第21回最高裁国民審査結果 |
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罷免票率 |
告示順 |
氏名 |
全国 |
北海道 |
東京 |
大阪 |
京都 |
沖縄 |
1 |
櫻井龍子 |
6.96 |
10.68 |
8.93 |
8.32 |
9.70 |
11.12 |
2 |
竹内行夫 |
6.72 |
10.61 |
8.90 |
7.95 |
9.44 |
10.91 |
3 |
涌井紀夫 |
7.73 |
11.59 |
11.26 |
8.69 |
10.03 |
12.25 |
4 |
田原睦夫 |
6.52 |
10.19 |
8.67 |
7.79 |
9.22 |
10.54 |
5 |
金築誠志 |
6.44 |
10.07 |
8.45 |
7.79 |
9.29 |
10.47 |
6 |
那須弘平 |
7.45 |
11.13 |
10.95 |
8.44 |
9.85 |
11.82 |
7 |
竹崎博允 |
6.25 |
10.05 |
8.40 |
7.51 |
8.98 |
10.17 |
8 |
近藤崇晴 |
6.13 |
9.71 |
8.27 |
7.42 |
8.96 |
10.09 |
9 |
宮川光治 |
6.00 |
9.56 |
8.01 |
7.31 |
8.79 |
9.89 |
一 八月三〇日第二一回最高裁国民審査を終えて
(1)対象裁判官は九名と多く、最高裁入りしてからの実績が見られない者が五名もおり、総選挙の影に隠れて、残念ながら、国民審査への関心がかつてなく低調であった。
そのような中にあって、マスコミ各紙が特集を組み、社説で国民審査への啓発に重要な役割を果たしたこと、国民審査に「一人一票実現国民会議」が、多額の資金を投じ、一票格差に距離を置く二名の裁判官(涌井、那須両判事)に批判が集中する内容の全面広告を全国各紙に掲載して、世論形成に貴重な役割を果たしたことを評価しておきたい。
(2)私たち国民連絡会議は、自公政権の政権たらいまわしのなかで、衆院解散時期が何度も先延ばしになり、また、昨年九月三日以降本年一月二六日までの僅か四カ月間に五名も裁判官が入れ替わり、宣伝資料の原稿を何度も作り直すなど準備の混乱を余儀なくされた。
国民連絡会議は、日民協と婦人有権者同盟、国民救援会など加盟団体の全面的協力の下で、A4版四頁のカラー刷りチラシ六万五〇〇〇枚を作成頒布し、日民協ホームページによる宣伝啓蒙、選管への申入れ、街頭宣伝などに取り組んだが、運動量の低下は否めず、選挙運動とのタイアップや、日常的な裁判批判運動を含め、国民審査運動の活性化に向けた新たな取組みの必要性を痛感する。
(3)国民審査をリコール制度であるとした一九五二年二月の最高裁判例の長年にわたる踏襲、その結果、×票以外は全て信任票扱いとし、棄権の自由を事実上認めない現行審査法の致命的欠陥、そして対象裁判官に関する情報の決定的な不十分さが、国民審査制度の空洞化をもたらす根源になっている。しかし、同時に司法制度のあり方、わけても、最高裁裁判官の選任が長期政権の独断で行われ、国民的基盤を欠く最高裁人事のあり方にメスを入れること、更に主権者の立場に立った司法改革の実現に向けた諸運動の展開、そして、これら文脈における国民審査の位置づけの重要性をを改めて確認させられる。
二 国民審査の結果
(1)投票率六六・八二%である。総選挙投票率は六九・二八%であるから、その差三四三万人は、総選挙投票者数の四・八八%が棄権(無効とされた票も含む)したことになる。
なお、この棄権率は、沖縄県では二五・三四%にのぼる。
(2)対象裁判官九名の×点比率─全国平均は六・六八%(四五五万)、その中で、告示順三番の涌井判事は七・七三%(五五二万)、同六位の那須判事は七・四五%(四九九万)、他の判事は、告示順に右肩下がりである。「一人一票実現国民会議」による前出全面広告活動の成果が顕著に現れた結果と言って良い。
この傾向は、各都道府県単位による集計でも、ほぼ同じである。
(3)都道府県別×点票
@ 告示順一位の櫻井判事の場合を見ると、沖縄(一一・一二%)、北海道(一〇・六八%)、京都(九・七〇%)の順で、東京(八・九三%)、大阪(八・三二%)と続く。沖縄、北海道、京都の×点比の順位は、これまでのところ不動である。
A 涌井判事の場合は、沖縄(一二・二五%)、北海道(一一・五九%)、東京(一一・二六%)、京都(一〇・〇三%)、大阪(八・六九%)、また、那須判事の場合は、沖縄(一一・八二%)、北海道(一一・一三%)、東京(一〇・九五%)、京都(九・八五%)、大阪(八・四四%)と、それぞれ続く。「一人一票」広告活動は、東京のような大都会で顕著な効果を生んだと思われる。
(4)その他
国民審査結果の分析をする場合、有効投票者数、無効投票者数、持ち帰り数、不受理数の合計が、投票者数であることを確認しておく必要がある。
ところが、中央選管発表の国民審査結果の数値は、@×点票、A信任票、B「記載無効の数」の合計数のみである。この統計によると、櫻井判事を例にとれば、@が五九万八五三二、Aが六一〇万一二三四、Bが〇、合計六六九万九七六六を有効投票数としており、無効投票などの仕分けはないのである。
東京都の場合には、有効投票数のほか、無効投票数一四万八九四一(無効投票率二・一七%)、「持ち帰りと思われる票数」九六四三、「不受理と決定した票数」六、投票者数六八五万八四〇六と開示されている。
今後、東京都選管並みに、無効投票数とその比率を含めて全国的にも開示を求めていく必要がある。
三 司法改革を具体的日程に
私たち国民連絡会議は、一九七二年一二月の第九回国民審査以来、過去一三回にわたって国民審査運動に取組んできたが、最高裁を真の「憲法の番人・人権の砦」たらしめるために提起してきた次の五つの課題を再確認し、これら課題の具体化のため引き続き努力して行きたい。
@ 最高裁裁判官の任命手続を透明化・民主化するために、国会で選ばれた各界有識者で構成された任命諮問委員会の設置と、任命の際における国会公聴会の開催を実現すること。
A 最高裁裁判官の出身別構成枠を最高裁発足当初の五(裁判官)、五(弁護士)、五(学識経験者)に戻すとともに、少なくとも五人の女性裁判官を任用すること。
B 司法制度改革を政府・行政・大企業の使い勝手に奉仕するのではなく、「市民が主体」の改革に大きく転換していくこと。
C 国民審査を○×式投票にする国民審査法の抜本的改正を急ぐこと。
D 最高裁長官人事は、他の裁判官とは異なる選任方法によっているので、すでに国民審査を受けた最高裁裁判官の中から長官に任命された場合には、改めて国民審査に付される扱いにすべきこと。