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家裁からの通信

(井上博道)
第0007回 (2004/03/07)
子どもの権利条約ジュネーブ会議報告 レジュメ

    子どもの権利条約委員会で少年司法はどのように語られたか
                  2004.2.28 文責 井上 博道

1,委員会での委員の発言について

(1)基本認識
  「日本の少年司法は,少年法の改正によって後退したと認識している」
                   2004,1,26 委員発言
(2)少年司法分野での各委員の発言の要旨

少年司法が「子どもの権利条約」の 後退として指摘した部分に対して
視点から後退として指摘された部分 の各委員の意見として出された部分

@観護措置期間を4週間から8週間 出来るだけ身柄拘束を回避し別個
 に延長したこと な措置を検討するべきではないか

A検察官関与を導入したこと 訓練をつんだ家庭裁判所調査官を
活用するべきではないか
B裁定合議制を導入したところ (裁定合議制を導入するのであれば)
ワーカー等を審判官に入れるべき
C刑事罰適用年齢を16歳から
 14歳に引き下げたところ

(3)少年司法分野以外で各委員が少年司法分野についてふれた部分

   委員の発言 該当する部分
D問題のある行動を行っている少年  「ぐ犯」事件に対する課題
を被疑者として扱うことは疑問

E審判不開始及び不処分決定を受けた 既判力の問題
少年が成人後再度訴追される可能性が
あることは疑問

(4)委員の発言の特徴
  @「改正」少年法の論点の改正論点そのものを日本の少年司法の後退点として
  あげている。
  A加えて改正前の少年法からある制度,「ぐ犯」及び「審判不開始,不処分の既判力  の問題を加えている。
  B20条U項事件(いわゆる「原則検察官送致」)に直接ふれなかった。
(*ただし,勧告では少年事件の刑事裁判所への送致をしないという点で指摘)

 2,日本政府の回答

論   点 回答内容の要旨
改正」少年法の改正理由について 「凶悪事件」の続発及び少年犯罪の増加
 により少年法が改正された。
*直接 検察官関与,裁定合議制・観護
 置期間の延長に触れなかった。「ぐ犯」
 ついての言及なし。
 @ーB及びDに言及しない
刑事適用年齢の16歳から14歳 Cの論点
への引き下げ 諸外国の実例を調査して行った。諸外
でも刑事罰適用年齢と少年法の適用年
  が一致している例がある

審判不開始,不処分に既判力がな Eの論点
いこと   保護処分(保護観察以上)については
定する。


日本政府の回答の特徴
 (1)「改正」少年法の改正論点への理論的説明を回避した。
 (2)事実認定問題への言及がないこと。
   *この点については,回答した政府代表が直接少年法改正時点での二つの
   論点(@激増し,凶悪化する少年事件,A事実認定問題)に関する論争の
   知識が欠如若しくはきちんとした理解がなされていないという疑問があった。
(3)質問に適合しない回答( Eの論点)があったこと。
*故意かどうか不明であった。
3,勧告についての論点
 (1)「改正」少年法そのものへの後退認識については基本的に同じ
 (2)「ぐ犯」及び「検察官送致の前面否定」については,改正前少年法の趣旨からも
   勧告との間に矛盾がある。また,「審判不開始・不処分の既判力」問題については   改正前後に双方に問題があることは一致できる。

 4,最後に
 勧告は基本認識が一致していると同時に,我々につきつけられた諸刃の刃たりうる。日本版国際基準が形容矛盾のように,「ぐ犯」及び「検察官送致そのもの(20条U意外の20条全体の)の否定」は,現行の調査官の実務や考え方にも違和感がある。2年後の見直しに「子どもの権利条約」を活用する場合,整理しておかなければならない論点といえる。

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