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 法と民主主義2015年7・8・9月号【500・501号】(目次と記事)


法と民主主義2015年7・8・9月号表紙
「法と民主主義」創刊500号記念●憲法の危機に抗しつづけて
500号記念特集の企画にあたって………編集委員会・澤藤統一郎

第一部■日本国憲法をめぐるたたかいと私たちの課題

◆日民協の「原点」と「現点」──「法と民主主義」500号に寄せて………森 英樹
◆日本国憲法をめぐる攻防の70年と現在………渡辺 治
◆戦後70年 憲法裁判と私の歩み──次世代へのメッセージ………新井 章
第二部■平和・民主主義・人権闘争のバトンを引き継いで

◆平和的生存権を導きとして
■砂川・恵庭・長沼・百里裁判の教訓………内藤 功
□今こそ、主体的に自覚的に行使しよう 平和的生存権………川口 創

◆核のない平和な世界を
■被爆者の核兵器廃絶の願いと原爆症認定集団訴訟──被爆者の声に耳を傾けて
 ………宮原哲朗
□核廃絶に向けての法律家としての取り組み………森 一恵

◆基地被害の根絶と基地撤去をもとめて
■横田基地公害訴訟の取り組みと課題………吉田健一
□基地撤去運動から平和構築の要、沖縄に!………加藤 裕

◆戦後70年・歴史認識を問う
■次の闘いを担う人々へ──中国人戦争被害者との和解を求めて20年………小野寺利孝
□補償から記憶へ──植村隆さんのたたかい………神原 元

◆国家の秘密に抗う言論の自由
■沖縄密約情報公開訴訟判決と日本の現在………梓澤和幸
□秘密保護法との闘い………海渡双葉

◆国家権力による監視に抗して
■断罪された警察の電話盗聴………緒方靖夫
□市民を監視する自衛隊情報保全隊との闘い………小野寺義象

◆言論・表現の自由と民主主義
■「小さな事件」の大きな狙いに抗して──有楽町ビラ配り事件から………坂本 修
□言論・表現の自由を守るたたかい………西田 穣

◆公務員にも市民的権利を
■猿払事件 その歴史的意味………石崎和彦
□国家公務員の政治的自由を守る闘い──国公法弾圧事件………加藤健次

◆教育の自由をもとめて
■旭川学テ事件のこと………尾山 宏
□「日の丸・君が代」の強制に抗して─東京「君が代」裁判を闘って………平松真二郎

◆教育権は誰のもの
■家永教科書裁判の現代的意義………加藤文也
□もう一度、教育の中心に子どもを取り戻すために………小林善亮

◆子どものしあわせと人権に寄り添って
■自由、正義、平和の基礎をなす「子どもの人権」………津田玄児
□今こそ、子どもたちの本気の声を、本気で聴く実践を………佐藤香代

◆人間らしく、健康で文化的に生きるために
■「人間裁判」承継50年目の驚きと決意………朝日健二
□生存権裁判 朝日訴訟のバトンを引き継ぎ、憲法25条を守る………渕上 隆

◆大企業の差別・解雇を許さない
■国鉄闘争を振り返って──たたかいのあらましとたたかいを支えたもの………宮里邦雄
□誰のための安全、何のための解雇 日本航空整理解雇事件………堀 浩介

◆労働者の命・健康・尊厳を守る
■「謝れ、償え、なくせじん肺」──長崎北松じん肺訴訟からアスベスト訴訟へ………山下登司夫
□最高裁で国に勝訴──大阪・泉南アスベスト国賠訴訟で勝ち得たもの………奥田愼吾

◆働き方(=働かされ方)の変革を求めて
■「過労死110番」の27年………岡村親宜
□ブラック企業追及の闘い………佐々木 亮

◆職場に真の男女平等を
■女性差別撤廃条約批准・均等法制定から30年
 ──女性の「働く権利」の現状と課題………今野久子
□マタハラ問題から日本全体の真の「働き方改革」を目指して… ………圷 由美子

◆公害訴訟から原発訴訟へ
■公害被害者の人権の確立をめざして………豊田 誠
□原発被害者救済運動の「現点」………米倉 勉

◆薬害根絶への長い道のりを歩いて
■薬害対策──医薬品の安全性を求めて50年、今も続く薬害の連鎖………鈴木利廣
□薬害事件のこれから………水口真寿美

◆消費者の権利を追い求めて
■私の原点、クレサラ問題………宇都宮健児
□高金利被害の撲滅を求めて──金で人が死なない社会を………及川智志

◆「納税者の権利」の確立をめざして
■納税者の権利を守り進めるたたかい………鶴見祐策
□税務訴訟のこれからの展望………佐伯和雅

◆司法の独立と民主化を求めて
■『検証・司法の危機』とそれ以降………鷲野忠雄
□法曹の役割を歪める「給費制廃止」………緒方 蘭

◆冤罪事件の根絶に取り組む
■日弁連再審支援第1号──徳島事件の顛末………秋山賢三
□冤罪をなくしたい──法律家としての私の原点………戸舘圭之

◆民主主義をとりもどせ!
■「政治改革」がもたらしたもの………大久保賢一
□小選挙区選挙・政党助成と対米従属・財界政治………上脇博之

第三部■年表・資料・連帯のメッセージ
  • 年表・日民協の歩み(2011.8〜2015.8)
  • 資料・法と民主主義(461号〜499号)総もくじ
  • 「法と民主主義」創刊500号・祝賀広告──連帯のメッセージ
  • KAZE・500号を生み出して、そしてこれから………佐藤むつみ

