清水雅彦の映画評
第0049回 (2006/05/08)
『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』〜「粘土犬」が大活躍!
年に一度の「巨大野菜コンテスト」を前にして、町の住人がコンテスト用野菜作りに励む中、畑荒らしのウサギが出没。発明家のウォレスと相棒(犬)のグルミットは、害獣駆除隊「アンチ・ペスト」を設立してウサギを確保。コンテスト主催者のレディ・トッティントン邸にウサギが大発生すれば、ウサギ吸引マシーンですべて生け捕りにと大活躍。しかし、今度は巨大ウサギが出没。レディの財産を狙うヴィクターも登場し……。
本作品は、クレイ(粘土)・アニメーションの「ウォレスとグルミット」シリーズ初の長編。今年のアカデミー賞では長編アニメーション作品賞を受賞しました。映画は1秒間24コマで撮影するため、1秒のシーンを撮影するのに粘土人形を24コマ分少しずつ動かしていかなくてはならないので、5秒程度のシーンを作るのに1週間もかかるそうです。CG全盛のこの時代に気の遠くなるような作業です。また、粘土人形のいたるところに指紋が残ったままにすることで、その手作り感がよく出ています。
それにしても、このグルミットがいい。犬だから話せませんが、上目づかいで「主人」の顔色をうかがう表情がなんともいえない(「猫のようなプライドはないのか」と思っていたのに、実家で飼っていた犬が私に一番従順であったことに満足してしまったことを思い出しました)。さらに、普通の犬と違って編み物、工作、自動車の運転までできるとは(運転はもちろん私でしたが、犬を助手席に乗せて「二人」でドライブもしたなあ)。
また、大量発生するウサギも見ていて楽しい。一方で、今年三月に訪れた広島県大久野島のことを思い出し(戦前に陸軍の毒ガス製造工場があった島で、今は島内にたくさんのウサギがいます)、漏れ出た毒ガスから巨大ウサギが誕生する社会的な映画を作れるなと思ったりしました。あえて映画のメッセージを探れば、「殺戮より共生」とでもなるのかもしれませんが、たまにはこのようなお気楽映画もお薦めです。
2005年イギリス・アメリカ映画
上映時間:1時間25分
http://www.wandg.jp/teaser/シネカノン有楽町ほかで上映中
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