日民協事務局通信KAZE 2010年7月

 「歌う明日」を目指して


 「何故こんな日に!」とお叱りを受けた日民協の総会も無事終わった。今年の総会は、第一部の六〇年安保の記録映画も、森英樹教授の講演も素晴らしかったし、第二部の総会議事も、第三部の「相磯まつ江記念・法と民主主義賞」の授与式も、そして懇親会も良かったのではないかと、ややホッとした。
 そして翌日は、北野弘久先生を「おくる会」であり、参議院選挙投票日。
 亡くなる二ヶ月前に、「自分が死んでも普通の葬式にしてはいけない、弱い者のために人生を捧げた一人の人間の生き様をを示して、納税者運動の気運を高めるための総決起集会を開きなさい」と指示をされた北野先生の、ひたむきに生きられた姿勢に心打たれないではおれない。
 そして、参議院選挙のあの結果。「消費税引き上げ・法人税引き下げ」などと打ち上げた菅民主党の大敗は当然としても、みんなの党などといったところの躍進、自民の回復、共産と社民の後退。なんと言うことだろう。
 こうした結果については、様々に総括や分析がされるだろう。また、今後の政治情勢は不安定なものになるだろうし、それだけに消費税や、比例議員定数の削減や、自衛隊の海外派兵などについても、何が起こるかわからない危うさがくすぶっている。
 しかし、私たち国民の側からすれば、どのような展開が起ころうとも、要は、そうした危うさをはね返すだけの世論をどれだけしっかりと前進させられるかであろう。また、そうした世論を、(マスコミがどうであろうが)創り出せるよう草の根の運動を質的にも量的にも大きく飛躍させる、そのための地道な活動をねばり強く拡げる。結局はそれに尽きる。構造改革路線からの転換を迫り、安保改定五〇年の今年、軍拡路線・日米同盟の根本的見直しのための議論を大きく拡げる、それに尽きる。
 日民協では、この一年、大先達を多く失った。長谷川正安、星野安三郎、松岡三郎、安藤巌、そして北野弘久といった諸先生方。どなたも、基本的人権と平和の前進のために奮闘され、大きな足跡を残された。私たちも、いくらかでも、こうした大先達の衣鉢を継いで、大いに、そして楽しく学んで、運動の中での法律家としての役割を果たしたいものである。
 森英樹教授のつぎの文章は、こうした市民運動・草の根の運動の意味合いと希望を、良く表していると思う。
 「憲法を護り活かす運動を政府がなさず、市民がこれを行うというのは、本末転倒なのですが、市民革命以来の歴史に照らせば、これもまた正道といえましょう。未完の市民革命を担いつつ、歌う明日を目指して共に奮闘を続けましょう」。(「憲法くん出番ですよ」(花伝社)の中の「憲法フェスティバルへのエール」より)

(事務局長・海部幸造)


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