日本民主法律家協会
間もなく戦後60周年を迎える。
アジア太平洋戦争敗戦に至るまで、日本は数々の侵略を繰りかえし、アジア諸国民に多大な被害を与えてきた。にもかかわらず日本が戦後早期に国際社会に復帰しえたのは、ひとえに侵略に対する反省と不再戦の誓約があったからにほかならない。
とりわけ、徹底した平和主義を標榜し、軍備の不保持と国の交戦権を否認した憲法9条と前文の意義は大きい。これを放擲することは、アジア諸国民に対する重大な背信であり、再び戦前の過ちへの第一歩である。憲法の恒久平和主義は、保守勢力から攻撃を受けつつも、日本国民の護憲意識、平和運動とともに、今なおその生命を失っていない。
今秋自由民主党が結党50年を機に発表しようとしている憲法改正草案の内容は、恒久平和主義を根底から否定することを目指している。既に公表されている同党起草委員会要綱素案では、自衛のために軍事力を保持すること、軍は国際平和への寄与の名のもとに海外での武力行使を可能とすること、が明記されている。私たちは到底これを認めることはできない。
予想される自由民主党の改正案は、憲法原則への全面的否定となろう。とりわけ、憲法を権力に対する制限規範であるとする立憲主義の原則を放棄することは看過し得ない。「改正」案は立憲主義とは逆に、国民に対して「憲法尊重義務」を課し、「国防の責務」「社会的費用を負担する責務」「家庭等を保護する責務」など多数の責務を創設するものとなる見通しである。
今日必要なことは改憲ではない。むしろ、憲法理念の積極的実現である。立法・行政・司法府とも、憲法99条に基づき憲法を擁護する義務を果たすことである。
私たち法律家は、戦後60年を目前に、改めて憲法を擁護する決意を表明し、全国に恒久平和主義と立憲主義を擁護する運動を広げ、その連帯した力をもって憲法「改正」の阻止を期するものである。