私たちは現在、憲法改悪を許すか、憲法を生かす社会をめざすかの、歴史的なせめぎ合いのただ中にいる。
この1年の間に、昨年7月の参議院選挙で自民党が歴史的惨敗を喫し、安倍首相が退陣を余儀なくされ、安倍政権が進めようとしていた明文改憲に向けての作業、そして集団自衛権行使を可能とする解釈改憲の強行は、一時停滞を余儀なくされている。
こうした状況が憲法を護ろうとの草の根の運動の広がりと、それによる護憲の世論の拡大によりもたらされたものであることは明らかである。また、「ワーキングプア」「ネットカフェ難民」などの言葉に象徴される格差と貧困の拡大と、「後期高齢者医療制度」に典型として表れた社会福祉制度の切り捨てが、国民の前に露わになってきて、その強い批判にさらされるようになってきたことも大きく影響を与えている。
安倍前首相に代わった福田首相は、新自由主義改革路線の根本的転換をすることのないまま「社会福祉の見直し」などと述べ、若干目先を変えることで事態を乗り切ろうとしている。また、「恒久派兵法」の制定に決意を示して、立法改憲、解釈改憲をなおも追求し、アメリカや財界の要請に応えようとしている。新憲法制定議員同盟に集まる改憲派議員達は明文改憲作業の再開を執拗に要求し、「恒久派兵法」については、民主党との提携、更には「大連合」の危険も否定出来ない。
またこの間、表現の自由や、生存権を無視する判決が続いている。改憲をめぐるせめぎ合いは更に激しさを増してきていることの表れでもある。司法の本来の「人権の砦」としての機能を回復させなければならない。
こうした中で時代を切り開くものは、草の根の運動の広がりと深化以外にはない。近年の世論調査の動向を見ても、草の根の運動は一貫して広がり続けており、護憲の世論も年を追う毎に高まってきている。今日の情勢は、そうした草の根の運動の広がりが更に大きな新しい可能性を切り開きつつある状況といえる。自衛隊のイラク派兵(航空自衛隊の空輸活動)を違憲と断じた名古屋高等裁判所判決は、こうした護憲の草の根の運動に大きな力をあたえたものである。
私たちは平和を守る反軍拡の運動と、格差と貧困の拡大を押し返して国民の健康で文化的な暮らしを実現する為の運動(新自由主義的構造改革に反対する運動)とを結合して、更に大きな草の根の運動の広がりを創り出したいものである。
私たち日本民主法律家協会は、多様な職種の法律家が参加する組織としての特性を生かして、草の根の市民運動の広がりに役割を果たすこと、そして日本国憲法の理念の実現に力を尽くすことを、改めて決意し、この旨決議する。
2008年7月12日
日本民主法律家協会第47回定時総会