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 「イラク特措法」採決強行に抗議しイラクへの自衛隊派兵実施に反対する  
2003年7月26日

 本日未明、「イラク特措法案」は与党3党の採決強行によって成立した。
 この採決強行は、強い野党の反対を押し切ったというだけでなく、各種世論調査に表れた「自衛隊のイラク派兵反対」という圧倒的な世論に対する挑戦して行われた。国論を二分してまで、自衛隊のイラク派兵を強行しようという、小泉内閣と与党三党の憲法無視・対米追随姿勢に強く抗議する。

本法は、戦闘継続中の軍事占領地に自衛隊派兵を行おうとする違憲の立法である。当然のことながら当事国であるイラクの国家的承認なく「派兵」を行うものであって、国際法上もその正当性を支える法解釈は成り立たず違法である。
 本年3月20日に開始された米英軍による先制攻撃としてのイラク侵攻は、明らかに国際法に違反し、国連秩序を蹂躙する暴挙である。本法は、これを糊塗し正当化しようとしているが、国連安保理決議678、687、1441、1483号等の決議はいずれもイラク攻撃を正当化する根拠となるものではなく、米英暫定行政当局(CPA)に国際法上正当な統治主体としての地位を認めたものでもない。米英軍の軍事占領が、国際法上の合法性を欠くものであることは明白である。
 この米英の違法な軍事占領に参画することは交戦権の行使に当たり、日本国憲法9条2項に違反するものである。
 また、本法における「安全確保支援活動」とは、具体的には米英軍の軍事占領に反対するイラク国民への軍事作戦を支援するものであって、米英軍の軍事作戦と一体不可分の武力行使にあたるものである。
 本法は、自衛隊の活動範囲を「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」地域と限定することによって、その批判をかわそうとしている。しかし、5月1日の米軍の戦闘終結宣言以後も、現に日々戦闘が継続し各地で米英軍の死者がでている現実が、「戦闘地域」と「非戦闘地域」を区別することの不可能を如実に示している。 
 イラクの国土に自衛隊を派遣し米英軍を支援することは、実質的に米国のイラク戦争に参戦することであって、憲法違反の暴挙にほかならない。

 イラク派兵を可能とする本法が制定されても、直ちに自衛隊派兵の実行を意味するものとはならない。自衛隊のイラク派兵は、限りなく高い確率で自衛隊員に戦闘死者の生ずることを意味する。また自衛隊員がイラク国民を殺傷することの危険も否定しがたい。その事態は、日本の平和国家としての国際的地位の放擲である。
 日本民主法律家協会は、平和を求める多くの法律家と国民の声を代弁して、本法の採決強行に抗議するとともに、イラク派兵を実施することがないよう強く求める。

日本民主法律家協会理事長 鳥生忠佑


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