ひろば
第0010回 (2004/07/22)
今回の参議院議員選挙の定数配分について(柏木貴志)
平成16年7月19日
日本民主法律家協会会員各位
早稲田大学政治経済学部政治学科
柏木貴志
拝啓 時下ますますご清栄のことと存じます。
突然メールを差し上げる失礼をお許しください。私は早稲田大学政治経済学部政治学科第5学年に在籍しております柏木貴志と申します。日本民主法律家協会のお噂はかねがねうかがっております。
さて、去る11日に参議院議員選挙が行われ、志ある121名の人々が新たに、または引き続いて参議院議員に選出されたのは、新聞、テレビ等により政治学科生のみならず広く知られるところです。私の20年来の地元、神奈川からも3名が今後6年間の「国会における代表者」に選ばれたわけです。
一見平穏無事に行われた選挙のように思われますが、しかし、今回選ばれた121名が「正当に選挙された」国会における代表者であるかは、疑問はなはだ大と言えましょう。それはなぜかと申しますと、先述の3名は850万神奈川県民を代表すべく選ばれたわけですが、同時にたとえば、私の母の地元鳥取でも60万人を代表する議員が1名選ばれているからです。国政において、神奈川が軽んじられているのか鳥取が重んじられているのかはさておき、すべて国民が人種、信条、性別、社会的身分または門地により政治的にも経済的にも差別されてはならないはずの日本国憲法下において、居住地によってこのような不平等な定数配分がなされた選挙は、違法であるとしか言いようがありません。もし、そのような不平等な定数配分が許されるのなら、男性には5票、女性には1票だけ配分する、といったことすら可能になってしまいます。もちろん人口の少ない県の住民の意見も国政に反映させる必要は十二分にありますし、それこそ鳥取の話をすれば、蟹や梨をはじめとした食べ物はおいしいし、日本海の眺めはそれは素晴らしいものです。私が問題にしているのはゆがんだ定数配分によって人口の少ない県の声が過大に評価され、人口の多い県の声が相対的に軽くなる結果、片方にはたとえば「道路」という名のオブジェがだれもいない畑の真ん中に出現し、もう一方の住民は慢性的な渋滞に毎日悩まされる、といった状況が生まれてしまうのではないか、ということなのです。双方がそれぞれにふさわしい発言力を持つことが実は双方の納税者にとって有意義なのです。
本年1月に3年前の同じく参議院選挙について最大5倍強の格差が存在したことが、司法により確定されました。その際、意見において、そのような有権者の1票をないがしろにするような現行定数配分に強い警告が発されたのもかかわらず、この3年間の人口変動をも一顧だにせぬまま選挙が行われました。このようなゆがんだ定数配分は、短期的には、神奈川やあるいは東京の住民に不利益をもたらしますし、長期的には、この国のかたちそのものをゆがめます。来春、就職するにあたり、私の初任給からしぼりだす税金が、日本をゆがめるのに使われることだけは我慢がならない、という問題意識のもと、私は公職選挙法第204条に基づき、東京高等裁判所に違法な定数配分下で実施された今回選挙の無効を訴え出たいと考えています。
ですが、私には訴訟の経験も、また訴訟実務の知識もありません。また、私の主張を代弁し、実際に訴訟を進行してくださる弁護士の方にもいまだ出会えていないのが現状です。しかし、私が動くことによって、おかしいことを少しでも正したい、という気持ちだけは明確にあります。日本民主法律家協会会員各位に今後、如何に動くべきか示唆、お力添えをいただきたく、メールを差し上げた次第です。
ご多忙の極みとは存じますが、厚顔にも1度、お会いして話だけでも聞いていただきたいと考えています。お手空きの折でけっこうです、下記にご一報いただければ幸いです。
時節柄ご自愛くださいますようお祈り申し上げます。敬具
早稲田大学政治経済学部政治学科5年
柏木 貴志(かしわぎ たかし)
E-mail takashiwagi@q02.itscom.net
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