清水雅彦の映画評
第0035回 (2006/01/22)
『モンドヴィーノ』〜ワインの世界にも押し寄せるグローバリズム
世界12ヶ国を飛び回るワインコンサルタントのミシェル・ロランが万人受けするワイン作りを指示し、カリスマ・ワイン評論家のロバート・パーカーがワインを100点満点で採点して市場に影響を与える。一方、フランスでイタリアで、アメリカの巨大ワイナリーの進出に抵抗し、ロランのワイン作りを批判し、小さい畑ながら頑固に昔ながらの方法でテロワール(土地風土)のワイン作りに励む生産者たち。この映画は、現在のワイン作りにおけるグローバリズムとテロワールの攻防を描いた作品です。
果たして、ワインの価値を決めるのはコンサルタントやワイン評論家なのか、醸造家なのか、消費者なのか。確かに、ロランやパーカーたちによって、地域で埋もれていたワインが世界の注目を集めたり、経営に成功するワイナリーが出てくること自体問題があるわけではありません。彼らによって、古い伝統に縛られたワインの評価や楽しみ方を解放していくという側面もあります。
一方、パーカーの評価が影響を増していく中で、ロランにパーカー好みのワイン作りを依頼するワイナリーが出てきます。ロランが指示する、樽熟成中の赤ワインの中に酸素を注入する方法で作られたワインは、色が濃く、渋みも穏やかになり、結局はどれも似たようなワインに仕上がって……。こういう中で、パーカー好みのワイン作りが増える傾向を指す「パーカリゼーション」という言葉も生まれます。
ワインの世界にもこれほどにまでグローバリズムが押し寄せていたとは。素人は権威に弱いのも事実ですが、特定の人物により均質化されるのは恐い。私は地方に出かけると全国どこにでもあるファミリーレストランでよりは、その地方の名産・食べ物を食べるようにしていますが、ワインも同じでしょう。やはり醸造家にはそれぞれのやり方・こだわりでワインを作ってほしいし、消費者が自分の舌で味を評価していくべきです。
2004年フランス・アメリカ映画
上映時間:2時間16分
http://www.mondovino.jp/
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