまったく考えていない。しかし、自衛隊が専守防衛に徹すべきであって、憲法解釈上海外派兵が許されざることについて、誰よりも強い信念を持っておられる。そのことについては一貫していささかも揺るがないという。

この方が、小泉内閣のイラク派兵を憲法違反として訴訟を起こせないかと、札幌弁護士会に相談し、そこで弁護団の中核となる弁護士と出会うことになる。この弁護士たちの多くは、憲法９条の解釈として「非武装による恒久平和主義が明記されている」と理解している。自衛隊違憲論者である。しかし、彼らは、「憲法９条の解釈について意見の相違があるから訴訟のお引き受けはできない」という立場をとらなかった。「海外派兵派兵は違憲」との立場の一致があるのだから、大きな訴訟にする努力をしましょう、と対応した。こうして、全道の弁護士の４分の１を上回る１０６名の弁護団の結成を見ている。

また、８月６日原爆の日を期して提訴の山梨訴訟は、県内の市民２２５名が原告となって、「派兵は決定的違憲・市民訴訟」とネーミングしている。「派兵は違憲・訴訟」とは微妙な差異が感じられる。「決定的違憲」とは、自衛隊存在自体の違憲とは質的に異なる違憲状態が現出しているという表意であろう。ここでも、「海外派兵だから違憲」と考える人も、「そもそも自衛隊の存在そのものが違憲なのだが、海外派兵はさらに違憲の度合いを決定的なものとした」という意見の人も、一緒に運動をしていこうという含意が読み取れる。

今や、「明文改憲阻止」こそが、国民運動の統一スローガンである。このスローガンで国民の過半数を現実に獲得しなければならない。専守防衛の自衛隊なら、現行憲法でこと足りる。改憲は、海外派兵のためと考えざるを得ない。専守防衛派は、明文改憲阻止の際の仲間たり得る。
札幌、山梨の訴訟のあり方は、誰を味方と考えるべきかについて、またどのようにして味方を大きくするかについて、実践的な示唆に富むものである。
そして、既に３０００人を超している名古屋訴訟の勢いにも励まされる。


2004年08月13日（金）
プロ野球選手会のスト権確立

　ストライキ思ひ出でても
　今は早や我が血躍らず
　ひそかに淋し
啄木の「一握の砂」の一首。この歌集は、１９１０年刊だから１８８６年生まれの啄木が２４歳以前に詠んだことになる。信じられない精神の老成。
彼が思ひ出づる「ストライキ」は学生時代のものだろうが、どんなストライキも血湧き肉躍る。私はこの年になっても、ストと聞けば血が騒ぐ。スト蔓延が望ましいとも思わぬが、これほどストのない社会は「ひそかに淋し」い。

労働組合・プロ野球選手会がスト権を確立した。７５２人の選手会メンバーのうち投票総数６６１で、賛成票は６４８（反対７、無効６）の９８％だという。
要求は、いわずと知れた「球団合併凍結」「一年間議論を尽くすこと」。この要求が通らない場合、最終手段として９月８日のオーナー会議の前後にスト突入の可能性がある。

プロ野球のスト。それこそ楽しいエンタテインメントではないか。戦術を凝らそう。五月雨スト、時限スト、一部スト、部分スト、指名ストもあるぞ。
ストの指名権は、組合執行部にある。巨人＝ヤクルト戦の最終回、１点ビハインドの巨人が２死満塁でバッターボックスにローズ。ここで、古田委員長からローズに指名ストの指示…。なんてことはないか。

いずれ、労働者・労働組合に、プロ野球選手が労働基本権を思い出させるというのは愉快なこと。ストよ流行れ。せめて、スト権確立通告よ、社会に流行れ。

「無礼なことを言うな。分をわきまえなきゃいかんよ。たかが選手が」、「ストライキでもなんでもできるならやればよい」と言ってのけた、かの巨人軍オーナーの反応や如何に。と続報を楽しみにしていたら、あっけなく不祥事で引責辞任。興趣殺がれた感もあるが、「天の時・地の利・人の和」ともに、選手会側にあり。試合より、こちらの方が面白い。今年のプロ野球、大リーグとオリンピックに押されっぱなしだったが、ようやく盛りあがってきたではないか。

　赤き旗に
　赤き血燃やせ
　ストライキ
　われが我が身の
　主なる証しに


2004年08月14日（土）
アメリカという国に腹が立つ

猛烈に腹を立てている。アメリカという国に対してである。

まず、１２日のパウエル国務長官発言。「日本が国連安保理常任理事国入りするには憲法９条の再検討が必要」だと。詳しくは、以下のとおり。

「米国は日本が安保理の常任理事国になるために支援してきた。日本には憲法９条についてとても強い思い入れがある。日本にとっての重要さと９条がある理由はよく理解している。しかし、同時に日本が国際社会で十分な役割を演じ、安保理でフルに活躍する一員となり、それに伴う義務を担うというのであれば、憲法９条は（現状のままで問題がないかどうか）検討されるべきだろう。しかし、憲法９条を修正するか、変更するかどうかは、もちろん絶対的かつ完全に日本の人々が決めるべき問題だ。米国は決して意見を言うつもりはない。」（「朝日」）

同様の見解は、１４日にも繰り返された。米国務長官発言の日本での影響を計算し尽くした上で、目一杯「意見をいうつもり」の発言である。そう言えば、先日最大野党の党首がアメリカで、「憲法を改定して、国連安保理の決議がある場合には海外での武力行使を可能にする」なんぞと言っていた。これに呼応してのことだろう。

誰が見ても明らかな米国外交トップによる露骨な内政干渉である。しかも、その内容が９条改憲を日本に迫るものである。先には、７月２１日にアーミテージ副長官が同趣旨の発言をしている。こちらには、「憲法９条は日米同盟関係の妨げのひとつ」というおまけも付いている。紛れもない「押しつけ改憲」ではないか。

