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国民投票法案の上程を許してはならない  
2005年5月27日

日本民主法律家協会理事会

 衆参両院憲法調査会の最終報告書公表を経て、いよいよ憲法「改正」策動に対する反対運動の正念場を迎えている。この重大な時期に当たり、我々は、立憲主義の堅持、平和憲法擁護の旗幟を鮮明にして、改憲阻止と憲法理念実現のための国民運動の一翼を担う決意をあらためて表明する。

 現在、改憲策動の一環として、改憲手続法制定への動きが具体化しつつある。
 その一は、国会法「改正」の動きである。これは、憲法96条1項に基づく両院の憲法改正案発議機関を正式に設けようとするもので、これまでの両院の各憲法調査会を、憲法改正発議をなし得る付託委員会に昇格させる案が取りざたされている。
 その二は、憲法改正国民投票の具体的手続きを定める憲法改正国民投票法制定の動きである。その案文については、既に連立政権与党である自公両党間で摺り合わせが完了し、民主党との三党協議を経て今通常国会に「日本国憲法改正国民投票法案」として上程の予定と報じられている。

 我々は、改憲手続きを具体化するための「国会法改正」及び「日本国憲法改正国民投票法」のいずれについても、その法案上程自体に反対する。憲法制定以来58年、その間に憲法改正手続きの具体化を必要とする事態は生じなかったし、その状況は今も変わらない。にもかかわらず今敢えて憲法改正手続法の整備を強行しようという動きは、国民的論議が不十分のままに改憲策動を実現しようとする姑息な政治的思惑によるものと見ざるをえない。
 しかも、今、連立与党が上程を予定している「日本国憲法改正国民投票法案」は看過しがたい重大な問題点をいくつも抱えている。

 憲法改正の発議がなされる場合における国民投票運動においては、国民の知る権利・表現の自由を確保したうえ、最大限に国民の意思を正確に反映させるべきは当然の憲法上の要請である。ところが、与党案はこのような配慮をまったく欠き、却って国民の耳と目と口を封じて、短期間で国会の発議案を押しつけようとするものとなっている。
 このような問題点を具体的に指摘することは、明確な改憲反対の立場を有しない人々にも改憲策動の危険性を理解してもらうために有益であり必要である。
具体的には、外国人・公務員・教育者はいずれも基本的に国民投票運動を行う権利はないものとされ、報道や論評も徹底して規制される。しかも、その違反者には刑罰が課せられることとなっている。

 問題の重要性に鑑み、国会の憲法改正案発議から投票までの期間には十分な時日を確保すべきが当然であるにもかかわらず、与党案ではわずか「30〜90日」とされている。
 また、国の基本法である憲法改正について、主権者である国民の意思を正確に反映させるため、個別改正条項ごとに投票対象とすべきが当然であるところ、改正発議案を一括して賛否を投票させる余地を残すものとされている。

 そのほか、国民投票権者の範囲、投票が有効となるべき最低投票率の規定の不備、憲法がいう「過半数」の母数等々について、与党案は考えられる限り、もっとも容易に憲法改正の実現をはかるものとされている。
 以上のとおり、自公両党の与党案は、改憲策動の一環としての危険で違憲の内容を持つものであり、主権者に目隠しをして憲法「改正」を一方的に押しつけようとするものにほかならない。

 我々は、この法案の上程阻止に全力をあげることを宣言する。



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