清水雅彦の映画評
第0045回 (2006/03/17)
『力道山』〜あの「日本のヒーロー」の生き方
1944年、戦時下の東京で、力士の金(ソル・ギョング)は朝鮮人故に先輩力士からひどい暴行やいじめを受けていた。そんな金に、先輩力士の影響力のある後見人が後見人となり、「力道山」というしこ名が与えられる。その後、力道山は関脇として活躍し、大関昇進が確実とされていたにも関わらず、民族差別により昇進できず。相撲協会で自ら髷を切り落とし、荒れた日々が続く。そんな折、ひょんなことからプロレスに巡り会い、渡米。アメリカでの活躍後、1953年に日本に帰国。「日本プロレス」を立ち上げ……。
本作品はあの「日本のヒーロー」である力道山が、1963年に亡くなるまでを描いた日韓合作映画。監督は1964年生まれのソン・ヘソン。ソル・ギョングは体重を約30キロも増やし、日本語をマスターして(映画の中では97%が日本語)、力道山になりきります。日本人では、藤竜也、中谷美紀、萩原聖人、故・橋本真也らが登場しています。
私は力道山を知らない世代とはいえ、「ソル・ギョングは似ていない」「日本語ももう少し」と感じましたが、彼の役作りには圧倒されるし、戦争で負けたアメリカのレスラーをなぎ倒す力道山に、当時の日本人が興奮し勇気づけられたことがよく伝わってきます。また、力道山が日本社会での差別に耐え、闘い(差別との闘いというよりは妥協を拒む自分との闘い)、「ショーとしてのプロレス」を否定する真剣さに引き込まれます。
この映画を見て思ったのは、日本で活躍する在日の人たちがもっとカミング・アウトしてほしいなということでした(当事者ではないから勝手な願望でしょうが)。あのスポーツ選手も、あの歌手も、あのタレントも、という感じでたくさんの在日が「日本人」として活躍していますが、日本は決して「単一民族国家」ではありません。また、恋愛もの以外でこういう日韓合作映画ができたことは大変喜ばしいことで、今後は日本による植民地支配下の問題をテーマに合作映画を作るまでになってもらいたいなと思いました。
2004年韓国・日本映画
上映時間:2時間29分
http://www.sonypictures.jp/movies/rikidozan/各地で上映中
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