日民協事務局通信KAZE 2012年8・9月

 「分科会記録・報告集」の普及と「『原発と人権』ネットワーク」へのご支援を!


 1 東北大震災、そして福島第一原発事故から一年半が経過した。支配層は、この大震災を奇貨として、新自由主義構造改革のまき返しの大攻勢をかけ、軍事大国化への圧力を強め、まさに「がむしゃら」に状況を突破しようとしている。こうした財界・米国の意向に無条件に従う民主党政権の変節ぶりは「無惨」と言うべきものである。
 2 原発についていえば、政府と関西電力は、「夏の電力不足」を口実に、圧倒的多数の反対の世論を無視して、大飯原発を再稼働させたが、結果は、この記録的な猛暑の夏にもかかわらず再稼働など無くても十分に電力は足りた。再稼働の口実がまやかしであったことが事実として明らかとなった。
 九月一一日には、日本学術会議は高レベル放射性廃棄物の処分方法として、現行の地中(三〇〇メートル以深)に廃棄する最終処分政策を白紙に戻して抜本的見直しをするよう提言をまとめた。日本列島は地震や火山活動が活発で、万年単位で安定した地層を見つけるのは現在の科学的知識と技術能力では限界があること、社会的な合意を得ることなく原発政策を進めるなど根源的問題があること等が指摘されている。現在日本は、ガラスで固めステンレス容器に入れた高放射性廃棄物を二六五二本保有しているが、その他に全国の原発には二万四七〇〇本分相当の使用済み核燃料が存在している(昨年末現在)という。既にある膨大な高レベル廃棄物の処理方法すら決められない現状で、原発を再稼働させるなど、およそ常識的には考えられないことだろう。
 3 こうした状況に対して脱原発を求める世論、運動が根強く広がっている。民主党が今更「二〇三〇年代に原発ゼロを目指す」などと言っても、これまでのことからしても、内容の吟味以前におよそ信用などできるものではない。しかし、そのようなポーズを取らねばならないほど、世論の圧力を彼らが感じているということでもある。
 毎週金曜日の夕方から粘り強く続けられている官邸包囲集会は、見るからに「これまで集会などに参加したことなど無い」といった雰囲気を漂わせた若い人々が多数参加して、運動の新しい可能性を感じさせる。是非ともこうした新しいエネルギーを大切に、そして伸びやかに拡げたいものである。
 4 「福島」を風化をさせず、被害の回復・完全賠償と脱原発社会の実現を目指す世論と運動を更に大きくかつ深化させていく上で、法律家の果たすべき役割は大きい。当協会も、本年四月七日・八日に福島大学で開催された「『原発と人権』全国研究・交流集会in福島」を、諸団体と共同で成功させることに寄与した。
 今号の「法と民主主義」の特集では、この全国研究・交流集会の第一日目の全体会と、二日目の各分科会のアウトラインが掲載されているが、分科会の詳細については、集会実行委員会から「分科会記録・報告集」(九月末日予定)が発刊される。どの分科会報告も極めて示唆に富んだ内容となっている。また、DVD〈「福島からの声」?原発被害者・市民・町長・村長は訴える?〉を同時に発刊し報告集の附録とした。学習会などにご活用頂けると嬉しい。
 更に、この「全国研究・交流集会」実行委員会に参加した一一団体で、前記の「全国研究・交流集会」の成果をふまえて、仮称「『原発と人権』ネットワーク」を立ち上げようと議論を進めている。被害者の皆さん、医師、自然科学者、社会科学者、法律家、ジャーナリスト、そしてこうした活動を支える広範な市民の、分野を超えた幅広い協力と連帯の場を作ろう、まずは、ホームページを立ち上げて、各分野の活動の最新情報の集約・交換・発信が恒常的に出来るようにしよう、というものである。是非ご協力とご支援をお願い申しあげたい。

(「原発と人権」全国研究・交流集会実行委員会事務局長・海部幸造)


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