そのアメリカの軍隊が、沖縄・宜野湾で事故を起こした。海兵隊の大型輸送ヘリコプターが沖縄国際大学校内に墜落したのだ。それだけではない。事故後の現場は米軍が封鎖し、県警の捜査員が立ち入れない状況が続いている。県警は１４日、現場の実況見分をするため、日米地位協定に基づき、在沖米海兵隊側に同意を求めたが、米軍側は「検討中」としか回答していない。

また、そのアメリカの軍隊が、イラクでの戦闘を拡大し、ナジャフへの攻撃を重ねている。かつては、フセインの敵であったスンニー派への攻撃である。時あたかも、国連総会がオリンピック期間中の停戦を世界の紛争当事者に求める決議を採択したにも拘わらず、である。

この点に関して、またしてもパウエルが言った。「責任を問われるべきなのは私たちではなく、暴力を続けている連中だ」と。「オリンピック停戦は崇高な取り組みだが、オリンピックのためにすべての動きをやめるわけにはいかない」とも。大量破壊兵器を持たない国に、デマに基づいて先制攻撃をしておいて、はずかしげもなくよく言うよ。「証拠もないのに、ヒトの国に攻め込んで何千人も殺したどっかの国は何の刑になるんだろーね」（しりうがり寿「地球防衛家のヒトビト」）と私も思う。誰しも腹が立つだろうと思うのだが。


2004年08月15日（日）
５９年目の８月１５日

やや肌寒いが、８月１５日である。
私が２歳の誕生日を迎える直前、５９年前のこの日に戦争が終わった。
この日、何を思うべきか。

何よりも、おそるべき戦争の惨禍を再度思い起こさねばならない。かけがえなく貴重なものは、一人ひとりの命であり平穏な生活である。その一人ひとりにつながる愛する人、家族、友人、仲間、郷土がある…。かけがえのないものを奪った戦争、人と人とを無惨に引き裂き、人の数だけの悲劇を作り出した戦争を、つらくても思い起こさねばならない。豊かで平穏であるべき無数の人生を残酷に砕いた戦争の記憶を伝えなければならない。真剣に耳を傾け、事実を知る努力をしなければならない。

戦争の悲惨さは自国のものだけではない。相手国の人々の悲惨に、より鋭敏に想像力を働かさなければならない。その戦争が、主には相手国を戦場とするものであったのだからなおさらのこと。

そして、再び愚かな政府の行為によって戦争の惨禍を繰り返すまいとした、その誓いを思い起こさねばならない。５９年前のこの日、日本の歴史は過去から訣別し、再出発した。再生日本は、崇高な理念をもって新たな憲法を制定した。主権原理を転換し人間の尊厳を第一義とすることを定めただけでなく、恒久平和主義を宣言した。戦争の惨禍への反省から出発した国が、戦争の防止を最高規範としたのは当然と言うべきであろう。

その恒久平和主義の理念がいま揺らいでいる。加害・被害の両面でこのうえない悲劇を積み上げて戦争を終えたほかならぬこの日に、戦争防止システムとしての恒久平和主義の意義を再確認しなければならない。

日本国憲法は、一国の実定憲法の中に、戦争を放棄し軍隊の不保持を明記したという点において、人類史上特筆すべき位置を占める。第２次大戦終了直前に制定された国連憲章は、例外措置としてではあるが、武力による平和という思想を内包している。日本国憲法は、これを完全に断ち切って非武装による平和創造の理念を徹底した。これを後退させることは、人類史への背信にほかならない。

確かに、その理念の崇高さの故に、憲法９条はないがしろにされて満身創痍である。そのことに、歯がみする思いはある。しかし、憲法９条はけっしてその存在意義を失っているわけではない。平和憲法はけなげに頑張っている。国民の平和運動や憲法意識とともにである。

日本の自衛隊は、創設以来１人も殺していない。１人も殺されていない。自衛隊が国政を左右する事態もない。平和憲法があればこそである。
非核３原則も、憲法９条に支えられている。武器輸出３原則も激しく攻撃されながらいまだ健在である。
かつてカンボジアを訪れた際のことを思い出す。現地の今川大使が「自衛隊が来てくれるまで、大変肩身の狭い思いをした」と言った。「そんなことはない。武器輸出３原則を誇るべきではないか。米・英・ソ・仏・中がカンボジアの中にある地雷の９割を作っている。日本は１個の地雷も輸出していない。肩身が狭いという必要はない」そんな議論をした覚えがある。
集団的自衛権行使も否定されている。国連軍への参加もできない。国連主導であれば海外派兵も武力行使もできるということにはなっていない。国民の平和意識・国民の平和運動と結びついて、憲法９条はいまだ健在というべきである。

憲法９条が、とりわけその２項が、改正されるようなことになったらどのような影響が及ぶことになるだろうか。現実と理念がこれだけ乖離している時に、理念を現実側に押し戻せば、現実がさらに理念から遠のいていくことになる。なんとしても憲法９条特に２項を守らねばならないと思う。

９条の明文憲改に反対するすべての人が味方である。この日、あの大戦の悲劇を繰り返すまいと思う人が改憲反対の陣営に連なる味方なのだ。そのことを再確認すべきこの日である。


2004年08月16日（月）
０４年８月１５日の九段界隈

例年８月１５日に政府が主催する全国戦没者追悼式には、どうしても違和感を感じる。ここでは、主役が天皇であり首相であるからだ。とてつもなく大きな「日の丸」の膝下に、参加者が首を垂れ、「君が代」が流れる。国威発揚式なる如く。

正午から１分間の黙祷は、「第２次世界大戦中に戦火により内外で亡くなった３１０万人」に対して捧げられた。基本的に身内に対する追悼式。皇軍に殺された２０００万人に対する参加者の追悼の意の表明はない。

天皇は、「戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し心から追悼の意を表し、世界の平和とわが国の一層の発展を祈ります」と言った。無意味と言えば無意味。無責任と言えば無責任。３１０万人にも、２０００万人にも、謝罪と自責の気持ちは伝わらない。

