ひろば 2018年5月

 北東アジアの平和と安定をめざして──毎日闘い続ける韓国の人びと──


 私は去る3月26日から30日までの、日本平和委員会主催の韓国ピース・ツアーに参加しました。5つの平和運動団体との交流が主な目的で、旅行先は済州島、大邱、陜川、星州、釜山などでしたが、全部をお知らせできませんので、済州島の江汀(カンジョン)村と星州に関連する金泉の経験だけをお知らせします。
 済州島の南側西帰浦市のなかの江汀村では、十数年前から海軍の軍港を作ることに反対する住民運動がありました。2008年に私たちは江汀村を訪れ、村長の姜さんと会い闘いを激励するとともに、「私たちは徹底的に非武装で勝つまで闘い続けます」との言葉を聞き、感動したことがありました。
 韓国政府の強行方針で軍港は2016年に完成し、昨年から使用されていましたから、さぞかし運動は停滞しているものと思っていたのです。ところが予想以上に元気に闘い続けていることに驚きました。
 村人たちは毎日月曜日から土曜日まで、軍港正門から百米位の横断歩道の上に午前11時頃、数十名が集まって、旗をたてながら歌を唱ったり踊ったりして、「戦争反対」「軍港なくせ」などのシュプレヒコールをし、一列になって軍港正門まで行き元の場所まで帰るデモを続け、みなで昼食をし話しあって午後1時頃解散しているそうです。「私たちは自分のために闘っているのではありません。子どもや孫たちに戦争の悲劇をもたらせないためです」との言葉に、感動させられました。
 江汀村の軍港周辺には軍港反対のスローガンが多くはり出されていましたが、そのなかに逮捕700人、起訴587人、拘束60人、罰金4億ウォン、損害賠償請求34億5000万ウォンの看板がありました。1000人余りの小さな村にかけられた弾圧と闘いの結果です。損害賠償請求というのは村民の反対運動のために、工事の進行が遅れた損害を政府が村民に請求したものだそうです。生命と生活を守ることは基本的人権ですから、不当な請求であることは当然です。ここにも朴槿恵政権の本質が表れているように思いました。村民たちは1ウォンも払っていないそうです。
 慶尚北道星州郡のサード(高高度ミサイル迎撃装置)設置反対闘争の激励は、昨年も行きましたので現地の人びとからは大変喜ばれました。星州はチャメ(まくわうりのこと)の産地なので、私が参加者の夕食に提供しようと10個注文したら、現物がないとの返事でした。すると横で聞いていた50才位のおばさんが、「私があげます」と言って電話で1箱持ってこさせました。チャメ農家のおばさんでした。ここにも平和運動への連帯が感じられて嬉しくなりました。
 星州の隣りの金泉駅前の夜の集会にも参加しました。金泉市でもサード設置反対の運動が続いているのです。金泉駅前の広場に恒久的な舞台が作られていて、毎晩7時半から100人余りの人びとが集って、抗議の集会を開いており、当日は558日目だとのことでした。朴政権時代から続いているのです。
 はじめに小学生らしい5人の踊りがあり、みんなで労働歌の合唱等のあと、私たちが壇上に登り闘いを激励する挨拶を交換した後、バスのなかで練習してきた、「サードは行け!平和よ来い!」「共に未来を切り開こう!」などの、韓国語のシュプレヒコールをすると、金泉の皆さんも共に叫び、3つの太鼓まで加わって賑やかな叫びになりました。そして次々と自由に発言するのです。韓国の人びとは小さな町でも毎日闘い続けている姿を見て、私たちも学ばなければならないと強く感ずる旅でした。
 4月27日歴史的な南北首脳会談が行われて、「板門店宣言」が発表されました。昨年の戦争前夜のような情勢から一転して、非核平和の朝鮮半島を作る情勢が生まれています。私たちは北東アジアの平和と安定を築くために、全力をあげなければならないと思っています。

(全司法OB 吉田博徳)


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