清水雅彦の映画評
第0066回 (2006/09/13)
『グエルム 漢江の怪物』〜批判精神を忘れない韓国の怪物映画
ソウルの中心部を流れる漢江(ハンガン)。その川岸で、だらしなくて頼りない長男パク・カンドゥ(ソン・ガンホ)は、父ヒボン(ピョン・ヒボン)が営む売店を手伝っていた。ある日、漢江に突然現れた怪物(グエルム)が人々を襲い始め、カンドゥの一人娘ヒョソン(コ・アソン)をさらって逃げる。他に元学生運動家の次男ナミル(パク・ヘイル)、アーチェリー選手の長女ナムジュ(ペ・ドゥナ)のパク一家ら周辺にいた人々を、政府はグエルムのウィルス感染を理由に強制隔離するが、カンドゥの携帯にヒョソンから助けを求める電話が。そこで一家は病院を抜けだし、ヒョソン救出に向かい……。
本作品は、前作『殺人の追憶』が話題を呼んだポン・ジュノ監督の最新作。韓国では公開25日間で1100万人を動員したという、本格的な初ともいえる怪物映画です。『シュリ』以降、日本でもよく知られるようになったソン・ガンホが、今回はかなり情けない主人公を演じています(彼の役は、黄色人種に金髪はマヌケに見えるいい例)。
権力批判も盛り込みながら、実在の連続殺人事件を描いた前作のインパクトの強さから期待して見に行くと、ちょっと戸惑う映画でしたが。本作品を高く評価する声も多いですが、パニック映画の中のシリアスな部分とナンセンスな部分が混乱気味だと思いました(ナミルが火炎瓶、ナムジュが弓矢で闘うなどいくつかのばからしさは面白いけど)。
とはいえ、監督の批判精神は相変わらずです。怪獣映画といえば日本の『ゴジラ』ですが、それに通じる在韓米軍が漢江に不法投棄したホルマリンがグエルムを産んだという設定(漢江への米軍による同様の不法投棄は実際に2000年にあった)。アメリカと韓国政府・軍がウィルス説を流して、最新化学兵器を使用することに対する批判。怪物出現の一大事に、日本ならみんな政府に協力しそうなのに、学生らが抗議集会する健全さ。学生運動経験がある監督ならではの、娯楽作品に権力批判も盛り込んだ映画です。
2006年韓国映画
上映時間:2時間
http://www.walkerplus.com/movie/special/guemuru/?identifier=pickup4全国各地で上映中
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