小泉首相の式辞は「我が国は、多くの国々とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた」と加害責任に言及。「過去を謙虚に振り返り、悲惨な戦争の教訓を風化させることなく、不戦の誓いを堅持する」と述べた。その上で、「国際社会の一員として、世界の恒久平和の確立に積極的に貢献する」とした。
その措辞は悪くない。惜しむらくは、毎年靖国神社参拝を繰り返すその人の言であること。人道復興支援のためにイラクへの自衛隊派遣を強行し、詭弁で多国籍軍参加を合憲という、この人の行為と結びつけて理解せざるを得ないこと。

同じ言葉でも、この人が言うと、「かつての被侵略国がなんと言おうとも、謙虚に、不戦の誓いを堅持するために、靖国神社へは毎年公式参拝を続けるぞ」「国際社会の一員として、世界の恒久平和の確立に積極的に貢献するために、自衛隊の海外派兵はガンガン続けるぞ」という宣言に聞こえる。

これに対比して、河野洋平衆院議長の追悼の辞は、文意のとおりに受けとめられる。普段の心がけ次第なのだ。
「中国をはじめとするアジアの近隣諸国の人々にも私たちの深い祈りをささげたい」「敵味方に分かれて戦い、亡くなったすべての犠牲者に、この日をささげたい」「私たちは亡くなられた方々がまぶたの裏に見た新生日本を裏切らずに造り上げているか、尊い犠牲を無にしていないか、不安が時折よぎる」「２度にわたり世界大戦の戦場になった欧州は、諸民族の和解と法の支配の基礎の上に地域統合への力強い一歩を踏み出した」「欧州の今日の姿は人類の英知の輝き。我々アジアが歩むべき道を示している」
その言やよし。むしろ、卓見というべきであろう。

この日、例の如く、国会議員の靖国神社集団参拝があった。閣僚では中川昭一経済産業相、亀井善之農相、小池百合子環境相、小野清子国家公安委員長。ほかに、衆参両院議員５８人。安倍幹事長は近隣諸国の懸念について「我が国が今、世界の平和のために貢献している姿を見て、懸念を払拭してもらいたい」と述べたという。おそるべき独善、おそるべき鈍感。河野議長のせっかくの心情を帳消しにして、近隣諸国の神経を逆撫でしている。

さらに、問題児石原慎太郎も５回目の靖国神社参拝。その後、「天皇が靖国神社に参拝いただければ、天皇にしか果たせない国家に対する大きな責任を果たしていただくことになると思います」と語ったという。彼の頭の中には、憲法も、政教分離も、戦争責任も、いや立憲主義そのものがすっぽりと抜け落ちている。

彼は、知ってか知らずか。１９９１年１月１０日の仙台高裁岩手靖国違憲訴訟判決では、天皇の靖国神社公式参拝の反憲法性が厳しく指摘されている。


2004年08月17日（火）
オリンピックがうっとおしい　

オリンピックがうっとおしい。「ニッポン、ニッポン」という声援にシラける。「日の丸」の氾濫にうんざり。「君が代」となれば不気味このうえない。

本日の夕刊。オリンピックがなければ、「在沖縄米軍、沖縄県警の墜落へり現場実況見分要請に拒否回答」の記事が社会面のトップになったろう。米軍へり墜落関連記事が社会面の大半を埋めたはずだ。現実には、たかが「男子体操金メダル」の記事に押されて、ベタの扱い。米軍は、実況見分拒否のまま、墜落へりを撤去してしまった。「ニッポン、ニッポン」なんて、浮かれている場合か。米軍のナジャフ攻撃も、イラク国民会議の混乱も、オリンピック報道の陰に隠れてしまっている。「アジアで攻撃力強化」という米軍再編計画もだ。

私は昔もこうだったのではない。ヘルシンキ・メルボルンでの日本選手のメダル獲得を渇望したものだ。日本人が出場すればかならず日本人を、日本チームが闘えばかならず日本チームを応援した。それもかなり熱い気持ちで。オリンピックだけではない。力道山がシャープ兄弟をたたきのめす姿に快哉を叫んだ。古橋・橋爪の活躍に胸を躍らせた。ボクシングの白井しかり、ボストンマラソンで勝った山田しかりである。

あれは、民族的コンプレックスのなせる業であった。戦争に負けた日本、貧しく世界から一人前に見られることのない日本。その日本の一少年として、日本も一人前なのだという胸を張れる証しがほしかったのだ。力道山が朝鮮籍だとは知らなかった。彼こそは、実力でアメリカをねじ伏せる国民的ヒーローであった。

だんだんと、日本は貧しさから脱却した。私もナショナリズムから脱却した。オリンピックへの関心も薄れたし、日本を勝たせたいという気持ちは全くなくなった。

オリンピックのプラスの面は否定しない。世界の人々が、何であれ交流の機会を持つことは良いことだ。世界の各国がこれだけの規模で交流して、直接に触れあうことは他にないだろう。平和であればこそのスポーツの祭典である。

しかし、ナショナリズム昂揚の機会とすることは勘弁願いたい。「フォア・ザ・フラッグ」これほど嫌な言葉はない。国の代表が競うのではない。個人が争うのだ。星条旗も、五星紅旗も、「日の丸・君が代」も、いい加減に卒業したらどうだ。ナチスのオリンピック利用をもっと真剣に反省すべきではないか。


2004年08月18日（水）
私の経済制裁　　

私がひそかに実行している経済制裁について、お知らせしよう。
まずは、制裁対象を明確にしておかねばならない。何よりも皇室。次いで、「日の丸・君が代」。そして右翼。さらに石原慎太郎。最後に、ブッシュのアメリカである。

