四ツ谷に事務所を構える「法民」編集長が日々の思いを気ままにつづった日記帳。
遠回しのおねだりが効を奏して、鹿教湯(かけゆ)のドクターからお届け物。フレイバーのメープルシホンケーキQサイズとハロッズの紅茶とマーマレード、ジャムのセット。山高帽のような大きくてふわふわしたシフォンケーキはメープル味、わっしわっしと食べても食べてもまだいける。マーマレードをつけてね。ジャムもどうぞ。と送ってくれたのにシホンケーキ本体に無我夢中でそんなものすっかり忘れていました。さすがプロのケーキ、しばらくしてもしぼんでいったりしません。
節子さん、礼子さん、我が家とみんな持ち帰りました。帰って食べても次の日食べてもふわふわシフォンのままで、食べていると不思議とやさしい気持ちになるのです。
「シフォンケーキを作るのが得意です」と言う方が結構います。私は食べるだけで人種が違うので作り方が想像できません。とにかく、くるくるかき回すかやたら泡立てるかものすごいことがなされているのでしょう。もらうとその苦労をしのばずにばくっと食べてしまいます。シフォンケーキを焼けるお母さんや妻にはなれません。だれ一人期待してませんが。
もう一つのシフォンケーキにはしばらくしてから遠く秩父の荒川村で出会いました。田中美智子・礼蔵ご夫婦の山あいの家です。美智子先生は元衆議院議員、83才。6才年下の連れ合いの礼蔵さんが台所一切を仕切っている。いや料理係をやらされているらしい。
11月23日、私と林さんが「とっておきの1枚」の取材に伺ったのである。お客様だと礼蔵さんは私たちのためにシフォンケーキを作って待っていてくれた。ミルクティーまでさっと出てくる。
食卓のうえのまな板にケーキ型から出されたケーキは切り分けられる。「卵何個入れたの」と美智子先生のチェックがはいる。「3個」と礼蔵さん。「4個入れなきゃだめでしょう」と作らないくせに美智子先生は口うるさい。礼蔵さんはまったく動じない。
礼蔵さんのシフォンケーキはふわふわしない。スポンジケーキのようにしっかりとしたどちらかと言うとパンケーキに近い。卵は3個で十分だと思う。礼蔵さん、シフォンにするためには秘密があるのよ。そこにいた女3人は全員その秘密は知らない、やったこともない。卵の数やベイキングパウダーの量でもない。
ふわふわしないシフォンケーキは田中ご夫婦の人生みたいで私はすっかり嬉しくなった。お昼のお弁当のせいでばくばく食べられなかったけれど楽しいお茶でした。