日民協事務局通信KAZE 2003年1月

 今回の司研集会の企画と舞台裏

(事務局次長・弁護士 岡田克彦)

■今回の司研集会は、『司法改革の全体的状況と我々の課題』と題し、相当盛りだくさんな内容となった。司研集会も、今回で第三五回になるが、現在の司法改革の全体的状況とこれに対する取り組みの模索をそれなりに集約し、終わることができた。
■私も確か、修習生時代、熱海か各法律家団体が寄り集った初期の司研集会で、実務修習が修習の基礎であるなどと報告したことを思い出す。臨司意見書から始まり、宮本再任拒否以降の一連の司法反動の嵐の中で、この集会は、各法律家団体などの研究・討論の場として、重要な役割を果たし、それなりの評価もされてきた。
■最近の司研集会では、財界自体の司法の改革、再編成の動きをどう捉えるかが激しい論議となり、規制緩和や新自由主義的な戦略との関連が明らかにされてきた。従来の官僚的司法に対する国民的な不満や要求など国民の側からの司法改革の取り組みの評価の有無及び是非と支配層の「司法改革」との関連、これへの警戒心の有無及び程度等につき、法律家内部に深刻な対立も生じているが、双方のせめぎあいの状況として主体的総合的(弁証法的)に捉えるという共通な認識も生まれてきた。司法制度改革審議会の設置や最終意見書、改革推進法の成立という情勢の中で、市民の立場からの司法改革を推進する市民会議や一〇大要求の提起などの実践的な提起や模索もなされてきた。
■今回の集会も、執行部の夏の合宿ころから論議され、準備されてきた。「ここまで来たか、司法改革」か、「司法改革の全体的状況」かが論議され、とにかく、現在の司法改革の状況を司法の内側からだけでなく、新自由主義的な経済戦略や、行・財政改革や大学・教育問題、有事立法や憲法改正等日本社会の全体的状況の中で俯瞰しようという第一の柱が固まった。
■さらに、現在の司法改革の多面的な状況と、日弁連や裁判官ネット、自由法曹団や労働弁護団、青法協、全青司等関係団体のそれぞれの取り組みの報告等については、これらがみな必要なのかという意見もあったが、司研集会の原点でもあるとして、二番目の柱は貫かれた。
■司法改革の当面の焦点となっている、裁判官制度の改革や、特に、法科大学院の立法化問題については、報告者など主体的条件があるか、関係者の一致点がさぐれるかなど危惧もされたが、とにかく取り上げることになった。第三番目の柱である。
■さらに、当面の国民運動の焦点となっている弁護士費用の敗訴者負担や仲裁立法、さらに、昨年来の一〇大要求の継続と発展など運動の課題もある。四番目の柱であり、これも無視することはできない。
■問題は、あまりに課題と報告者が多く、討論の時間と場所がないのではないかという贅沢な悩みであった。各課題ごとに、ミニシンポ形式として、各報告者に前に出てもらい、報告、質疑等をしてもらった。大変な強行軍であったが、報告者、司会者、参加者の協力で、時間内にそれなりに充実感をもって終了することができた.
■集会の内容は本誌の特集を参照して頂きたいが、司法改革の全体的状況とこれに対するわが国法律家団体などの多角的重層的な取り組みの共通な戦略などが模索、追求できたのではないかと、感じている次第である。
(事務局次長・弁護士 岡田克彦)


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