ひろば 2018年11月

 激動する朝鮮情勢と戦争について


 朝鮮半島情勢と改憲動向
 昨年(2017)は朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が、2回の核実験と20数回のミサイル発射、核兵器を含む米韓合同軍事演習などで、今にも朝鮮半島で核戦争が起こるのではないかとの、脅怖を感ずる年でしたが、今年になってから2月の平昌冬季オリンピックの南北融和ムード、4月27日の南北首脳会談による板門店宣言、5月26日と9月20日による平壌宣言など一年に三回にも及ぶ首脳会談の平和に対する並々ならぬ熱意に感動する年になりました。
 板門店宣言の特徴は@朝鮮半島で南北が戦争しない新しい時代を切り開いたこと、A朝鮮戦争の停戦協定を今年中に平和協定に転換するよう努力するなど9項目を決めています。また3回目の平壌宣言では@北と南は、非武装地帯をはじめ対峙地域での軍事的な敵対関係の終息を、朝鮮半島の全地域での、実質的な危険除去と根本的な敵対関係の解消につなげて行くことにした。A北と南は、朝鮮半島を核兵器と核の脅威のない、平和の地にして行くべきであり、このために必要な実質的な進展を速やかに、遂げなければならないという認識を共にした。など6項目をあげています。この協定は実質的な平和協定といってもよいでしょう。
 私が特に注目したいのは4月の朝鮮労働党中央委員会総会で、金正恩委員長が「これまでの武力強化と経済建設の二本足政策は、昨年勝利のうちに終わった。これからは経済建設の一本足で行く、朝鮮半島の非核化に努力する」との方針を、全員一致で承認したことです。朝鮮半島で戦争が起こらない情勢が確定するならば、北東アジアの平和と安定にとって決定的に重要な影響をもたらすことでしょう。安倍内閣が憲法を改定する理由もなくなるわけです。
 自国第一主義の台頭について
 アメリカのトランプ大統領が「アメリカ第一主義」を唱えて、関税や移民の規制などを強めて以来、西欧諸国でもアフリカ難民の受入れをめぐって、「○○国第一主義」が唱えられ、右翼的政党が伸びている国がふえています。11月11日の第一次世界大戦終戦の記念集会で、フランスのマクロン大統領が「この“第一主義”の主張は、第一次世界大戦勃発直前の情勢に似ている」と、戦争の危険性を訴え、平和のための多国間主義や地域共同体の維持・強化を訴えられたことは重要です。
 人類はこれまで何度戦争をしたのでしょうか、何百万人何千万人の生命を失っても、国境は結局もとのままで終わった例がどれだけあるのでしょうか、死んだ人の生命は帰ってきません。何のために生命を失ったのかわからない例がどれだけあるのでしょうか。戦争ほど無駄なことはないとは、人類の長い歴史が証明していることだと思うのです。
 西欧地域共同体(EU)をはじめ、今世界は「戦争はしない、経済と文化の交流でお互いに豊かな国になろう」という、地域共同体が増えています。朝鮮半島情勢も東南アジア地域共同体(アセアン)に習って、北東アジアにも作ろうと前向きに進んでいるのです。戦争や戦争準備に関するどんな策動にも反対して、憲法改悪を阻止するよう一層努力しましょう。

(全司法OB・吉田博徳)


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