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伊藤和子のNYだより

第0013回 (2005/07/26)
5月-7月のご報告

 皆さん、お元気でしょうか? NYの伊藤和子です。
 この間、ワシントンDCで研修を受けたり、論文を提出したり、ということで大変ご無沙汰してしまいました。
 そんなわけで、ご報告が遅れたのですが、
 5月にNYでNPT再検討会議にあわせて、日本の市民グループ、アメリカのインターナショナル・アクションセンターなどの市民グループと一緒に、イラク戦争(劣化ウラン、核兵器)をめぐるワークショップ、レセプション、写真展を開催し、NY市民、世界の市民と対話をする機会がありました。
 その際のご報告、長くなりますので、以下のHPに掲載されているのをご覧いただけると幸いです。
http://www.iraq-hope.net/event_report/050626ki.html
 私の報告以外にも、高遠菜穂子さんなど、企画・参加者の報告が載っていますので、是非ご覧ください。
 
 現在、NYではGPPACという市民のイニシアティブによる紛争予防・平和構築のための国際会議が開催され、再び多くの市民が国連本部に集まっています。NPT再検討会議は大国が核軍縮に対するコミットをしないという非常に残念な結果に終わりましたが、このGPPAC会議の冒頭ではジョディ・ウィリアムスさん(地雷廃絶キャンペーン)が、「国際社会はトップダウンで決まってしまうのだ、という考えに陥ってはいけない。市民社会の声は聞かれるべきであり、世界を動かす力がある。暴力は人間の本質だ、仕方がないのだ、という考えに陥ってはいけない。暴力は選択肢であり、その選択は私たちの日々の歴史のなかで、一日、一日、問われている。市民社会は日々、暴力ではない対案を常に提示し、説得をし続けなければならない。」と力説されていたのが非常に印象的でした。
 私たちの5月の試みも「暴力でない選択肢」を提示する流れのひとつではないか、と思います。
 私も短時間の参加でしたが、韓国で憲法9条を守るキャンペーンをはじめようとしている女性団体の方々、コスタリカのロースクールの学生で、たったひとりで、コスタリカがイラク戦争の自由連合に参加するのは憲法違反であるとの裁判を提起し、昨年9月にコスタリカ最高裁から「コスタリカの自由連合への参加の憲法違反」として連合からの撤退を命ずる判決を勝ち取ったロベルト君(みなさんご存知でしたか?
 この判決。同じ平和憲法を持つ日本の裁判官にもっと知らせたいものです)などとネットワークをつくることができて、非常に貴重な経験でした。

 アメリカでは、先日、25年間最高裁判事をつとめた、初の女性最高裁判事、サンドラ・デ・オコノウ判事が引退を表明、ブッシュ政権初の最高裁判事任命が大きな話題になっています。オコノウ判事はリベラルとは評価されていませんが、中絶の権利、アファーマティブ・アクションなどで進歩的な判断をし、昨年には「グアンタナモに収容されているアメリカ人には人身保護請求のかたちでの司法審査を受ける権利がある」とする判断をされています。これを受けてアメリカの人権NGO(CCR)はグアンタナモに収容されている全ての被拘束者の代理人として裁判を提訴、「テロとの闘いを理由に人権をどこまで制約できるのか」が司法の場で問われています。アメリカでは、9.11直後にブッシュの大統領命令でミリタリーコミッションが設置され「アメリカの敵」とみなされた人間全てを拘束して国防総省の設置した委員会で裁くことができ、裁判所の司法審査を排除できる、という制度がつくられています。
http://www.defenselink.mil/news/May2003/d20030430milcominstno2.pdf

 今年1月、DC連邦高裁は、このミリタリーコミッションを「国際法違反」としてコミッションの審理の停止を命令、政府はこれを不服として上告をしています。ところが、その直後、米議会では「最高裁判事を含む連邦裁判官が英国法とコモンロー以外の外国法、国際法を判決に援用することを禁止する。これに反した裁判官は懲戒・罷免の対象になる」という驚くべき法案が提案されました。司法の独立を脅かすこの法案には最高裁内部からも強い懸念の声があがっています。オコノウ判事は積極的に国際法について語る判事でしたが、ブッシュ政権は、昨日、後任に保守的なロバート氏を推薦し、最高裁の地図を塗り替えようとしています。益々国際法と国際社会に背を向けるアメリカ、という構図なのですが(これから、米国内で様々な反対運動が起きると思いますが)だからこそ、世界のNGOの声を大きくしていくことがとても貴重なのだと思います。

プログラムのメンバーと さて、私はニューヨーク大学のコースを終えて、今週末から国連人権小委員会のインターン(夏期)としてジュネーブに行く予定です。
 ニューヨーク大学ロースクールでは、世界の公益弁護士を学費免除で招聘するプログラムに参加させていただき、内戦後のシェラレオネ、大規模人権侵害を乗り越えて進むアルゼンチン、女性に対する暴力の続くガーナ、そしてフィリピン、コロンビア、インド、レバノンなどで戦争・暴力と人権侵害の再発に取り組む人権弁護士たちと議論をする機会に恵まれました。世界はつながっており、私たちの抱える問題-暴力・戦争・人権侵害-は彼らの問題と直接につながっています。大きな視野でこれからも彼らと一緒に行動をしていきたいと思っています。今日はプログラムのメンバーとの写真を貼り付けたいと思います。では、暑い夏ですが、どうぞお元気でお過ごしください。

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