日民協事務局通信KAZE 2002年11月

 デマに躍らされるアホウはいない

(澤藤統一郎・弁護士)

■この世には、ときに信じがたいことが起こる。公明党が徳島県で日民協を誹謗するビラを撒いた。「エライコッチャ、エライコッチャ」と言うほどのことでもないが、この社会の民主主義の未熟度を象徴する出来事としてご報告する。
■発端は、同県の円藤前知事が八〇〇万円の収賄で起訴されたことに始まる。この公判で、複数の県職員の関与が指摘された。これを受けて、大田正現知事が第三者による「汚職問題調査団」の設置構想を表明し、予算一〇〇〇万円を付して県議会に提案した。ところが、多数野党の自民・公明などが、この提案を潰してしまった。正確には、予算を「〇円」とする修正案を可決させたのだという。これが一〇月二四日のこと。
 その理由として、調査団に県外の弁護士二名が含まれていることが挙げられている。いずれも、市民オンブズマン活動などで名を知られた方である。
■なんともあきれた話だが、ここまでは他人事である。ところが、こともあろうに公明党が「県外弁護士拒否の理由」として日民協を持ち出して、ビラを撒いたのである。
 特定の団体に「○○党系」のレッテルを貼る。その団体に加盟していることで攻撃をする。まことに薄汚い古来の手口である。
 この事実を協会事務局が知らされたのが、一一月一二日。翌日に理事長名で発信した、徳島県公明党議員団長宛の「抗議と謝罪要求」の抜粋を紹介する。
■「貴殿が発行責任者として作成され、配布された『マルシェ・VOL3』との標題をもつチラシに、『共産党系の日本民主法律家協会』との文言が記載されています。また、その前後の文脈は、当協会の会員が加わった汚職調査団には『公平・中立・客観性に問題があります』と読める内容となっています」
 「日本民主法律家協会は、平和と民主主義を求める法律家団体です。
 一九六一年一〇月の結成以来四〇年、一貫して憲法を擁護し、平和と民主主義と人権、そして司法の民主化を追求する運動に邁進してまいりました。
 当協会は、恐らくは最も幅の広い法律家の任意団体です。幅の広さは、まず会員の思想的な多様性に表れています。平和と民主主義と人権を擁護する意思を有する法律家であれば、どなたも入会可能です。現実に会員の思想信条はまことに多様であり、支持政党も多岐に分かれています」
 「当協会の目指すところは、法律家運動としての平和と民主主義と人権という理念の実現です。特定の政治思想や政治団体の運動とは一線を画すもので、これまで特定の政党と近しいと言われたことはありません」「当協会は、『平和・民主主義・人権寄り』ではあっても、どの『政党寄り』でもありません」
 「個人にあっても、また団体にあっても、信仰や政党支持によって色分けをするようなことがあってはなりません。ましてや、なんの根拠もなく、党利党略で団体にレッテル貼りをすることは、到底常識を弁えた者のすることではありません。
 貴党が、当協会について見当違いも甚だしい事実誤認を白昼チラシにして撒いたことには驚くほかはありません」「当協会と会員を誹謗したことについて厳重に抗議するとともに、貴党・貴殿の責任を明確にして謝罪し、しかるべく謝罪の事実と訂正内容とを広告する手段を講じられるよう要請いたします」「速やかな、公党としての責任あるご回答をお待ち申しあげます」
■三〇年前にも似た話があった。このときは、青年法律家協会が政治団体のレッテルを貼られ、それに加入する裁判官が攻撃を受けた。
 あれから三〇年後の今日、与党の一角にある政党のこのようなデマゴギーの政治手法が、まだ多少なりとも効果をもつものであろうか。圧倒的な市民の良識が、このようなダーティーな手段を逆効果とすることを信じたい。


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