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家裁からの通信

(井上博道)
第0004回 (2004/02/15)
子どもの権利条約ジュネーブ会議報告、その3

さて雑感はさておき、ジュネーブでの会議のやりとりを再録します。さすがは国際機関、同時通訳の精度の高さは驚きでした。だだし、聞き手は会議場にはいれない程多く。しかも会場外のスピーカーの一部故障で、残念ながら全部の筆記は困難でした。また、内容が膨大なので一部欠落や間違いがあるかもしれません。
(1)政府の調整メカニズムの強化
 日本政府の回答は以下の通りです。
 (要旨)
 内閣府を設置。「児童の健全育成」に関する事業は内閣府が統括する。また、首相を本部長とし全閣僚が参加する、健全育成を総合的に検討するための「青少年健全育成推進本部」を設置した。また、法制度でも「児童の虐待防止に関する法律」「児童ポルノ禁止に関する法律」を整備した。条約の広報パンフ配布した。
 また、子どもの人権推進委員を100名増員した。家裁が児童相談所に関与するしくみをつくった。セミナー、研修を実施している。
 
 それにたいする質疑は以下の通りでした。
質問1 内閣府がやっているというが、実際の調整はだれがやっているのか。首相はいそがしくて調整はできないのでは。
答え  内閣府は重要政策の企画立案をしている。具体的な調整事務は、各省庁担当部局の課長
   会議を調整している。また電話などでもしている。

(感想)
 日本政府の委員の回答は、想定問答集を読み上げるといういわゆる国会方式でした。そのため
委員が率直な議論をしようとしている印象でしたが、日本の委員は一生懸命問答集から回答を探し、それに対応する答え、あるいは、それに近いこたえを探しては回答するという方式なので、そもそも議論というものはなかったように思います。
 一番印象にのこったのは、委員から企画調整の中身を聞かれているのに、回答が課長会議をしているというもの、「課長会議で何をしているのか」という答えはありませんでした。また、調整の中身で、電話でも調整しているというのがありましたが、やっぱり電話で何をしているのか。セミナーでは何をしているのか。広報は何を広報しているのかの答えはありませんでした。
 何ががない回答の中で、ひときわ目立ったのが人員や予算が極めて具体的であったこと。日本官僚の面目躍如というところでしょうか。
 この他の委員の質問は大変重要なので列挙しておきたいと思います。
 1 年少者の意見が尊重されることが少ないのではないか。
 2 子どもの自殺の統計がとられていないのは何故か
 3 子どもの権利条約のオンブズパーソン制度の導入が必要ではないか
 4 広報活動は日本で浸透しているといえるのか。
 5 日本国内で子どもの権利条約での行動がとられていない理由を明確化して
 @国内での条約の位置づけはどうなっているか。何故判例で引用がほとんどみられないのか。
  国内法に優先し、判例にならないのか。
 A児童の定義が20歳未満というのは諸外国に比べて高すぎるのではないか。
 B児童、女性の伝統的慣行への参加が少ないのではないか。また、社会参加において特定少数 民族(韓国、朝鮮、難民など)の参加が少ないのではないか。
 C非嫡子、嫡子の差別があるのは何故か。出生のあり方で差別があるのはおかしいのではない か。
 6 NGOの参加が少ない。意見交換をするべきではないか。政府の中でのNGOの役割を強  化するべきではないか。また児童を参加させるべきではないか。
 7 人権委員がパリ原則に基づいて独立性が担保されているのか。
 8 性的差別、セクハラ統計がないのはなぜか。
 9 刑事年齢を14歳に引き下げたのはなぜか。

質問の中では非嫡出子と嫡出子の差別問題が比較的長い時間とりあげられていました。また、少数民族への差別問題や女性や児童、NGOの参加問題も長かったように思います。
 次回は少年司法(独立して最後にとりあげた)についても報告します。

 
 

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