皇室御用達という商品は一切買わない。「皇族がお泊まりの」という惹句の宿には泊まってやらない。箔をつけるために「何とかの宮ご臨席」という集会やパーティには絶対に出ない。歌会始にも応募してやらない。勲章ももらわない。
どうせ高くて手が届かない、お呼びがかからない。それはそうなのだが、志は経済制裁である。

日の丸タクシーには乗らない。日の丸キャラメルは買わない。君が代まんじゅうは食べない。君が代蘭も飾らない。

産経新聞と扶桑社の本は絶対に買わない。以前、住宅関係の本を買ったところ、あとで扶桑社のものと気がついてほぞを噛んだことがある。ゾッキ本ではあったが、トラウマとなった。以来、気をつけている。

石原慎太郎が知事である限り、都営の交通機関は利用しない。もっとも、この実行はかなりきつい。ときどき、原則を破らざるを得ない。

それから、アメリカである。ブッシュが大統領である限り、アメリカには行かない。アメリカ産の牛肉は食べない。コカコーラも、マグドナルドも、ケンタッキーフライドチキンも、アップル・パソコンも買わない。キャディラックもクライスラーも、アメ車はごめんだ。ハリウッドの映画は見ない。

相手は大きくて強い。私の制裁の効果はまことにささやかである。しかし、斧をもつ蟷螂にも、志はあるのだ。実効性についての頼みは、かくれた同志が増えることだけである。


2004年08月19日（木）
「英雄」・シュタウフェンベルク　

１９４４年７月２０日午後０時４２分、ラシュテンブルグの総統大本営会議室で、ヒトラーを囲んだ作戦会議中に、カバンに仕掛けられた時限爆弾が爆発した。ヒトラーの右側２メートルの位置。空軍総参謀長コルテン将軍ら４人が即死し二人が重傷を負った。だが、コルテンの左隣に位置していたヒトラーは奇跡的に助かった。髪が焦げ、鼓膜をやられ、右手が麻痺、右足がヤケドを負った程度。死者の一人が爆発の寸前に邪魔なカバンをテーブルの下に押しやった。そのため、重い木製のテーブルの脚板がヒトラーを死角の位置にして守ったのだという。

この暗殺計画はワルキューレ作戦と名付けられた大規模クーデターの一部で、爆弾を仕掛けたのが伯爵シュタウフェンベルク。３６歳の若き陸軍大佐であった。暗殺計画失敗のあと、過酷な報復が行われ、シュタウフェンベルクは銃撃で重傷を負って逮捕され、直ちに銃殺される。死の直前に、意識を取りもどし「ドイツ万歳」と叫んだと言われている。

裏面史でしかなかった、この暗殺計画にいまドイツで意識的に光が当てられている。今年の７月２０日には大がかりに６０周年の記念行事が行われた。いまや、ドイツの子どもたちの間でシュタウフェンベルクの名を知らない者はないそうだ。表向きは、「この暗殺が成功していれば戦争終結は１０か月早まった。その間の膨大な犠牲を回避することができたはず」という語られ方だが、明らかに、「ナチスのドイツだけではない。あのころに、もう一つの真正のドイツがあったのだ」というキャンペーンだという。

そんなことを教えてくれたのは、水島朝穂教授。「法と民主主義」９月号掲載予定のインタビューでのこと。なにしろ、北海道と、広島と、沖縄と、韓国と、ドイツをいずれも「地元」にしているのだから情報料が豊富なのだ。教授によれば、ドイツは「もうナチスの負の遺産を引きずったドイツとは言わせない」との自信をもっている。それは、自らの加害行為に向き合う真摯さによるものだけではなく、したたかな計算や演出によるものでもある。両者共に持ち合わせない日本とは大違いなのだ。シュタウフェンベルクに脚光を当てるのも、その一環。シュタウフェンベルクは、出自といい、思想といい、戦闘で片腕をなくした戦歴といい、無数にあった反ヒトラー闘争を代表させるのに、恰好の存在。その点、安重根もよく似ている。

「暗殺者」「テロリスト」ではあっても、シュタウフェンベルクも安重根も、私は無条件に支持していた。標的は、悪逆非道のナチスであり、日帝である。その限定された状況においては暴力の行使も、やむを得ざるギリギリの抵抗の手段として当然に正当化される。けっして、無辜の民衆を巻き込む行動はとっていない。私に勇気さえあれば、同じことをやったろう、とも。

しかし、今その気持ちがほんのすこし揺らいでいる。「憲法９条の思想」との関係においてである。いつか、整理をしてみようと思う。


2004年08月20日（金）
渡辺治・改憲阻止運動を語る　

本日は、自由法曹団「改憲阻止討論集会」に参加。渡辺治教授のレクチャーを聞くための熱海行きである。この討論会、忙しい活動家を集めて２泊３日で行われる。討論以外のスケジュールはない。テーマは次のとおり。
１　国民意識をどう見るか
２　護憲の論理とそれを担う勢力
３　改憲をめぐるメディアの評価と展望
４　改憲要因とその性格
５　アジアから見た９条改憲の意味
６　各地の実践報告
７　運動の基本戦略
８　団の役割と課題
９　体制
本日は、１〜３の討論で、渡辺教授の出席は本日のみ。私も今日だけの参加。以下は、渡辺発言のホンのさわり。

「国民意識」は、国民的な体験から生まれた。しかし、それは自然発生的に形成されたものではない。平和や民主主義の前進をめざす運動の働きかけと、保守勢力の世論操作との拮抗の中で、国民的な体験が再生産されたもの。だから、両方向に変わりうるものである。

戦後、とりわけ５５年以後に形成された「国民意識」の内容は、理念としての整合性を持つものではなく、捻れをもっている。「安保容認・自衛隊容認・海外派兵反対・憲法９条擁護」というもので、「小国主義」と言ってよい。

この「小国主義」意識が、変質しつつある。まず、グローバル化の中での国際貢献論の台頭、次いで近年の北朝鮮脅威論による。かつて冷戦の時代には国民に入らなかったソ連脅威論、中国脅威論だが、北朝鮮脅威論は国民意識に食い込んでいる。

