ひろば 2018年8・9月

 政策の転換を!


今月の「法と民主主義」は、「第4回『原発と人権』全国研究・市民交流集会inふくしま」の報告集である。東京電力福島第一原発の事故の翌年に第1回を行った同企画も、今年、第4回目を数えた。私はこの企画の第1回から実行委員会に関わってきたが、今回は今年3月に体調を崩して2ヵ月半ほどの入院・自宅療養を余儀なくされたため、実行委員会に参加できなくなり、実行委員の皆さんにご迷惑をおかけしてしまった。どうにか本番には参加することが出来て、ほぼ一参加者の気分で、これまでの4回で初めて、全体会、分科会(第2分科会に参加した)も含めて、始めから終わりまで、じっくり中身に参加することが出来た。
とても良かった。1日目の全体会にしても、この問題の現段階全体を見渡す広い論点を、限られた時間の中であれだけの内容を学ぶことが出来る企画は、なかなかないだろうと思われる。分科会(「原発災害と政策転換」)も、健康影響を巡る政策課題(情報公開、市民自らの手で放射能測定を行う等の市民活動等)、復興行財政など、論ずる問題を絞った興味深い報告がなされ、改めて、被害者、市民と研究者達の取り組みの拡がりと深化を感じさせられて感銘を受けた。
しかし、国と東電は、2020年の東京オリンピックまでにこの問題が「解決した」形を作ろうと、街の外形を整備し、被害住民の帰還を強制し、援助を打ち切ろうとする一方、原発再稼働を強行しつつある。何よりも腹立たしいのは、未曾有の被害をもたらした本件事故原因の徹底究明、国と東電の責任の明確化を放棄し、誤魔化そうとしていることである。そしてその「復興政策」が、被害者に寄り添った被害の回復、街の復興とはほど遠いものであることだ。本当に、実情を知れば知るほど怒りが湧いてくる。
なんとか、こうした国と東電の政策を転換させたい。少しでも被害者に寄り添った被害の補償、街の復興、そして原発のない社会に、方向を切り替えられないものだろうか。そして、原発のみならず、「社会のための個人」が強調され一人ひとりの存在が軽んじられる社会、大企業の収益ばかりが重視され働く人々の賃金や労働条件が軽視される経済、軍事大国化が推し進められ軍事的圧力ばかりを強調する外交、不公正と虚偽答弁が押し通される永田町、そして戦後70年の平和を支えてきた憲法9条を何が何でも葬ろうとする政治、こうした方向をなんとしても転換させたいものだ。
その為には、国会のレベルでの立憲野党の野党共闘、さらには連合政権を展望するしかないが、聞くところによると、立憲民主と国民民主がぎくしゃくしているとか、「主体的力量の強化が先」などと言っているとか。こんな状況の政党たちに任せていては安倍一強の中でアベ政治の貫徹を許してしまう。私たちの身の回りから市民の声を更に強く上げ、世論を拡げ、立憲野党を共闘の方向へ背中を押し、市民の望む政策を作らせ、政治の転換を図らせることしかない。まさに私たちが主権者としての振る舞いを発揮するべき時なのだろう。私も、東京、大田の地元で、微力を尽くしたいと思っている。

(弁護士 海部幸造)


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