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 日本民主法律家協会 第42回総会アピール(案) 2003年7月5日

  1.  イラク侵攻を経て、かつてない世界の構造が浮かび上がってきた。
     米ソを盟主とする二大陣営が対峙した冷戦が終結した後に到来したものは、夢想された平和な時代ではなく、唯一超大国アメリカの一極支配の時代である。世界は、この唯一超大国の支配とどう対抗するのか、新しい課題に直面している。
     アメリカは、最強の経済大国として、全世界を市場化しようとする衝動を隠さない。グローバリズムへの障害を、「悪」であり「敵」とし、かつての「聖戦論」と同様、邪悪な敵に対しては先制的な攻撃すら躊躇しない。
     豊かな国の身勝手な論理であり、横暴な強者の論理である。人類が営々と積み上げてきた国際平和や共存のための叡智である国際法を平然と蹂躙し、国連という国際社会の行動の枠組みを無視するものでもある。

  2.  アメリカの一国支配は、「南北の格差」を肯定し、その固定化をもくろむものであるが、紛争の根源はこの格差のうちにある。
     貧困、抑圧、収奪等々の不公正がなくならなければ、「テロ」も紛争もなくならない。武力侵攻は、新たな不信と憎悪の悪循環を作り出すことであり、より大きな抵抗と紛争をもたらすことになるだろう。格差の上に成り立つ一国の繁栄、一国の支配は、不可能な時代と考えなくてはならない。
     日本が「豊かな北の一員」との意識からアメリカに追随することは、アメリカと同様の危険を負担することであり、同様の国際世論からの批判を受けることでもある。

  3.  アメリカのイラク侵攻は、その無法に対する空前の世界的な反戦運動をまきおこした。アメリカを含む世界各国で、同時に一〇〇〇万人を超す人々の平和を希求する共同行動が実現した。
     我が国でも、若者を中心に、多数の市民が自発的に平和行動へ参加した。それは、久しぶりに見る大規模の市民の共同行動であって、将来への希望を映すものであった。
     また、本年2月隣国大韓民国に民衆の支持に支えられたノムヒョン政権が誕生したことも、心強い展望を示す実例である。

  4.  今、世界は無法な米英のイラク侵攻と軍事占領の衝撃の中にあり、アジアは北朝鮮を巡る緊張の中にある。そして日本は有事三法案を成立させ、さらに軍事占領地域に自衛隊を送り込むイラク派兵特措法案も昨日衆院を通過した。昨年9月17日の小泉訪朝と日朝平壌宣言の締結は、その後の進展ないまま忘れ去られようとしている。両院の憲法調査会では改憲論議が進行し、教育基本法の見直しも切迫している。
     周囲の景色は、けっして明るくはない。しかし、希望は平和を求める民衆とその運動の中に見える。不信と憎悪の悪循環を断ち切って友好と連帯を醸成し、確かな非軍事の平和を構築することが人類史的な課題である。それは日本国憲法の恒久平和主義の理念そのものにほかならない。
     当協会活動の中心課題は、憲法9条を実効あるものとして、米国の軍事支配から我が国を脱せしめ、さらに非軍事の平和を構築することに集約される。
     第42回総会に当たって、当協会はその運動の一翼を担うことを改めて確認する。


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