しかし、まだ「小国主義」国民意識は、依拠すべき幅の広い層の意識として健在であり、この部分をどう味方につけるかが、国民投票に向けての鍵となる。

支配層の意図の基軸は二つ。一つは、新自由主義的構造改革。もう一つが軍事大国化。本来、この両者を結合して反対する運動が目標とされるべきだが、構造改革に親和的でしかも小国主義意識の色濃い都市上層市民層が存在する。この層を改憲反対派に組織する意識的努力が必要である。

かつては、社・共、総評、知識人という護憲勢力があった。いま、昔の勢いはない。とりわけ知識人は、「社会主義崩壊」とともに、現状批判の武器とオールタナティブを失って発言しなくなった。その点、弁護士は現実の矛盾と向き合うだけに挫折などしていられない。構造改革がもたらす国民の不幸と対峙する知識人としてその役割は重要。

この夏、先に水島教授の熱弁を聞き、今日さらに渡辺治教授のレクチャーに触れた。満腹感があるが、消化不良の嫌いもある。記事になったら、よく反芻しなければならない。


2004年08月21日（土）
医療訴訟の困難　　

小泉首相のロング・バケーションが話題となっている。１１日から２３日まで、連続１３日間の豪華版。日本中の労使への範を垂れたものなら歓迎だが、我が身一人の夏休みのようだ。米軍機事故をめぐる陳情で上京した稲葉沖縄県知事も、昼寝の邪魔はできなかった。首相が誰でも、何をやってもやらなくても、日本はまわっていくということなのだ。

零細企業である当方には、そんな贅沢は許されない。毎年、ノン・バケーションである。一昨日は仙台、昨日は熱海、今日は名古屋。東奔西走とは言わない。暑い中の右往左往である。

本日名古屋に医師を訪ねてお話を伺う。ほぼ、一日がかりである。
専門性高い分野で、ようやくに巡り会った専門医。こちらの設問に、たいへん親切に的確な回答をいただいた。が、「自分の名前を外には出さないでいただきたい」という姿勢は硬く、鑑定意見書をお願いすることなどは到底できない。それでも、丁寧に医学的な基礎知識と臨床の常識を教示いただき、たいへん有益でありがたかった。時間を費やして名古屋まで出てきた甲斐があった。
と言っても、これで、勝訴を確信できるわけではない。

むしろ、誠実で有能なその医師から、次のように聞かされる。
「この事件では、担当の医師が、患者のためを思い、よかれと思ってやっていることは、間違いないんですがね」「これでも、医師は責任をとらなければならないんでしょうか」「これが、訴訟になるんでしょうか」「実は、関東方面の医師が、最近難しい手術をやりたがらない。失敗したときのリスクを恐れて、人に回すんですね」「医療裁判の影響なんでしょうね。日本の医療のために、けっしてよいことにはなっていませんね」

今日は、その問題に深入りすることはできなかった。この医師の指摘する面が、ないとは言えないのかも知れない。しかし、医療過誤訴訟で患者側が過剰に優遇されている現実はない。裁判を提起するにも、訴訟を維持するにも、そして勝訴するために、過酷なハードルをいくつも越さなければならない。

教科書だけを読むだけの知識でまかなえる医療事件はない。そんなものは訴訟にはならないのだ。医師の意見が決定的に重要だが、なかなか専門医に会えない。今日は、そのために名古屋まで。それでも、よい医師と会えたことを幸運と思わねばならない。鑑定意見書が欲しいがなかなか手に入らない。そう言えば、患者が弁護士にめぐり会うのだってたいへんなんだ。

実は、大きな宿命的ハンディを背負っての患者からの提訴なのだ。医療過誤訴訟が患者のための医療改善に役立っているメリットが、医療萎縮のデメリットを遙かに凌駕していると思うのだが。


2004年08月22日（日）
川柳二題　

本日の朝日川柳・秀逸句は、
　　五輪なら皆起立する旗と歌（藤沢市　橋本泰明）
これに選者（大伴閑人）が、「強制されては」とだけ、評をつけている。

学校現場で強制されては、皆起立とはいかない。強制のないオリンピックでは、日本人応援団は「日の丸・君が代」を受け容れている。強制が逆効果となって反発を強めているではないか、と強制を戒める警句になっている。

感想が色々ある。まず、「日の丸・君が代」強制問題の話題性の拡がりである。実に多くの場面に登場する。今の世の危うさを象徴する事件として引用されることが多い。抵抗の運動があればこそである。

「日の丸・君が代」の何が問題か。確かに、強制が基底にある重要問題で、もっとも多くの人々の問題意識に共有されていることはそのとおりである。しかし、強制だけと割り切られると、いささか納得しかねる。オリンピックでの「自発的な」日の丸・君が代讃歌を、素朴に肯定されては違和感が募る。

歴史観、教育観、宗教性、国民主権との関係、国家観、同調性強要拒否等々の、一緒くたでは括れない、いろんな理由での個別具体的な拒否理由がある。そのことへの理解が欲しい。その個別の理由を尊重する寛容な精神の拡がりが欲しい。この世は、オリンピックでのメダルの色や数に興奮する人ばかりではない。御輿を担いで群れるのが好きな人ばかりではない。非国民・異端と、少数派を切り捨てることのない世の中であって欲しい。

話題は変わって、一昨日の毎日・仲畑流万能川柳の一句。
　　神様はただ見てるだけイラク戦（奈良　朱雀門）
心に突き刺さる。小文字の神々も、大文字の神も、いったいどこにいるのだ。何をしているのだ。いったいあなたは、本当に存在するのか。どうして、ブッシュを、ラムズフェルドを罰しないのか。罪のない、か弱い人々の頭上で爆弾が炸裂するのを、なぜ黙って見逃し、見殺しにするのか。神の沈黙は罪でないのか。

