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2012年12月16日に投開票される衆議院総選挙は、今後の国政の行く末をめぐる重大な岐路である。すなわち、この選挙で何が争われ、各陣営が何を唱え、その選挙の結果、政党と政治勢力がどのような配置となり、いかなる政権が誕生するかによって、日本国憲法と国民の命運がまさに左右されるといっても過言ではない。
現在、この選挙では、主だったものでも、デフレ不況からの脱却、消費税増税の是非、将来の社会保障政策、東日本大震災からの復興、原発維持か脱原発かなどのエネルギー政策、TPP参加の是非、「いじめ」問題の解決などの教育政策、普天間基地撤去、オスプレイ配備、米兵犯罪などの米軍基地問題、周辺諸国との領土問題の解決、衆参の選挙制度改革など、さまざまな問題が争点とされている。これらはいずれも、日本国憲法の平和主義・国民主権・人権保障の原理に深く関わる重要な争点に他ならない。
そのなかでも、今回の総選挙では、憲法改悪をもくろむ勢力が議席を伸ばすのか、それとも改憲に反対し、憲法に基づく政治の実現を目指す勢力が前進するのかがきびしく問われている。
自民党は、総選挙公約で、今年の4月に発表した「日本国憲法改正草案」の国会提出と改正をめざすとし、集団的自衛権の行使を明確化した「国家安全保障基本法」の制定、国旗損壊罪の新設などを掲げている。
民主党の選挙公約では、「専守防衛」に事実上代わる「動的防衛力」の強化、日米同盟のさらなる深化、在日米軍再編に関する日米合意の実施などがうたわれ、集団的自衛権解釈の変更を打ち出すなど同政権下ですすめられた解釈改憲路線の継続が示されている。
また、改憲を含む統治機構の改革と日米同盟の堅持をうたう「維新八策」を策定し、集団的自衛権行使を認める橋下大阪市長率いる「日本維新の会」に、日本国憲法の「破棄」を公言してはばからない石原前東京都知事と4月に「自主憲法大綱案」を発表した「たちあがれ日本」が合流した。「日本維新の会」の選挙公約には、自主憲法の制定が盛り込まれた。
みんなの党は、4月に「憲法改正の考え方」をまとめており、公明党は「加憲」の立場をとっている。
さらに、昨年から始動した「憲法審査会」の場では、東日本大震災を口実にして緊急事態条項を導入する改憲論が、さまざまな議員から唱えられている。
このように、今回の総選挙は、従来に増して、改憲を明確に掲げ、それを政策の重要な柱とする政党が目白押しの状況である。こうした政党が衆議院の多数、とりわけ3分の2の議席を獲得するようなことがあれば、次期通常国会では、憲法改悪の策動がさらに推し進められるであろうことは明白である。
私たち日本民主法律家協会は、このような日本国憲法の岐路ともいえる総選挙にあたり、各党の選挙公約をしっかり吟味し、憲法改悪をもくろむ勢力に厳しい審判を下し、憲法を守り生かす勢力の前進をうながす投票を、ひろく主権者国民に訴えるものである。
2012年11月30日
日 本 民 主 法 律 家 協 会