ひろば 2016年10月

 日民協が「軍学共同反対連絡会」に参加


 9月30日、「軍学共同反対連絡会」が結成に至った。同連絡会は軍学共同に反対する科学者と市民の情報ネットワークであり、運動体でもある。池内了名古屋大学名誉教授・野田隆三郎岡山大学名誉教授・西山勝夫滋賀医大名誉教授の三氏を共同代表として、発足時の参加者は17団体と122個人。日民協も唯一の法律家団体として名を連ねている。
 当面の取り組みの焦点が、日本学術会議への働きかけ。同会議に設けられた「安全保障と学術特別委員会」の動向を注視し、問題点を広く世に訴えるとともに、市民の声を学術会議に届ける取り組みを行うことの確認と、そして、紐付き防衛研究の是正である。政権の壊憲策動が、学術研究の分野にも「軍学共同」として表れ、これと対峙する運動が必要となっているのだ。
 結成当日の記者会見での共同代表らの発言に、現在の問題点がよく表れている。
 「デュアルユースが大きな問題だと盛んに言われるが、安全保障のためならいいのではという意見が出ている」「学術会議会長が『個別的自衛権の範囲内なら許せるのではないか』と発言したことに衝撃を受けている」「防衛と攻撃の線引きは不可能。多くの戦争は自衛のためにおこなわれた。自衛のための戦争は口実に過ぎない」「自衛を強化すれば、必ず攻撃も強化される。エスカレーションの論理の行き着く先が核兵器」「軍用と民用は区別がつかない。軍がお金を出すのは軍事用に使うという目的があるから。政府は核兵器の使用も憲法に違反しないと発言している。」「ノーベルは無煙火薬は究極だからこれで戦争は行われなくなると考えたが使われた」「軍学共同になる大きな理由の一つに財政的貧困がある。研究予算が少ない。これを根本的に改善しないと解決できない。」
 日民協は、この問題の法的な側面にコミットすべきことを期待されている。
 法的な課題としては、何よりも憲法が柱とする平和主義との関わりがある。そして、憲法23条「学問の自由・大学の自治」と26条「教育を受ける権利」を、この問題にどう具体化するかを検討しなければならない。さらに、編集委員会の席上で、次のような指摘があった。
 「大学や学術機関が防衛研究に関われば、特定秘密保護法の網が被せられることになる。研究が秘密のベールに包まれるというだけでなく、大学や研究機関が常時権力の監視下におかれることになる」。なるほど、そのとおりだ。
 これまで、学術会議は、学術研究の軍事利用を戒める厳格な態度を貫いてきた。たとえば、1950年4月総会の「戦争を目的とする科学の研究には絶対従わない決意の表明(声明)」、67年総会「軍事目的のための科学研究を行わない声明」など。この声明の精神は、まさしく日本国憲法の平和主義に相和するもの。その姿勢が、広渡清吾氏のあとの大西隆会長となってから雲行きが怪しい。日本の科学・学術の研究のあり方が大きく軍事技術重視の方向に舵を切ろうとされている。
 これまで持ち出されてきたのが、「デュアルユース」という概念。民生用にも軍事用にも利用することができる技術の研究ならよいだろうという口実。さらに大きな問題は、大西会長が「50年、67年の声明の時代とは環境条件が異なって専守防衛が国是となっているのだから、自衛のための軍事研究は許容されるべき」と発言していることだ。
 戦争法反対運動では、非武装平和(ないしは、非軍事平和)派と、専守防衛(個別的自衛権容認)派とが共闘して、集団的自衛権容認派と闘った。いま、現前に見えてきたものは、専守防衛(個別的自衛権容認)是認を口実とする軍事技術研究容認である。
 飽くまで、日本国憲法は、非武装平和(ないしは、非軍事平和)を原則としていることを確認することの重要性を痛感する。

(弁護士 澤藤統一郎)


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