そうか、神だけではない。私たちもだ。私もだ。「ただ見ているだけ」ではならない。これこそ２００４年の秀逸句。


2004年08月23日（月）
野口みずきの「金」

マーフィーの法則というものがある。こうなって欲しくないと思うことは現実化する。朝刊を見て驚いた。最悪の事態。野口みずき（グローバリー）独走「金」だという。ああ、なんと言うこと。

野口みずきに好悪の感情はない。グローバリーにはある。８月５日の本欄に次のとおり書いた。
「夕刊に、野口みずきというオリンピック選手（女子マラソン）の「高地合宿順調」という記事が出ていた。名古屋の先物取引会社グローバリーの所属である。グローバリーは、元東海交易と言った。強引な勧誘で顧客とのトラブルの多い業者として知られる。オリンピック選手を出したことの宣伝効果は相当なものであろう。普通の会社のように思われてしまう。これで、被害が拡がらなければよいのだが、とハラハラしている」

これが、現実となりかねない。グローバリーのホームページを覗いてみた。日の丸とギリシャ国旗を掲げて、「口座開設キャンペーン」中だ。「野口みずきに金メダル」「皆さんの応援ありがとうございました」との文字が躍る。

仲間内で話し合う。
「面白くないね」「困りましたね」「先物業者、市民権を得るの印象ですかね」「グローバリーの『金』投資なんてキャンペーンをしかねない」「かならず勝ちます、野口みずきのように。なんてね」「グローバりーは、悪徳業者でしょう」「悪徳というには躊躇がある。問題業者くらいでは」「でも、明らかにやり方が汚い」「ターゲットが若年層だよね」「この層は、あまり損害賠償とか訴訟とか騒がない。そこに目をつけているんでしょ」「若年層だから、たちまち資金が底を突く。するとサラ金紹介だ」「グローバリーに限らないのでは」「いや、この点グローバリーは際だっている」「グローバリー被害対策弁護団が結成されている。これは、他にないね」「ともかく、警告しないとね」「被害者が、グローバリーだけでなく、野口みずきも訴える事態となりかねないね」「あ、既にそんな動きあることは聞いていますよ」

私にとってまったく他人事だったオリンピックが、がぜん身近なものとなってきた。


2004年08月24日（火）
オトゴンヤバルの笑顔　

オリンピック女子マラソンの最下位はモンゴルのオトンゴンバヤル。６６位の３時間４８分４２秒。

他の選手は誰一人いなくなり、パナシナイコ競技場は彼女一人を待ち受けた。第３コーナーを過ぎるころに拍手が手拍子になり、ゴールでは大歓声だっという。ここまで残った観客が、モンゴルの女性に惜しみない声援を送った。「観客は拍手を送り、それぞれの国旗を振った」と報道されている。彼女こそ、オリンピック精神を象徴する「アテネの星」。彼女に惜しみない拍手を送った観客とともにである。

時事が配信した写真がよい。いかにも疲れ切って白人と有色の男性スタッフに、左右から支えられている。この二人の表情が優しい。疲れてはいるが、晴れやかな表情で手を振る２２歳。容貌は、日本人とまったく変わらない。

人々の優しさや思いやりが、国境という人為を超えて交流した瞬間。それが、この写真に込められている。勝者が与える感動に数段まさるではないか。


2004年08月25日（水）
沢藤礼次郎さんを悼む　

今日と明日は、予防訴訟弁護団の合宿である。この日記は、早朝に書いている。

ローカルな話題だが、２３日沢藤礼次郎さんが亡くなった。享年７５と報じられている。父と同郷・黒沢尻の出身で、旧制黒沢尻中学（現、黒沢尻北高）の同窓でもあった。「ご親戚でしょう」と言われることが多かったが、私の知る限りでは違う。弟さんとは親交があったが、礼次郎さん本人とは集会で顔を合わせる程度。いかにも先生という雰囲気の、知的で穏やかな印象だつた。

礼次郎さんは、県立高校の教員。岩手県高等学校教職員組合（高教組）委員長から社会党県本部委員長となった人。７５年に党公認で県議に初当選。８６年７月の衆院選に旧岩手２区から出馬、初当選し３期務めた。

社民党県連合の阿部静子代表は「その生涯を通じて、憲法理念に基づく政治のありようを追求し続けた」という談話を発表している。そのとおりの生涯であったろう。国会では護憲・平和問題そして障害者福祉に積極的に携わった。

「３分の１の壁」のスクラムを作っていたお一人だ。心ならずも国会を去ったのは９６年の総選挙で落選してのこと。初めて小選挙区が導入されたその選挙においてである。

礼次郎さんだけではない。多くの良心が、憲法を守り育ててきた。護憲勢力が全国で力を持っていた時代を思い、改めて小選挙区制の罪の深さを思う。


2004年08月26日（木）
哀れ　白鴎高校付属中学生　　

予防訴訟弁護団の箱根合宿が終わった。「予防訴訟原告団」「被処分者の会」「被解雇者の会」の世話人と研究者の参加も得て、総勢５０人を超える研究会。延々１０時間の法律論・運動論。有意義ではあったが、いささかくたびれた。予防訴訟の方針はかなり固まってきた。本格的な主張と立証になりそうだ。

和気あいあいの進行の中で唯一の「波風」が、先行するピアノ伴奏拒否訴訟一・二審敗訴判決の評価。
「敗訴は本人や弁護団のせいではない。先駆的な訴訟提起の意義を評価すべきで、提訴や上訴の批判は誤り」「間違っているのは裁判所」「その間違った判決が利用され、我々の訴訟にのしかかっている重い現実がある」「冷静で正確な議論が必要。当該の原告や弁護団不在の場での議論は避けた方がよい」「両弁護団間の協力関係は次第にできつつある」「敗訴のリスクがあるから提訴を避けろ、という論理は我々も言われたこと。結局泣き寝入りを強いることになる」「ココロ訴訟やピアノ伴奏拒否訴訟などの先行訴訟を他人事としてきたことを反省し、共闘の必要を確認しなければならない」
　
山を下りてきたところで、白鴎高校付属中学校（来年創設）の歴史教科書に扶桑社本採用のニュース。採択を決定したのは都教委の次の面々。孫子の代までよく覚えておこう。
清水司・元早稲田大学総長
国分正明・元文部事務次官
米長邦雄・元将棋棋士
鳥海巌・元丸紅会長
横山洋吉・教育長
内館牧子・脚本家

