個別表示

道ばたきょろきょろ

アップロードファイル 49KBアップロードファイル 49KBアップロードファイル 48KB

 前を見てさっそう歩く。そうはいかない。どこを歩いていてもきょろきょろして落ち着きがない。なんか面白いことないかな。美味しい物ないかな。街角に目がいく。
 「落ち着きがない」と言われたのは小学校の時からである。6年間ずっと私の担任、心配し続けてくれた先生は今ご病気で療養中である。事務所移転のお知らせハガキに奥様が丁寧なご返事を下さった。「主人には何度も、おはがきの文面を読みきかせました。はがきを手にとり、『さすがだな』の連発でおりました」1年生で先生に会ったとき先生は20代、眼鏡をかけたきまじめな青年教師でした。しばらくして音楽の先生だったきれいな奥様と結婚しました。みんなでわくわくしました。理科の先生だったのですが宮沢賢治「雨ニモマケズ」の詩が教室の黒板の上に大きく書いてありました。「とにかく何でも負けちゃいけないんだべ」早とちりで落ち着きのない私は詩の後段など読みもせずこの詩をただ負けちゃいけない標語だと思っていた。ほっぺたのあかぎれが酷くて血まで出ていた。みょうに元気で現実的な女子だったのである。
 先生全然「さすが」じゃないんです。落ち着きのないのも、早とちりなのも、そそっかしいのも先生に言われたまま、もう半世紀も生きて来ました。それでも先生は誉めてくれますか。
 とっておきの1枚の取材で尾山先生宅へ伺う途中、小田急線経堂から農大通りの街角。顔の小さなお地蔵様。よだれかけが有るからお地蔵様でしょう。家内安全をとなえて手を合わせた。次は新宿通から事務所にはいる小路にあるカエルの石像。ひどく大きくて不思議。どうしてここにいるのか。自宅から駅に行く遊歩道の途中でみーんみーんと一人うるさいセミ。手を伸ばせばすぐの木の枝にいる。そんなところにいると悪ガキの餌食だな。