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電話勧誘被害は先物取引だけでない。

今年初めてわが家にかかってきた電話。誰かからの年賀のご挨拶かと思いきや、甘ったれた若者の声で、「サワフジ・センパイでいらっしゃいますか」と来た。
私は、体育会系の「センパイ・コウハイ」という語感が大嫌い。不機嫌に、「なんの用だ?」と問い質したところ、自分は東大生だが、学内紙である「東大新報」を購読してくれという電話勧誘。先輩に年間2万円の賛助金をお願いしているという。
「東大新報?東大新聞じゃないのか?」
「東大新聞とは違います。30年ほど前に、東大新聞が学生運動の影響で左翼一色になったときに、それを批判する立場で創刊されたのが、東大新報です」
「ことさらに紛らわしい名前を付けおって。それだけでお前の新聞はうさんくさい。誰が、新聞を作っているんだ?」
「東大とは無関係に、学生10人ほどでサークルとしてやっています」
「左翼を批判してというなら、お前らは右翼か」
「いえ、ボクは右翼ではありません」
「左翼でも右翼でもない?お前の新聞のポリシーはなんだ」
「今の世の中、個人主義が行き過ぎていると思います」
「なんだって?個人主義に反対?お前は全体主義者か?
ナチスやファシズムが好きなのか。戦前の超国家主義や天皇制に戻ればよいと思っているのか?」
「いえ、そうは思っていません」
「左翼でもない右翼でもない。個人主義でも全体主義でもない、お前の主義主張っていったいなんだ。はっきり言ってみろよ」
「特にありません」
「お前はアホか。主義主張がなくて新聞を発行するということはありえない。そんな新聞やめてしまえ。
だいたい、反体制であることは若者の特権だ。社会としがらみを持たない若者であればこそ、純粋に社会を批判できる。年をとれば、心ならずも反体制や左翼ではいられなくなる。
お前はなんだ。学生のうちから、体制におもねって、個人主義の行き過ぎだとか、左翼批判だとか、ちゃんちゃらおかしい」
「はい、よく分かりました」
「新聞を発行するって、金がかかることじゃないか。いったい誰がスポンサーなんだ」
「いいえ、スポンサーなんてありません」
「嘘をつけ。スポンサーなしでお前みたいな頼りない学生が集まって新聞の発行ができるはずはない。世間では、統一協会・勝共連合がバックにいると言われているではないか。お前もその片割れか」
「いいえ違います」
「だいたい、どうして私の電話番号を知ったのか」
「同窓会名簿を見ました」
「東大の同窓会名簿なんて、そんなものがあるはずはなかろう。あったとて、私は卒業していない」
「高校の同窓会名簿です」
「なんだと?聞き捨てならない。いったい誰が私の高校時代の名簿をお前に見せたのか」
「仲間の一人です」
「個人情報保護法というのを知っているか?」
「‥」
ここで、電話を切られた。無礼千万なやつめ。