ひろば 2017年1月

 事務局長 新年のご挨拶


 新年おめでとうございます。2017年が皆さまにとって、そして世界と日本にとって、また日民協にとって、良い年になりますように! とはいえ、トランプが大統領に就任するアメリカのゆくえ、通常国会に提出が企てられている共謀罪法案、解散総選挙はあるのだろうか、南スーダンは大丈夫だろうか等々、心を騒がせる種は尽きませんね。

 1月13日(金)、日比谷公園内のレストラン「日比谷パレス」で、日民協の拡大理事会「新春の集い」を開きました。大きなガラス窓越しに冬の青空と樹木を眺めつつランチを頂きながら、新年の抱負などを全員が語りあう、和やかな会になりました。
 森英樹理事長は、2017年は憲法施行70年であると共に、ロシア革命100年、ルターの宗教改革500年でもあると指摘。今年、トランプの大統領就任のほか、ドイツやフランスでも大統領選挙が行われる、イギリスのEU離脱にも見られるように今「民主」が問われている。日本「民主」法律家協会は、「民主」の意味を改めて深く考えなければならないと、スケールの大きな挨拶をされました。
 理事の方々からは、アジア太平洋法律家会議(COLAP)と平和への権利、介護の現場で起こっている貧困問題、戦争法違憲訴訟や南スーダン派兵違憲訴訟、象徴天皇制、マイナンバー提出反対運動、原発被害者訴訟と政策提言、メディアと表現の自由、共謀罪の国会上程反対等々、多彩な話が時間いっぱい、こもごも熱心に語られ、改めて日民協に集う法律家たちの多様さと高い人権感覚を共有できた充実のひとときでした。

 「新春の集い」が終わると、『法と民主主義』の編集委員は、いそいそと地下鉄で日民協の会議室に場所を移し、今年初めての編集会議を開きました。
 2・3月合併号の特集について知恵を絞ったところ、「新春の集い」のスピーチやテーブルでの会話で話題になった天皇問題をとりあげようということになりました。
 天皇退位問題が取り沙汰されていますが、日本国憲法における象徴天皇の位置付けは?という原則的なところから、きっちり考える特集を発信しよう、法律雑誌でこれができるのは『法民』だけでは?と盛り上がり、作業が進み始めています。
 思いを一つにする会員たちの自由な会話から一つの特集が組みたてられていく楽しさ、そして、いろいろな意味で物が言いにくくなっている世の中で、「日民協では遠慮なくものが言える」、そういう場を大切にしていきたいという思いを改めてかみしめた編集委員会でした。

 昨年成立した盗聴法の拡大に加え、共謀罪などが成立してしまうと、このような当たり前の楽しさや自由も少しずつじわじわと締め付けられてしまうおそれがあります。
 先月号でご紹介させていただいた内田博文先生の『治安維持法の教訓』に続けて、冬休みに同じ内田先生の『刑法と戦争─戦時治安法制のつくり方』を読みました。
 こうした本を読むうちに、今まで遠い昔としか思えなかった1925年や戦争中の出来事や議論が、あたかも最近のことのように生々しく身近に感じられてきました。
 治安維持法が成立した1925年から1945年の敗戦までわずか20年。2017年の20年前というと1997年。こんなに短い間に日本は侵略戦争を起こし、破壊と殺戮を尽くし、大量の犠牲者を出し敗北したのです。
 人が人を殺傷して何かを解決したり獲得しようとする、こんな愚かなことがまだまだまかり通っている世界です。「武力によらない平和」を宣言する憲法9条を絶対に手離してはならないと思います。今年も自由に議論をし、自由な議論をさまたげるものと闘い、質の高い「民主」を作りましょう。
 事務局長になって1年半。「縁の下の力持ち」として会員と読者の皆さまの素晴らしい力を最大限引き出せるよう頑張ります。

(事務局長 米倉洋子)


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