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野中広務氏の憲法感覚  

日弁連の人権大会・憲法問題シンポジウムの実行委員会に出席して、昨日撮影された野中広務氏のインタビュー・フィルムを視る。未編集のもので、15分を少しオーバーする。これを、5分余に編集して、「各界からの意見・ビデオレター」として、シンポジウム会場で、放映することになる。

旧田中派の番頭役、与党幹事長あるいは官房長官として、長く政権の中枢にあった人。極めつけは99年国会での国旗国歌法成立の立役者である。私が、よい印象を持てたはずはない。ところがどうだ。議員引退後の、現政権の危うさを指摘する発言には刮目せざるを得ない。時代の座標が大きく推移したということなのだろうか。以下発言の要約。

「アメリカとの友好関係の大切さは当然として、日本は地政学的に一衣帯水の北朝鮮・韓国・中国との良好な関係を保つことが極めて重要だ。そのためには、日本が過去に背負った責任と向かい合わなければならない。私は、子どものころに、朝鮮からの労働者をムチで叩いて働かせている現場を見ている。また、南京事件の現場に、かつての日本兵と同道してもいる。その立場からは、A級戦犯を合祀したままの靖国神社参拝には問題がある。A級戦犯の合祀は昭和53年。すぐには公表せず、54年に公表した。当時の松平宮司のしたこと。以来、天皇の靖国神社参拝はない。日本は講和条約で、東京裁判を認める立場を明らかにしているのだから、戦犯を神として祀る神社に参拝はできない。講和条約をもっとも尊重しているのは天皇家ではないか」

「私も自民党員だが、今、結党50年ということで憲法改正などと大騒ぎする時期ではなかろう。憲法9条あればこその戦後の平和であり繁栄だと思う。私は、専守防衛の自衛隊を認知した上で、海外での武力行使には歯止めをかけるべきとの意見を持っている。勇ましく、これを軍隊とせよとか、国防省を設置せよということには賛成しがたい」

「私ももうすぐ80歳になる。その目から見て、今の政治状況は、大政翼賛会の時代を超えている。与党勢力で3分の2以上というのは、民主主義の危機と言わざるを得ない。もっとバランス感覚が必要だ。煽ったマスコミも悪いが、結局は国民の責任。歴史教育で、縄文や古代を教えても現代史を教えないことが問題。少なくとも、昭和史をしっかりとつかむことが大切だ。過ちを繰り返さないために」

衒いもなく、淀みのない発言ぶり。言っていることに全面賛成とは言えないが、うなずけることがことが多い。この人のバランス感覚が、かつての保守政権のスタンダードであった。このような見解と、共闘できなくては、と思う。