日民協事務局通信KAZE 2008年1月

 年頭の決意!


 新年早々、新テロ特措法が参議院での否決の後、衆議院での自・公両党の、三分の二以上の賛成で再議決され、成立した。衆議院での再議決は五七年ぶり二回目のことだという。更に、民主党の提出した恒久派兵準備法案が、自民・公明も賛成して継続審議になった。
 しかし、ペシャワール会の中村哲医師が語っているように、一方で民衆を殺す手伝いをしながら、「貢献」を言い立てても、民衆の信頼は得られない。戦乱にあえぐ民衆への「国際貢献」は軍事協力などではなく民政支援によってこそ大きな役割を果たせるし、民政支援は「非武装・中立」により民衆の支持・信頼を得ることによってこそ安全を確保し、有効な援助を実現できるのではないか。中村医師のペシャワール会やJVC(日本国際ボランティアセンター)をはじめとする支援活動に取り組む人々(本当に頭の下がる活動である)の視点に、私たちはもっともっと学ばなければならないと思う。昨年はこうした視点が、テロ特措法を巡る議論、闘いの中で次第に市民の中に広がりつつあった。今年は更にこれを推し進めて、九条の下での日本の真の国際貢献のあり方を大いに議論をし、世論を作っていきたいものである。
 昨年は、参議院選挙で示された国民の審判の前に安倍前首相を看板とする改憲勢力は、一旦ブレーキを余儀なくされた。しかし、支配層における軍事大国化・新自由主義的構造改革・その推進のための憲法改悪の要求のエネルギーに何らの変りのないことはいうまでもない。今年は改憲の動きの「一時的ブレーキ」ではなく、この要求の根本的転換を余儀なくさせる年にしたいものである。
 福田政権は最新の世論調査でも支持率が低迷し、「不支持」が「支持」を上回っている(朝日一月一三日…福田支持34%、不支持45%。NHK一月一五日…福田支持43%、不支持四四、再議決適切42%、不適切49%)。今年は衆議院総選挙必至。福田政権の後には誰が出てくるのか。振り子の軸が大きく右に寄って、再度安倍前首相のような超タカ派に振れてしまうといったことには決してしたくないものである。
 そのためには、軍事大国化を阻止して九条を堅持する世論、構造改革路線による格差と貧困の拡大に抗して二五条をこそ活かす世論、憲法を護り活かそうとの世論を更に大きく、深く拡げていくしかない。
 また、今年は、小選挙区制を改めさせるための運動を拡げられないものかと願っている。マスコミなどの扱いでも、二大政党制が当然のことで自民か民主かの選択肢しかないかのような報道・解説しかされない。現在の小選挙区制の下で、第三極としての民意を国会に反映させる契機は無い。こうした状況を何とか打開できないものだろうか。いまさら小選挙区制を中選挙区(あるいは比例代表制)へなどと言っても、所詮このままでは消えて行く運命の少数勢力の「ごまめの歯ぎしり」にしかならないようにも思えるが、しかし、もちろん、ことは「少数勢力」だけの問題などではないし、声を上げなければ何も始まらない。多くの市民団体や民主団体、更には大きく幅を拡げた運動の声を上げられないだろうか。そうした運動のスタートの年に出来ないだろうか。
 この二〇〇八年、こうした運動に、日民協としても、法律家団体としての役割を果たしたいものである。

海部幸造(弁護士・日民協事務局長)


戻る

©日本民主法律家協会