言うまでもなく、扶桑社本は「歴史を歪曲」「戦争を美化」「女性蔑視」の悪評芬々の歴史教科書。都立白鴎高校は元府立一女。１００周年記念行事に皇后が参列するという、そんな学校。実は、うちのカミさんもこの学校の出。「９条の会」の三木睦子さんも同窓だという。今後、この学校の生徒は、「扶桑社の教科書で教えられた人」として刻印を押されることになる。

都教委は０１年、養護学校２校と１分教室向けに扶桑社本を採用。同教科書を使う公立校は現在、都立養護学校のほか、愛媛県立の中高一貫校３校と養護、ろう学校の一部だけ。私立を含めた採択率は０．０９７％だという。都教委の右翼体質が鮮明である。

こんな教育委員会に黙ってははおられない。８月３０日には、都庁包囲デモが行われる。
デモの詳細はこちらhttp://homepage3.nifty.com/yobousoshou/index.htm


2004年08月27日（金）
自民・民主の改憲案　　

本日は、日民協憲法委員会。自民党「論点整理案」、民主党「憲法調査会中間報告」の両改憲試案を比較しての検討会。

自民党案は、「わが国の歴史・伝統・文化・国柄・健全な愛国心を持り込むべきである」という代物。天皇条項も見直して天皇の祭祀を「公的行為」とする、政教分離の規定も見直して「わが国の歴史と伝統を踏まえたものにすべき」という。
驚くべきは、「両性平等の規定は、家族や共同体の価値を重視する観点から見直すべきである」と都教委ばりのジェンダーフリー攻撃。「非常事態における国民の協力義務」というのもある。

本丸の９条改正に関しては、「自衛のための戦力の保持を明確にすること」ははっきりしているが、その余は検討事項とされているにとどまる。「個別的・集団的自衛権の行使に関する事項」「国際協力（国際貢献）に関する事項」「集団的安全保障、地域的安全保障に関する事項」等々。

自民党案は分かり易い。ここまで保守派の本音を書いているのだから。もっとも、これは民主党を取り込む際に妥協材料となる「のりしろ」で、本音ではなかろうとの意見も。新しい権利などの、「撒き餌」になる部分は少ない。環境権も、むしろ環境保全の義務の色彩が強い。

分かりにくいのが民主党案。独りよがりの、新たらし言葉が多すぎる。分かるのは、立憲主義の放擲が見られること。この点では、自民案と同じ。
本来、憲法は、暴走しがちな権力への枷である。国民の人権や民主主義という価値を国家権力から擁護するためにこそ憲法がある。この近代憲法の大原則がないがしろにされているのだ。

民主党案は、「憲法９条の原則的立場は今後も引き継ぐ」と言いつつ、「国際協調主義に立った安全保障の枠組みの確立を」として、「武力の行使を伴う集団安全保障への参加」と、「専守防衛を明示した自衛権の行使」を認める立場を鮮明にする。憲法改正によって、「国連の決議によるものであれば、海外での武力行使を認めよう」という立場だが、現行の恒久平和主義の思想と相容れない。

いずれの改憲案も、確定したものではない。これからいかようにも、動かせる構え。国民の働きかけ次第なのだ。

話題となったのは、新自由主義的イデオロギーが、それぞれの改憲案にどれほど浸透しているのかという点。公共性の強調や、ナショナリズム過多の論調との整合性をどう見るか。また、この点については、財界の改憲論議への積極的割り込み姿勢にに関心を持たざるを得ない。
次回、９月２４日（金）５時半から、「改憲論議における新自由主義」との標題で検討会を続会することとした。問題提起は横田力教授にお願いする。


2004年08月28日（土）
少額医療事件のなやみ　

最近、医療過誤訴訟での相談が多い。少し前までは、医療過誤と言えば死亡事故か重篤な後遺障害事故だった。私の受任事件も、ほとんどが死亡事故である。しかし、最近立て続けに受けた相談が、いずれも重篤な事故ではない。いわゆる少額事件の範疇。さて、どう対処すべきか、いささか気が重い。

少額事件への対応は永遠の課題である。弁護士が市場原理ないしは経済法則で動くものと割り切ってしまえばことは簡単。弁護士に受任義務はないのだから、少額事件は断れば済む。弁護士経験３０年を超える私が「そんな小さな事件は、若い弁護士さんにご相談を」と言っても、おかしくはない。本音は、そうしたいところだが、後ろめたさがつきまとう。

医療過誤事件は恐ろしく時間がかかる。労力がかかる。それでいて、勝訴の確率はけっして高くない。せめてある程度の着手金を支払ってもらえるか、勝訴の際の相当な報酬なければペイしない。で、少額の医療事件となると困難さは一入である。

最近相談を受ける医療過誤事件は、患者の権利意識の向上と結びついている。かつては、よほどのことでない限り法律事務所の門をたたくことのなかった被害者が、
医師から不当な扱いを受けたとして弁護士を訪ねて相談する。なかには具体的な損害とはまったく結びつかない事件もある。ごくごく少額の事件は少なくない。これは、一面望ましいことである。小さな被害と雖も、泣き寝入りをしない姿勢なのだから。しかし、確実にペイしない事件にどう対応するか。相談を受けた弁護士としては悩ましい。

とりわけ、私の時間の使い方は特殊なのかも知れないが、無報酬の活動に割かざるを得ない時間が圧倒的だ。本業の稼働時間において、割りの悪い事件ばかりはやっておれない。事件よ私を避けて通り過ぎてくれ、と願うことが多い。しかし、それでは問題の解決にならない。

