清水雅彦の映画評
第0030回 (2006/01/11)
『ロード・オブ・ウォー』〜武器商人の実態を暴く
アメリカのとある工場で作られた銃弾が、箱詰めされ、アフリカの国に運ばれ、装填後発射され、人の額にのめり込む……。銃弾に小型カメラをつけたような、冒頭の「銃弾目線」による映像にまず釘付けになります。本作品は、5人の実在の人物から作り上げた架空の武器商人・ユーリー(ニコラス・ケイジ)の話。監督は、『トゥルーマン・ショウ』の脚本を担当した、ニュージーランド出身のアンドリュー・ニコル。
ユーリーは父のレストランを手伝っていましたが、ある日、武器も食事も提供することでは同じと、武器商人の世界に入ります。結婚後も妻には仕事内容を隠し続け、輸出が禁じられている様々な武器を独裁国家や紛争国家にさばいては大儲け。これに対して、インターポール(国際刑事警察機構)がユーリーを執拗に追いますが、捕まえても結局は釈放されてしまう。武器商人から秘密情報を入手している政府諜報機関の後ろ盾があるからです。そして、映画は最大の武器商人である米ロ中英仏を批判していきます。
このような内容の映画ですから、本作品は資金繰りに苦労したそうです。アメリカ資本は全く入らず、配給したのも『華氏911』配給のカナダのライオンズ・ゲート。この映画から言えることは、5大国、とりわけアメリカは欺瞞に満ちた軍事戦略を転換すべきだということです。また、武器商人が扱うメインの商品は小火器ですが、世界の戦死者の9割が小火器によることから、早急に小火器規制の必要性も考えさせられます。
映画を見て、日本のことも考えます。確かに、日本は対米武器技術を輸出し、戦費支出や「後方支援」によりアメリカの戦争に加担してきました(これらの転換が求められます)。しかし、日本は武器自体を輸出していません。平和憲法とこれに基づく武器輸出禁止原則があるからです。ただ最近は、金儲けが大事な財界が武器輸出の解禁を求め始めました。人や企業の職業倫理と大国のエゴを鋭く問うこの映画をまず見るべきです。
2005年アメリカ映画
上映時間:2時間2分
全国各地で上映中
http://www.lord-of-war.jp/index2.html
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