清水雅彦の映画評
第0014回 (2005/07/03)
『戦国自衛隊1549』〜金だけかけた空虚な戦争映画
【ストーリー】
陸上自衛隊による人工磁場発生器の実験中、暴走事故が発生。的場1佐(加賀丈史)らの部隊が1547年の戦国時代にタイムスリップしてしまった。やがて、過去への過干渉による虚数空間ホールが日本各地に出現し、このままでは現代が消滅してしまうことに。そこで2年後、森3佐(生瀬勝久)隊長や神崎2尉(鈴木京香)ら的場の部隊を救出するためのロメオ隊は、かつて的場の部下だった元隊員・鹿島(江口洋介)を加え、1549年にタイムスリップする。すると、そこには実在の織田信長殺害後、信長を名乗り、ふがいない「平成の日本」を強力な国家に作り変えるために歴史の変更をもくろむ的場らがいた。時空の揺り戻しで、鹿島らが現代に無事帰るために残された時間は74時間26分。鹿島らは歴史を守るために的場らと戦うことになり……。
【コメント】本作品は、1979年の角川映画『戦国自衛隊』(原作・半村良、脚本・鎌田敏夫、監督・斎藤光正)のリメイク作品で、今年映画化された原作者・福井春敏3部作の1つです(ほかに、この映画評でも取り上げた『ローレライ』と今夏公開の『亡国のイージス』)。監督はゴジラ・シリーズ映画監督の手塚昌明。
リメイク作品といっても、ストーリーは全く別物。そして、前作との大きな違いは、監督が予想した以上に陸上自衛隊が全面協力したこと(90式戦車、AH-1Sコブラなど25種以上、のべ150両・機以上と現職自衛官が登場)とCGを導入したこと(相変わらず日本のCGは安っぽいですが)。さらに、本作品では場所を富士山周辺に変え、登場する戦国武将も織田信長、斎藤道三らに変えています。また、歴史の辻褄を合わせるために、木下藤吉郎や第3の織田信長を登場させ、ストーリー展開で凝ったつもりのようです。
もちろん、お金もかけています(邦画制作費平均3.5倍の15億円)。しかし、昨今の多数派ハリウッド映画と同様、お金をかけて派手になったものの、内容がダメ。さらに、ハリウッド映画より悲惨なのは、俳優のレベル。丸々とした顔の嶋大輔や的場浩司、お嬢様顔の鈴木京香、現代人の顔のままの戦国時代の女性(この映画に限りませんが、女性が今のように眉を細くしだしたのはここ十数年なのに、時代劇にそのままの顔で出てくるとは)といったリアルさの欠如。戦闘シーンも迫力に欠けます(評価できる俳優は、いい味を出している道三役の伊武雅刀と、存在感のある七兵衛役の北村一輝だけ)。
前作では、突然戦国時代に放り込まれたことや現代に戻るための行動に対する動揺、苦悩、葛藤、野望、暴走などが、登場人物の人間としての強さと弱さの中で描かれていました。そして、歴史を変えようとした隊員たちは一人一人戦闘の中で死んでいき、農民としての生活を始めた根本だけが生き残る。俳優陣も、千葉真一、夏木勲、にしきのあきら、かまやつひろし、渡瀬恒彦、河原崎健三、鈴木ヒロミツ、竜雷太、真田広之、宇崎竜童、薬師丸ひろ子、草刈正雄、佐藤蛾次郎などそうそうたるメンバーです。
本作品のチラシには、「迫真のリアリティと驚愕のストーリーが襲いかかる新世代の超大
型スペクタクル・アクション・エンタテイメント!!」の文字が躍りますが、リアルさと内面描写に欠けた空虚な金だけかけた映画。映画の効果としてあるのは、「自衛隊は右翼的反乱隊員からこの日本と世界を守ります」とのメッセージ発信だけです。
2005年日本映画
監督:手塚昌明
製作:角川映画、日本映画ファンド、日本テレビ
配給:東宝
上映時間:1時間59分
全国各地で上映中
http://www.sengoku1549.com/pc/
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