清水雅彦の映画評
第0042回 (2006/02/26)
『ジャーヘッド』〜犯罪者を生み出す軍隊と戦争の異常さも考えさせる映画
志願して海兵隊員になったスオフォード(ジェイク・ギレンホール)を待ちかまえていたのは、『フルメタル・ジャケット』のような厳しい訓練と隊内のいじめ。それらに耐え、イラクによるクウェート侵攻後に中東に派遣されると、今度はサウジアラビアの油田警備の任務。イラク軍と直接交戦することもなく、ひたすら訓練、警備、暇つぶしの日々。砂漠に来て175日後、「砂漠の嵐作戦」の開始によって、ようやく進軍を始め…。
本作品は、「湾岸戦争」に従事したアンソニー・スオフォードの『ジャーヘッド/アメリカ海兵隊員の告白』を、『アメリカン・ビューティー』のサム・メンデス監督が映画化したものです。「ジャーヘッド」という言い方は、刈り上げた髪型がお湯を入れるジャーと似ていることから、海兵隊員を指す言葉として使われているものです。
映画では訓練や警備以外の「日常」もひたすら描きます。テレビ局の取材や家族・恋人との電話・手紙のやりとりもあれば、隊員につきつけられる恋人との別れ、妻の不倫、猥談、自慰……。進軍を始めれば「友軍」からは誤爆され、イラク軍が火を放った油田からの「雨」で油まみれになり、ハイウェイではイラク民間人の黒こげの死体を目の当たりにする。しかし、スオフォードはイラク兵を一人も殺すことなく任務を終えます。ピンポイント攻撃のイメージが強い「湾岸戦争」ですが、これもあの戦争の実態でしょう。
映画の中では『地獄の黙示録』の映像も登場し(ただし、隊員は「戦意高揚映画」として受け止めていますが)、この映画を見ると戦争に対する嫌悪感を抱かせます。ただ、見ていて気分が悪くなるのは、隊員たちの汚い言葉。特に、「ファック」「ファッキング」とその周辺語が、この映画の中では278回も出てくるそうですが、本当に品がない。隊員の全てがそうではないとしても、こういう軍隊から日本でもレイプや殺人などの犯罪者を生み出しているのもうなずけます。こんな連中は日本から早く出ていくべきです。
2005年アメリカ映画
上映時間:2時間3分
http://www.jarhead.jp/top2.html全国各地で上映中
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