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清水雅彦の映画評

第0037回 (2006/01/31)
『男たちの大和/YAMATO』〜確かに「反戦映画」ではあるけれど

1945年4月7日、沖縄水上特攻作戦に向かう途上で米軍の攻撃により沈没した戦艦大和。この作品は、大和乗組員らの様々な「物語」と大和の最後を描いた映画です。『プライベート・ライアン』に匹敵するような戦闘シーンでは戦争の悲惨さをよく伝えていますし、特攻命令に苦悩したり上層部に反発する乗組員もしっかりと描いています。

辺見じゅん氏の原作タイトルや、裸体の上半身をさらして主題歌を歌う長渕剛氏の姿、東映発行映画パンフレットの「日本を再び誇るべき国に」との阿川弘之氏の文章などから、「好戦的な映画」という印象を与えそうです。しかし、森達也氏が「真っ直ぐな反戦への意識が描かれている」(週刊金曜日2006年1月6日号)と言うように、確かにこれは「反戦映画」。映画パンフレットで出演者たちも反戦メッセージを発します。

しかし、この映画は乗組員を戦争の「被害者」として描いているため、危うさがあります。「映画評論家・ジャーナリスト」でさえ(だからこそ)、この映画を「感動の作品」と捉えてしまうのです(たとえば、品田雄吉「『思い』あふれる鎮魂の詩」朝日新聞2005年12月22日夕刊、大高宏雄「若者呼ぶ『泣ける戦争』」朝日新聞2006年1月13日夕刊)。全国紙に映画コラムを書くような人たちだから、批判精神がないのでしょうか。

森氏も困ったものです(最近は論壇誌などで活躍されていますが、肩書きを「映画監督/ドキュメンタリー作家」とするのであれば、本職の映画でも勝負してほしいところです)。現代史をよく知らない若者がこの映画を見ると、石油禁輸措置に対抗して日本が1941年からアメリカと戦争をして負けたと単純化しかねません。この映画が触れる経緯説明の中ではアジア諸国との15年戦争に触れず、映画全体としては日本の「加害性」をきちんと描いていません。森氏や週刊金曜日もこの程度なのでしょうか。


2005年日本映画
上映時間:2時間23分
http://www.yamato-movie.jp/
全国各地で上映中

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