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紅茶は踊る

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 マリアージュ・フレールは「フランス流紅茶芸術」らしい。新宿のビックカメラは小田急ハルクを席巻しているが、地下までは行っていない。地下の食フロアーにこの店の売り場があった。紅茶の大きな缶が壁にずらっと並びいかにもと思わせる老舗の雰囲気である。ビックカメラで買ったコーヒーミルをかかえてカウンターの中にいる青年に尋ねた。

 「紅茶のことはよくわからないんですが、何種類か飲んでみたいので100グラムずつ選んでください」素直な私。やおら壁からカンを降ろし蓋を開けてくれる。匂いを確かめる。茶葉を観察する。ふーん美味そう。そして選ばれた3種。アールグレイ・フレンチ・ブルー、アッサム・メレン、ダージリン・マーガレッツ・ホープ。つまりはアールグレイとアッサムとダージリンというわけである。カンの表示を見ても、意味も読み方もわからない。フランス語なんだもん。感じよい青年の説明も「豚に真珠」である。

 最初はアールグレイ・フレンチ・ブルーで行く。茶葉の中に青い花びらが入っている。きれいで幻想的。ブルーエという花らしい。ベルガモットの香りはこ惑的。カップ1杯、ポットに1杯。ポットの中で茶葉がまわるまで待つ。登場するミントンテーカップ。いいですね。

 作業台のカウンターにみんなで集まっていただく。大人の紅茶はみんなをひととき幸せにする。「砂糖は入れたらだめね」と言うやつがいる。

 突然アルマイトの紅茶ポットを思い出した。直火、サイホン方式で、蓋のところにガラスのキャップが着いている。水を入れ、サイホン部分に紅茶を入れる。そのままストーブにかける。お湯がポットの中の官を上がってガラスのキャップにのぼる。ごぼっと音がして紅茶にふりかかる。そしてまた下から暖められて上がってくる。ごぼっごぼっと上がってくるお湯が紅茶になってくる。コップに注いで砂糖を入れる。沸騰状態で熱々。子どもの頃私にとって紅茶はこ洒落たかたちの直火ポットで入れるものであった。

 アッサムとかダージリンとか知ったのはずーっと後。紅茶は日東とかリプトンとかメーカー名で区別されていた。オレンジペコと言う高級な紅茶があると思っていた。

 1個のテーバックから何杯も紅茶を取った学生時代から今日まで長い日々紅茶と付き合って来た。