 
特集●創刊500号記念特集 憲法の危機に抗しつづけて

 ◆五〇〇号記念特集の企画にあたって
 創刊号から、ほぼ毎月一号ずつを積み重ねての五〇〇号到達である。この間半世紀余。編集に携わった者には、いささかの感慨を禁じ得ない。
 本誌は、この間半世紀余の法律家運動を紙面に反映させ続けてきた。積み重ねられた五〇〇号は、六〇年代以後の「平和と民主主義と人権」をめざした闘争の集大成である。それゆえ、本記念号は半世紀を振り返っての民主的諸運動についての、とりわけ法律家が何をなしてきたかについての総括という壮大な特集となっている。
 本誌の創刊号発行は、一九六二年一月。その前年六一年一〇月に結成された日本民主法律家協会の機関誌として、当時の誌名は組織名そのものの「日本民法協」であった。また、当時は隔月の発行であった。本誌が、単なる機関誌を脱皮したのが第四六号(一九七〇年四月号)以後のこと。誌名が改題されて、理念を冠した現題名となった。その新誌名第一号の巻頭には「『法と民主主義』創刊の辞」が掲載されている。以来年一〇回刊が定着して現在に至っている。今号は、通算しての五〇〇号となった。
 よく知られているとおり、日本民主法律家協会は、歴史的な六〇年安保闘争の昂揚の中から生まれた。安保改定に反対した壮大な国民運動の一翼を担った「安保改定阻止法律家会議」が協会の前身である。当時、戦争の記憶は多くの人々に鮮明で、新たな日米軍事同盟の締結が憲法九条の理念を否定して、再びの戦争の惨禍を日本にもたらす危惧が多くの人に共有された。日本国憲法の理念と日米安保条約の論理との矛盾は、そのまま保守と革新、平和勢力と戦争推進勢力との拮抗を意味するものと認識された。

 安保闘争が、平和と民主主義を求める統一戦線的国民運動であったことの反映として、日本民主法律家協会は多様な法律家運動の統一体となった。こうして発足した協会は、「独立と平和と民主主義を確立し、人権の擁護伸長をはかる」という目的のもと、運動団体であるとともに、運動に資する法的理論団体ともなった。そのことから、「法と民主主義」は、単なる機関誌であることを越えて、運動と法理論を結ぶ、他にない特徴を持つ定期刊行物となった。特に近年は、毎号特集テーマをもつ理論誌として定着している。
 六〇年安保の国民運動の中で生まれた日民協の機関誌が、五五年を経たいま、安保関連法(戦争法)案の廃案を求める国民的運動の昂揚の中で、五〇〇号を迎えた。安保に始まり今の安保に至るこの半世紀余。本誌が、この半世紀を「独立と平和と民主主義」を掲げて歩んできたことの意義をあらためて本号で再確認したい。

 本記念号の総合タイトルを「憲法の危機に抗しつつづけて」とした。改憲を党是とする保守政党による長期政権下、日本国憲法は危機にあり続けた。平和も、民主主義も危機の連続であり、私たちはこの危機に抗してのたたかいを続ける中で、日本国憲法やその理念を私たち自身のものとしてきた。そのようなたたかいの意義と誇りを込めてのメッセージである。
 本号は三部構成となっている。
 第一部「日本国憲法をめぐるたたかいと私たちの課題」は、五〇〇号記念誌を飾るにふさわしい三本の論文から成っている。巻頭論文にあたるものが、森英樹理事長の「日民協の『原点』と『現点』」。本誌五〇〇号時点に立って、日民協発足の理念とこれまでの法律家運動を振り返って、「原点」と「現点」に通底するものを見極めようとするもの。次いで、渡辺治前理事長の「日本国憲法をめぐる攻防の七〇年と現在」。法律家の役割に目配りの重点を置いて、日本国憲法の誕生から今日までの憲法運動を概観するもの。そして永く憲法裁判実務に携わってきた新井章弁護士「戦後七〇年・憲法裁判と私」である。この貴重な三本の論文を通じて、当協会発足の原点となった砂川闘争から六〇年安保、その後の半世紀を通じた国民運動の中での法律家の役割を確認することができるだろう。
 本号のメインとなるものが、第二部の企画「平和・民主主義・人権のバトンを引き継いで」である。
 民主的な法律家運動の経験交流と意見交換、そしてその運動の記録による承継と発展こそが「法と民主主義」の関心事であり使命である。この半世紀、五〇〇号の紙面の積み重ねの中から重要テーマを選定して、バトンを引き渡す者と引き継ぐ者とに登場していただいた。具体的な諸課題について、かつてはどのようにたたかわれ、そしていまどのように承継され、発展したかの検証である。各課題について、先輩法律家がかつての経験を語り、そのバトンを受け継いだ若手が生き生きと現在の活動を語っている。
 選定したテーマは、平和的生存権・核廃絶・基地撤去・歴史認識・国家秘密・表現の自由・子どもの権利・公務員の政治活動・教育の自由・生存権・労働基本権・労災職業病・女性差別・公害・薬害・消費者・納税者の権利、そして司法の独立等々。日本の民主的運動の中での法律家の役割が具体的に語られている。地域を越え、世代を越えての運動の交流と承継の成果を確認したい。
 そして、第三部。貴重な資料や連帯のメッセージにも、目を通していただきたい。

 本記念号は、安保関連法案(戦争法案)反対運動の盛り上がりの中で編集され発刊された。その運動の全容と結果とを盛り込むことはできていない。五〇〇号、飽くまで通過点である。今後の運動の糧にご利用いただきたい。

「法と民主主義」編集委員会 澤藤統一郎



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