本日、安倍内閣は、臨時閣議を開き、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更を行うことを閣議決定した。
日本国憲法は、300万人を超える自国民の命を奪い、2000万人を超えるアジア諸国民の命と財産を奪った日中戦争・アジア太平洋戦争の痛切な反省のもと、戦争を放棄し、戦力を持たず、交戦権も認めないとする徹底した平和主義を定めている(前文、9条)。
本日の閣議決定は、他国に軍隊を派兵せず、武力の行使や戦争を行わない、集団的自衛権の行使は憲法上許されないとする歴代政府の憲法解釈を変更し、自国に対する侵害がないにもかかわらず、自衛隊が海外で武力行使をすることを容認し、戦争する国家への転換を図るものであって、許される条文解釈の限界を超え、憲法9条そのものを否定する内容といえる。
また、憲法の明文改憲手続き(96条)によらず、閣議決定とその後の立法により、憲法9条の実質的な改憲を行おうとすることは、立憲主義に違反しており許されない。自民・公明連立政権は、国民への説明責任を果たさず、国会での議論も十分に行っていない。それにもかかわらず、国会閉会後、極めて短期間のうちに自民公明の密室による与党協議に基づき、拙速に集団的自衛権を容認する閣議決定を行ったのである。このことは、国民主権、民主主義の原理にも反する態度であって、到底許されるものではない。
以上の点をふまえれば、7月1日の閣議決定は、「憲法は国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」と定めた憲法98条1項により、違憲無効である。
私たちは、立憲主義・民主主義に違反し、憲法の平和主義を否定する内容の閣議決定を行った安倍内閣に対して強く抗議し、その責任を追及する。そして、安倍内閣が秋の臨時国会において、違憲無効の閣議決定に基づき、自衛隊法、周辺事態法、PKO法などの改正により集団的自衛権行使の法的整備を図ろうとすることを断固として阻止する決意である。
私たちは、法律家専門集団として、憲法9条・平和主義を支持する多くの人々と連帯し、安倍内閣が進めようとしている9条改憲策動を絶対に許さない国民的な運動に寄与すべく全力で奮闘することをここに表明するものである。
2014年7月1日
日本民主法律家協会 理事長 渡辺 治