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お茶するとき

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 大学生になって東京に出てくるまで私はコーヒーというものはどんな風にして抽出されるものか知らなかった。インスタントコーヒーしか知らなかったのである。それもネスカフェの焦げっぽいやつである。インスタントラーメンをあがめ、インスタントジュースにはまり、添加物に鍛えまくられた我が舌である。コーヒーを入れるなんて洒落た空気はまわり見渡してもどこにもなかった。

 まずは「サテン」に入ってコーヒーを飲んだとき砂糖を入れてミルクを入れてスプーンでぐりぐりかき回した。飲んだときコーヒー牛乳の方がずっと美味いのにと思った。フルーツ牛乳もあったな。

 しばらくしてブラックという飲み方がかっこいいと思い、とにかく砂糖を忌み嫌ってみせた。太らないしね。ブラックで飲むコーヒーははっきりと自分を示し香りや味のバランスがわかる。少し成長したわけである。豆を挽いてもらってドリップで入れるようになった。紙のフィルターに盛り上がる豆の様子と匂い立つ馥郁たる香りでひとときの幸せを感じるようになった。

 友人から挽肉挽きのようなスポングのミルを贈られて25年間、我が家のミルはいまだに健在で豆を挽きつづけている。粗忽者の私が挽いた豆をとる皿をミルの下にあったゴミ箱に落っことし無くしてから紙で手作りした皿が代用品として使われている。何とこの皿、実は蓋にもなる優れもの。これを手に入れようとしたが、スポング社のミルは輸入されなくなった。代用品にも愛着が湧き、購入にあまりこだわらなくなった。

 ごりごりとうるさく豆を挽いてコーヒーを何回入れただろうか。マンデリンに凝ったり、焙煎にこだわったり25年間コーヒーを飲み続けた。今は程々の関係である。古女房と言うところか。

今日新宿のビックカメラからついに電動ミルを買ってきた。事務所ではとても手動で豆を挽くわけにはいかない。ハワイアンコナを挽いて初飲みとなった。豆の挽きの調整も簡単。しゅんしゅんとなるお湯をフィルターにそそぐ時までにすっかりコーヒーの香りが立ち上りうきうきである。のどごしの良いすっきりしたコーヒーになった。

 300円のポットと20000円のミル、3000円のやかん。もちろんカップはミントンである。それぞれの役割をちゃんと果たす。

 明日はマリアージュフレールの紅茶3点。150年の歴史を乞うご期待。ワインと同じようにそれぞれの紅茶にたっぷりと言葉のシャワーがかぶせられている。フランス風。お値段も結構です。飲ませていただきましょう。