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伊藤和子のNYだより

第0005回 (2004/10/26)
来週は大統領選挙

 伊藤和子@NYです。すっかりごぶさたしてしまいました。みなさまお元気でしょうか。

 NYはすっかり寒くなりました。ロックフェラー・センターではもうスケート・リンクがつくられて若い子たちがスケートしてます。
 NYにきてから、とにかくロースクールのスケジュールが大変なのですが、そのあいまに、アメリカの平和アクティビスとや弁護士のみなさんにあちこち誘っていただき、様々な行動に参加させていただいています。
 この時期たくさんの方々が日本からNYに訪れていますが、とくに先週うれしかったのは、沖縄国際大学から2人の女子学生、安達さんと仲尾さんが遠路はるばるNYに、沖縄国際大学へのヘリ墜落事故の問題を訴えにきたことです。
 この事件、私が日本を離れてからの事件だったので、はじめて直接、詳しく状況を聞くことができました。
 彼女たちは、まだ大学1年生。この事件を風化させないためにヘリが衝突してヘリの残影が焼きついた状態になっている事務棟の壁を保存する運動をはじめて、現在日韓の基地問題の写真展がNYで開催される(これは素晴らしいです。後日またご報告します)のにあわせて、写真家の石川真央さんを頼ってNYにきたようです。
 彼女たち学生の活動の詳細はまた後日ご紹介しますけれど、彼女たちの行動に感激する反面、彼女たちと一緒に行動して、国務省やペンタゴン、議会関係者などに要請行動をしよう、という大人たちのグループがいない、というのが気にかかりました。95年の少女暴行事件の後は私も2回要請にアメリカに訪れましたし、それこそ無数にそういう動きがあったのですが。

 さて、ご承知のとおり、アメリカはいよいよ来週に大統領選挙を控えています。日本でも報道されたと思いますが、3回の大統領選挙ディベートをいずれもケリーが制したかたちになり、支持率が持ち直し、激戦が続いています。
 こちらの大統領選挙は、(ご承知の方も多いことと思いますが)、州ごとに勝敗を決め、州の割り当て票の総計で優位に立った者が大統領になるシステムで、私のいるニューヨークや、カリフォルニアなどは既にケリー優勢で固まっています。
 以下のサイトを見ていただけると州ごとの状況がわかると思うのですけれど、結局地図で無色になっている州がどうなるか、ということで決まるので、焦点はフロリダ、ペンシルバニア、オハイオなどいくつかの州に絞られています。http://msnbc.msn.com/id/6028629/?ta=y
 アメリカ最大の平和団体United for Peace and Justice などは最近、週末は激戦区であるペンシルバニアやオハイオなどにNYからバスで出かけて、一軒一軒家をたずねてイラク戦争のことなどで対話をしにいっています。NYでは、投票日直前に重なるハロウィンにもイラク戦争反対パレードが企画され、11/3に2000年の二の舞は許さない、という大きなパレード・集会があります。

 最近、CNNニュースで、昨日「日本の市民は大統領選挙をどう見ているか」というCNNにしては比較的長めの特集がありました。
 小泉が「他国のことに干渉するわけではないがブッシュに当選してほしい」とコメントした、と伝える一方で、「しかし、首相の意見は市民からまったく支持されていない。日本では国民の70パーセント以上がケリーを支持しており、イラク戦争に対する批判も強く、イラクへの自衛隊の派遣には多くの市民が反対した」と紹介(ここで市民の反対運動の映像。ピースボートのチョウ・ミスさんが写っているのを発見!)。-次にサラリーマンで込み合う居酒屋の映像が紹介され、「この居酒屋の群集のなかで、ブッシュ支持と答えた市民はひとりだけ。その他の圧倒的多数は全員ケリーを支持していた。」と紹介、マイクを向けられた普通のサラリーマンたちが「イラク戦争でたくさんの人を犠牲にしているブッシュの政策は終わりにしてほしい」と次々に語っていました。日本のお父さんたち主演の、なかなかいい映像で、やっぱり日本、いろいろ言うけれど、まともな人もたくさんいる、と思いました。
 そんな日本に比較すると、アメリカはいまだブッシュ支持者が相当多い状況です。それに対抗馬であるケリーも、歴代民主党大統領候補の中でも群を抜いてタカ派で、二人が「どちらが、対テロ戦争のコマンダー・イン・チーフとしてストロングか」を競っているわけで、異常な状況です。
 とりわけ、ブッシュ陣営が選挙戦最終盤に放映するキャンペーンCMはなんと、たくさんの狼がごろごろして恐ろしい目を光らせている映像に「ケリーは国防予算を削ると言っている」というテロップが流れるものです。世界一の核軍事大国なのに、国民に恐怖を与えて政権を維持しようとしているわけですね。
 私も他国から来る留学生たちとよく話すのですが、反ブッシュの強いNYにあっても、「アメリカ人との認識の差」「意識の壁」があることに、とても驚いています。留学生たちの多くは(どこから来たかを問わず)イラクやパレスティナの市民たちが殺されていることに、自然にシンパシーを持ち、痛みを感じるけれど、この国にはちょっと認識の違う人が結構いるので、みなカルチャーショックを受けています。
 驚くべきエピソードは山ほどあり、あまり書いても仕方ないのでやめておきますが、やはりここは「戦争する国-他国に殴りこみをかける国」であり、そのことがメディアや大学やあらゆる公共空間に影響し、アメリカ人の意識に強く反映している、ということを実感します。そ ういう意味でアメリカのよいところはたくさんあるけれど、日本は本当に「戦争をする国」になってほしくない、まだまだ間に合うのだから、と切に思います。
 イラク戦争の真実をもっとも伝えられるアメリカ人は、最前線で見殺しに近い状態に置かれ、毎日死と殺戮に直面している兵士たちなのでしょう。マイケル・ムーア監督が「Will they ever trust us again? Letter from the War Zone」という本を緊急出版しましたが、戦場にいる者の叫びに近い思いがあふれています。まだ日本語訳は出版されていないと思いますが、原文が以下のURLで見られるはずです。http://www.michaelmoore.com/books-films/dudewheresmycountry/soldierletters/index.php
 NYタイムズは、先週の社説でこの4年間に多くの命が失われたことを「heartsnearly breaking 」といい、「disasterが起こるのを土壇場で防ぐことができる」と言って、ケリー支持を宣言しています。
 ケリー政権でも本質は変わらないわけで、悩ましい状況ではありますが、まずとにかくこの狂気のブッシュ政権が終わってほしい…と願わずにはいられません。
 もし、オハイオ・フロリダなど勝敗を決める地域に知り合いがいらっしゃったら、是非マイケル宛の兵士の手紙、そしてイラクの真実を紹介してあげてください。では!

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