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清水雅彦の映画評

第0040回 (2006/02/13)
『ホテル・ルワンダ』〜「国連は無力」と単純化してはいけない

1994年、ルワンダの首都キガリのベルギー系高級ホテルで支配人を務めるポール(ドン・チードル)。多数派「フツ族」による少数派「ツチ族」への大虐殺に巻き込まれる。外国メディアによる報道や国連平和維持活動部隊が駐留する中、虐殺などありえないと考えていたポールだが、「ツチ族」である妻や知人たちが何度も殺されそうに。外国人や国連職員が退去していく中、ポールはホテルマンとして培った人脈・話術・機転、さらには賄賂や嘘など使えるものは何でも使って家族と避難民を助けることになり……。

本作品は日本や欧米諸国が無関心を決め込む中、約100日間で100万人もの大虐殺が発生し、その一方で1200人もの人々を救ったホテルマンの実話を基にした作品です。映画の評価が高まり、配給権が高額となったことから、日本では配給会社が見つからず。そこで、日本での上映を求める映画ファンの署名運動の結果、ようやく公開されました。

こういう映画の映画評を書くのは辛いものです。単純に「この映画はいい」と言うだけでは許されないからです。映画の中で、外国人カメラマンに「世界の人々は虐殺の映像を見て『怖いね』と言うだけで、ディナーを続ける」と言わせますが、まさに当時の私がそういう傍観者。何十万もの人々が殺されているという「小さな報道」を見ながら、「これはアフリカでの出来事だから世界は大騒ぎしないのか」と「思っただけ」でした。

ただ、この映画に注文したいのは、民族対立をもたらした宗主国・ベルギーの政策を説明してほしかった点。民兵に出回る武器のことも。また、一部の映画評にあるように、この映画から単純に「国連は無力」と考えるのも危険でしょう。確かに、国連の対応は不十分でしたが、武力介入すれば問題は解決するのでしょうか。犠牲者も多少出ていますが、国連部隊が主たる攻撃対象にはなっていないことに希望が持てると思いました。

2004年南アフリカ・イギリス・イタリア映画
上映時間:2時間2分
http://www.hotelrwanda.jp/
各地で上映中

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