日民協事務局通信KAZE 2010年1月

 新たな半世紀の基盤づくり


 今年二〇一〇年は、日民協がその前身団体である「安保条約改定阻止法律家会議」(一九五九年一二月設立)から、一貫して批判活動に取り組んできた六〇年安保条約の締結五〇年目の年である。そして来年は、一九六一年一〇月に発足した本協会の五〇周年を迎えることになる。その意味で、今年から来年にかけてが、本協会にとって大きな節目の時機になっている。
 節目を名実ともに節目にしていくために、本協会の新たな半世紀を可能にする基盤をととのえていくことが、まず必要と思われる。日本の社会全体とおなじく、本協会の会員の年齢構成もいちじるしく高齢化してきている。二〇代後半から四〇代にかけての会員をいかに増やしていけるかが、焦眉の課題である。
 私が日民協に入会し、事務局の一員に加わったのは、まだ大学教員になりたての三〇代の初めであった。鷲野忠雄弁護士から故・雪入益見弁護士に事務局長の交代がなされた一九七九年頃からであった。雪入事務局長は若手の養成に一家言をお持ちの方であったようで、私などは早々に、当時開催されていた中間司法シンポジウムや、司法制度研究集会での報告や取りまとめ役、『法と民主主義』の特集企画案づくりや誌上座談会の司会役などに相次いでかり出され、無我夢中にさせられたことが思い出される。大学とは異なり、多種多様な訴訟事件と司法制度の在りようや、立法や行政をめぐる数々の法的問題にリアルに接しえることになったことが、無我夢中にさせられた所以ではなかったかと思うのである。
 若手や中堅の世代の会員増を実現していくためには、協会の諸活動をより魅力のあるものにしていくことが今や不可欠と思われる。本協会は弁護士、法律学等の研究者、司法書士、税理士、裁判所職員などによる多様な会員によって構成されているが、この会員構成をさらに多彩なものにしていくことにより、協会活動をより魅力のあるものにしていけるのではなかろうか。この間の『法と民主主義』誌の誌面上に示されているように、現在、訴訟事件だけではなく、広く法的問題に取り組む数多くのNPO、NGO等の市民団体がある。平和、人権、民主主義の実現に、大きくは活動目的を共にするそれらの市民団体及びそれらの団体構成員が本協会に入会できるように、たとえば会員資格を見直すことなどができれば、協会活動に新たな活力と魅力を生み出していけるように思われるのである。
 その際に、会員資格をただ拡げるだけではなく、それらの多様な会員対象者と会員による交流会や、それらの市民団体などが取り組んでいる訴訟事件や、立法あるいは行政上の問題などについての意見交換会、小研究会などを日常的に企画し、頻繁に開催していくことが、会員の拡大と定着につながっていくのではないかと思うのである。また、小規模な形でのそれらの集まりを、いくつも用意していくことにより、法律専門職中心の現会員層に、協会の新たな存在意義を見出していっていただき、さらには若手及び中堅世代の法律専門職者の会員増にも資することになるのではないかと思うのである。
 年頭にあたり、昨年七月の定期総会で理事長の大役をおおせつかってから、毎月の執行部会議での議論を通じて考えてきたことの一つを、したためさせていただいた。協会における今後の議論の一提起となれば幸いである。

(理事長 久保田 穣)


戻る

©日本民主法律家協会