日民協事務局通信KAZE 2010年6月

 トレンディな安保反対に「知」の力を。安保50年シンポにぜひ


 今年は日米安保条約の成立から50年という節目の年である。
 その今年、「国外。最低でも県外」の公約の下、普天間基地の移設問題で鳩山新政権が大揺れに揺れ、これまでにないほど安保条約の存在意義が根源的に問われる事態となったことは、とても興味深い。本来、特別の意味はないはずの「50」という数字に、神様が宿ったのではないかとさえ思われる。
 そして「安保50年」を記念して、日民協、日本科学者会議、民科法律部会、日本ジャーナリスト会議等々の諸団体が共催して、明治大学のリバティタワーで六月二六日(土)にシンポジウム(軍事同盟のない世界へ)を開く。そこでの歴史学、経済学、憲法学の研究者からの発言は、非常に注目される。
 昨年秋、日民協執行部の新参者となった私は、そのシンポの司会役を仰せつかってしまった。メインの司会は小沢隆一先生なので何の心配も要らないが、少しはモノを知らなくてはと、ここ数ヶ月注意して新聞や本を読み、自分なりに頭を整理しようとしてきた。
 その結果、しみじみ思うのは、安保問題はきわめてわかりにくいということだ。誰かが、論点をわかりにくくする仕掛けを、幾重にも仕掛けているように思えてならない。
 例えば、普天間基地問題について言えば、二〇〇六年の日米合意で海兵隊はグアムに移転することになっており、昨年一一月にもそれを前提とするグアムの環境アセスメントをアメリカは発表している。だとすれば、海兵隊の基地である普天間飛行場は、アメリカの軍事戦略にとって不可欠ではないはずだ。ところが、そのことが何故かさっぱり報道されない。宜野湾市の伊波市長などが声を枯らして訴えても、大新聞は黙殺し、普天間の移設先が決まらなければ「日米関係に重大な影響が」とか「抑止力が」などと書き、鳩山首相に対しては、「やり方が下手だ」と言わんばかりの批判だけをし続けている。
 それでは「日米関係に重大な影響」とは具体的にどんな影響なのか。日本国民の誰がどのように困るのか。抑止力というけれど、安保は本当に「日本を守る」ことを想定しているのか。海兵隊で中国や北朝鮮を「抑止」できるのか。「脅威」なんかあるのか。誰かが必死になって米軍を日本に引き留めているのではないか。それは、どこの誰なのだろう。
 問題は、沖縄の負担のみではない。日本国民全体にとって安保条約と米軍基地が本当に必要なのかどうかである。その議論に勝てなければ、沖縄の人々の痛切な思いも「住民エゴ」とみなされてしまう危険がある。そんなことがあってはならない。
 安保50年のシンポが、私たちに「知」の力を与えてくれることを期待する。セピア色の安保反対ではなく、トレンディな安保反対の出発点になるようなシンポでありたい。

(弁護士 米倉洋子)


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