本人の交渉に任せる（これでうまく行かないから相談に来るのだ）。本人訴訟を考える（ウーン、難しそう）。司法書士さんにお願いする（ウーン、いやがるだろうな）。本人の調停申し立てを考える（これはできそう。でも不調の場合はどうする）。医師会への申立（これでうまく行くようなら最初から問題にならない）。
ウーン、どうも決め手に欠く。

事件の内容によっては、マスコミへの取材依頼が有効かも知れない。被害者の会の交渉の方がプレッシャーになるかも知れない。有効な解決の道具は法律だけではない。などと言いつつ、なやみは尽きない。

考えてみれば、医療過誤に限らない。経済的にペイしない事件への取り組みは、実に悩ましい。弁護士はパンのみにて生くるものにあらず。されど、霞のみににては生くるあたわず。


2004年08月29日（日）
「よい肉よ・喰いに行く・よく煮いよ」

またまた合宿。今日と明日とは、日民協執行部の合宿。今夏３度目になる熱海行。折悪しく台風接近、前途の多難を思わせる。
今日も、早朝に日記を書いている。

靖国訴訟弁護団のメーリングリストを開いたら、大山勇一さんからの年末の合宿提案。
常なら無視してしまうのだが、呼びかけの最後の文章が次のとおり。

合宿では，「すき焼き」が食べたいという個人的な希望から，この合宿を
「きて・すきやき・すてき」と名づけようと思いますが，いかがでしょうか？

彼の得意とする回文での呼びかけ。これはよくできている。ついつい、返事をしてしまった。

大山さんの「きて・すきやき・すてき」企画を！　に賛同します。
「よい肉よ・喰いに行く・よく煮いよ」のノリで。

「良い仲居いない・行かないよ」の方は没。こちらは少し品位に欠ける。
完成度が低いのが気になるが、推敲の時間はない。

今日は、合宿に高田健さんをお招きして、憲法運動についての議論を重ねる予定。


2004年08月30日（月）
都教委包囲デモ

熱海の日民協執行部合宿では、高田健さんの話をじっくり聞いた。平和運動・改憲阻止運動の渦の中心にいる人。

高田さんについての私の紹介は、「現代の坂本龍馬。龍馬は薩長同盟という統一戦線を作り上げて歴史を動かした。今は龍馬の時代より遙かに複雑。高田さんは、政党・文化人・労組・市民団体の統一戦線を作る実践を重ねている。それだけでなく、旧来の運動と、極めて新しい若者の運動とのまとめ役。歴史を動かすかも知れない」

思いがけなくこれにクレームが付いた。「私は、維新の民衆史研究会をつくっています。そこの研究では、薩長同盟の企画や実践をしたのは龍馬ではなく、中岡慎太郎の方なのです」とのこと。龍馬のごとしは、必ずしも褒め言葉にはならないのだ。

高田さんは、永く平和運動に携わってきたが、ずっと「一番若い人」だったという。平和運動が戦争体験者の運動として老齢化し、若者の参加が少ないことを嘆いていたが、状況は変わった。０３年冒頭から、多くの若者がイラク反戦の運動に、おずおずと参加を始めた。この若者たちを大切にしたい。この若者たちの感性や活動スタイルを尊重したい。既成観念で、この若者たちを運動から排除するような愚を避けたい。相互の信頼関係を大切にしたいと言われる。

市民運動や統一した運動の難しさは、私も知らないではない。多くの人々、多くの団体。多くの年齢層の人々を結集する労苦は想像を絶する。現代の中岡慎太郎には、ご苦労様というしかない。

熱海から帰京して都教委包囲デモに。本日の都教委「包囲」は、象徴的な意味ではなく、人間の鎖で都庁の第２庁舎を取り囲もうという企画。当然に、都の警備とトラブルは避けがたい。そんなこととは知らずに、現場に呼ばれた弁護士が私一人。

現場で、都庁の警備担当と３０分のやり合い。時間稼ぎに悪戦苦闘。でも、当然のことながらこの人たちも血が通っている生身の人。こちらが敵視した姿勢を見せなければ、それなりの対応であった。とは言うものの、声が枯れた。

本日のデモ参加者は、優に１０００人は超えている。都教委を糾弾する運動は、だんだんと元気の出るものになりつつある。


2004年08月31日（火）
夏が終わる

明け方に木々を揺する強風。大型台風が列島を縦断した。折しも、８月の末日である。これで季節が変わる。行く夏は寂しい。
早朝の仙台は夏の終わりの感傷。ところが、帰京してぶり返した暑さに驚いた。東京は、感傷を許さないところ。

忙しい。たまった仕事を思い出せば絶望的となる。昨日までが熱海、今日は仙台、明日は高崎、明後日が盛岡…。訴状・準備書面・控訴理由書、そして尋問準備…。思い出さないようにしなくてはならない。

本日の毎日・「万柳」に
　スポーツ用国歌あってもいいんじゃない
昨日の読売・「時事川柳」は
　お茶の間のナショナリズムに乾杯し
ビミョーな、毎日と読売の落差。この読売句のセンスが、私のもっとも気に入らないところ。

夕刻は、司法試験塾での講演。渋谷の伊藤塾が続けている「明日の法律家」という連続講演企画に招かれた。演題は「弁護士の武器としての憲法」。

無名の私の、こんな演題で、受験生に関心があるのかと訝しんだが、けっこう人が集まった。弁護士の生き方、消費者事件、憲法訴訟、司法改革問題等々について、熱心に耳を傾けてくれた。

修習生の青法協会員が少なくなっている。司法試験合格時にして既に偏見が植えつけられている。司法試験受験生に、憲法運動や、護憲派弁護士の話を聞いてもらえるのは願ったりのチャンス。どれだけ、琴線に触れたかは未知数だが、いずれどこかで思い出してもらえるのではないだろうか。


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