日民協事務局通信KAZE 2014年10月号

 壊憲政策と日弁連集会


 日民協では、森英樹新理事長のもと、夏季合宿を行った。テーマは、安倍政権の改憲・壊憲政策の全体像、である。安倍政権の改憲・壊憲政策について「領域」毎のレポートを執行部のメンバーで分担して報告し議論し、その中で、安倍政権の特質と歴史的岐路の意味を理解する目的である。憲法九条・恒久平和主義、憲法二一条・民主主義、憲法二五条・社会保障、憲法二七条・労働法制、刑事司法「改革」、憲法前文・国のあり方(戦後レジームの脱却、歴史修正主義)と多岐にわたる領域の改憲・壊憲政策が報告され、ハードな合宿となった。
 安倍政権は、すべての領域にわたり、戦後、憲法に基づき構築された制度を壊そうとしている。しかも、その壊し方は、すべての領域において、安倍首相個人の取り巻きによる「有識者懇談会」なるものをつくり、そこで具体化するという独裁的手法をとっている。そこには、壊される側の声は反映されない。安倍政権は、憲法が最大の価値をおく個人の尊厳の上に国家をおき、その国家を一部権力者によって動かし、この国のあり方を根底からつくりかえようとしている。
 私は、一年一〇カ月前の一二月号、つまり、総選挙直前にKAZEの原稿を担当し、「国民にとって今度の選挙ほど『歴史的』な選挙はないだろう。憲法の基本原理である『人権の尊重』、『民主主義』、『平和主義』いずれをとっても重大な事態に陥る危険を持っている。」と書いた。あれからわずか二年足らずの間に、今、重大な事態が現実化しようとしている。
 来年は戦後七〇年。アジアと我が国に大きな惨禍をもたらしたアジア太平洋戦争、その反省のもとに平和・人権・民主の国家体制を積み重ねてきた戦後、そして未来の節目である。どうしたら、将来の世代のために、壊憲と戦争国家への道筋を壊し、平和、人権、民主を開花させる展望を切り開けるだろうか。
 私は、シンプルな闘いが鍵だと思っている。
 一〇月八日、日弁連が主催し、戦争をさせない1000人委員会、解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会、立憲デモクラシーの会が協力して、「閣議決定撤回!憲法違反の集団的自衛権行使に反対する10・8日比谷野音大集会&パレード」が行われた。会場を満杯にする三〇〇〇人が集まり、沖縄弁護士会など多くの単位会の旗がひらめき、共同している法律家団体と日民協の旗も会場に舞い、パレードをした。日弁連会長は、弁護士全員が加盟する日弁連がこのような集会を主催したことについて、弁護士法一条が弁護士の使命として基本的人権の擁護を規定していることを挙げ、人権が平和の中でしか守られないこと、戦争が最大の人権侵害であることに言及して集団的自衛権行使に反対すると述べた。
 安倍政権の壊憲政策は、国民大多数の人権を壊す。壊される人々が立ち上がり、思想信条の違いを超えて共同すること、そのシンプルな闘いこそが安倍の壊憲政策を包囲し、立法府と司法府を動かし、暴走を止めることができると思う。日民協は、他の法律家団体とともに、壊される側の多くの人たちと連帯する場を大切にし、学び行動していきたい。

(事務局長 南 典男)


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