JDLAトップへトップへ日本民主法律家協会 第53回定時総会特別決議

冤罪防止を骨抜きにし、捜査権限の強化に偏重した法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」の最終案に強く抗議し、刑事訴訟法・盗聴法の改悪に反対する

 大阪地検による証拠改ざんを契機とし、「取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方の見直し」や取調の録音・録画制度につき意見を聞くとして2011年6月設置された法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」の審議は大詰めを迎え、2014年6月30日とりまとめの最終案が提示され、今月中に採択される見通しである。3年に及ぶ審議の末に示された最終案は、冤罪防止を骨抜きにし、冤罪を温存・拡大する一方、盗聴の拡大など捜査権限を著しく強化する、きわめて不当な内容である。

冤罪を温存・拡大する刑事司法制度
 取調の可視化(録音・録画)の対象は、「全事件・全過程」どころか全事件の約2%に過ぎない裁判員裁判対象事件と検察官独自捜査事件に限定され、自白強要の危険が高い「任意同行」中の取調も完全に対象外とされる。また大幅な例外要件により、捜査官が「記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができない」と判断すれば録音録画は不要とされるなど、可視化は取調を規制するのではなく、自白の「任意性」を立証する手段とされている。
 冤罪防止に不可欠な全面証拠開示は検討対象から完全に除外された。証拠の一覧表の開示だけが制度化されるが、それすらも犯罪立証や捜査に支障があると認められれば不要とされる。再審手続における証拠開示も何ら制度化されなかった。布川、足利、東電OL、そして今年3月再審開始決定のあった袴田事件などの冤罪事件への反省は全くみられない。
 他方で、無実の者を冤罪に陥れる危険の高い司法取引が導入される。

盗聴法の恐るべき拡大
 看過できないのは通信傍受(盗聴)の恐るべき拡大である。盗聴可能な対象犯罪は、薬物、銃器など現行法の4類型に、窃盗、詐欺、恐喝などの一般刑法犯を含む9類型が加わり、組織性の要件も「数人の共謀」、「役割分担」などがあれば足りるとし、犯罪捜査とはいえない予防的盗聴まで認めようとする。NTTなど通信事業者の立会も不要とする。
 盗聴は、重大なプライバシー侵害をもたらし、事前の特定が不可能である点で令状主義にも違反する憲法違反の強制処分であり、政治運動や市民運動に対する権力の介入に使われる危険がきわめて高い。盗聴の拡大を絶対に許してはならない。

安倍政権の治安強化の狙いを見据え、刑事訴訟法・盗聴法改悪に反対する国民運動を
 私たちは、冤罪を温存・拡大する最終案に強く抗議する。同時に、法制審がかくも強引に警察・検察権限の強化を打ち出そうとした狙いは、改憲と軍事大国化をめざす安倍政権による国民運動抑圧、治安管理強化であり、特定秘密保護法制定、共謀罪創設の企みと同一線上のものであることを見抜き、これに強く抗議する。
 法制審の答申を受け、来年の通常国会には関連法案が上程される見通しである。私たちは、冤罪被害者、市民、そして広範な法律家と手を携え、刑事訴訟法・盗聴法の大改悪を絶対に許さない国民運動に取り組む決意である。

2014年7月5日

日本民主法律家協会第53回定時総会 特別決議



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